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化物達の理想郷  作者: 同田貫
監視者
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お説教

隊列を整えながら、ばらばらに後退する敵空中部隊。それを黙って見つめるネラフィムに、部下の中佐や兵士達が近づいてくる。


「ご無事でしたかネラフィム卿、援護しようにもこちらも敵の対応に手一杯で救援が遅れました」

「なに、構わないよ中佐。そちらも敵の攻勢に手を焼いていただろ、私も一人の敵指揮官に足止めされてしまったよ。面目ないね、今は追撃よりも立て直しを優先しよう。被害状況を教えてくれ」


「はっネラフィム卿、構築したトーチカ陣地は半数程が潰されました。死傷者の数も少なくない数がでております。あちらの部隊は空中戦が巧みです、戦闘中に我々の脆弱な部分を発見され、適確に攻撃を受けました。しかしながらトーチカでの攻撃も一定の成果を上げました」


「そうか中佐ご苦労であった、負傷者を救出後私達も下がるとしよう。ヤクトバーグや他の聖人、将軍とさらなる対策をつめていきたいんだ。彼らも馬鹿じゃない、次はまた戦法を変え戦いに臨むだろうから心してほしい中佐。我々が膝を折るわけにはいかないんだ、こちらも苦しければあちらも辛いはすだ。なによりあの敵の指揮官を討てなかったのが惜しい、次相見えた時は必ず…」

「微力ながらお供いたしますネラフィム卿、あなたの御身を護ることこそ我らの至上命令でありますので」


「あんまり肩に力をいれると疲れるよ中佐、もっと柔軟にね」


ネラフィムと中佐達は、陣を引き払いながら本陣へと移動を開始する。

この戦闘で得た、僅かな光明を仲間達に知らせるために、またこの戦いで亡くなった戦友達に哀悼の意を捧げ、彼らの犠牲を無駄にしないためにも。





ローガルド要塞に帰陣したハーピーの三姉妹は、戻るやいなやレジーナの胸に飛び込んだ。

状況報告や部隊の損傷具合、新兵器の使い具合などその他諸々の報告を一旦保留にし、レジーナに甘えた。なにより自分達を信頼して部隊を預けてくれる隊長が大好きだから。


レジーナもそんなハーピー三姉妹の純粋な好意に、頬を緩めながらひとしきり撫で終わると、今は順番にハーピー達に毛繕いをしてあげていた。


「まずはお疲れ様ミミイにメメイ、ヌメイもエンリ姉様もお喜びに違いないわ。ただ困った事にイシュガル様がお呼びなんだ、私を含め全員で執務室に来いとお達しだ。この流れは大変良くない、エンリ姉様にお叱りを受けた時と似た空気を感じる」

「隊長、間違いなくなにかありますよ。私もなんだか憂鬱です」


「あーやだなぁ…あの山羊表情変えずに怒るんだもんなぁ」


「ねー山羊恐いよねー」


そしてレジーナ達の感じていた不安は的中し、青筋を額に浮かべたイシュガルが執務室に鎮座していた。部屋の片隅には、すでにカミナリを落とされたムストが身体を小さくしていた。

部屋の空気を感じとり、自主的に膝をつき神妙な面持ちをするレジーナとミミイ、対照的にそわそわと落ち着きのないメメイとヌメイ。


そこへイシュガルがゆっくりと彼女達に語りかけた。

「まずは任務遂行ご苦労であった、しかしお前達に言いたい。わざわざ敵の策に嵌り、貴重な空中戦力を損失した。部隊の補充には限りがあり、無為に消耗していてはこの先がおもいやられる。下手をしたら先の会戦の第二軍の二の舞いだったんだぞ。特にミミイ、お前は部隊を統括する立場にありながら、何故聖人と一騎討ちなどした?指揮官を失った部隊は脆い、そこから指揮系統が乱れ、部隊が崩れる原因となる」


「申し訳ございませんイシュガル様、聖人さえ討てば敵が混乱すると思いましたので、無理をしました」


「んーむ今後は徹底しろミミイ、お前達は強固な部隊であればならない。些細な事にも気を配れ、それとだレジーナそもそもお前が放任主義なのが原因じゃないのか?部下の自主性を重んじる気持ちもわかるが、引き締めるところは引き締めろレジーナわかるな?」


やはりお叱りがこちらにもきたと、身構えていたレジーナの顔が強張り、一瞬イシュガルの顔もまた険しいものだった。


「はいイシュガル様、よくわかります。私の監督責任でもあります、どうか部下達を罰しないで下さい。全ての責は私がおいます、部下達を見逃してはいただけませんでしょうか?」


「今回の件は、レジーナ貴様の反省に免じて許そう。しかし二度はないぞ、肝に命じておけ。同じ事を繰り返す者は、我が軍団にはいないと信じたい。以上だ、下がっていいぞ。ムスト貴様もな」


「「はい、失礼いたします!」」




執務室を出た長い廊下で、レジーナとミミイ、ムストそれぞれが違った溜息を漏らし、愚痴をおもわず溢す。


「なんだかなぁ…」

「先が思いやられますね隊長」

「イシュガル様も生真面目な方だから…、仕方ないことだと僕は思う」


精一杯やった結果がこれというのに、納得のいかないムストとレジーナとミミイに対し、あまり心に響かなかったメメイとヌメイは、今日の夕飯はなにかという話題に関心が移っていた。


三人はさらに溜息をついた。

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