ネラフィム卿の策
集積所より難を逃れた若年兵達は、身近な前線に助けを求めた。
事態を重く見た現場指揮官は、直ぐさま救援隊を組織し、迅速に対応したが、集積所はすでに陥落していた。
若年兵達は爺の安否を気にしていたが、救援隊にはどれが爺なのか判別が難しかったからだ。死体の損傷がどれも激しく、身元確認が難航していた。
また生存者達も、誰もが怪我を負い無傷の者は、存在しなかった。
短時間の内に目標を襲撃し、こちらが反撃をする準備をしている内に、退却を徹底する一撃離脱戦法。
下士官と士官達は連日対策を協議し、事態の打開を図ろうとしていた。
「我々はどのように対応すればよいでしょうか?敵は神出鬼没です。反撃しようにもその時には敵がいないのです。物資をある程度分散し、受ける被害を極力軽減させるしかないでしょうか?」
「それしかあるまいな。集積所の規模を縮小しつつ、数でカバーする案、安易であるが敵には効果的だろう。効果がないと悟れば、敵もやり方を変えるだろう。それまで我々とあちらさんの我慢比べといこうか!直ぐに取り掛かれ」
そんな中、異議を唱える者が存在した。前線から応援に駆けつけた、ネラフィム卿その人だった。
「中佐、少しよろしいか?その案だと消極的過ぎるな、私に一つ考えがあるのだが聞いてくれるかな?どうせならば奴らを出し抜く案を実行してみたい」
「これはネラフィム卿、どのような策でございましょうか?是非ともご教授願いたい!我々は協力を惜しみませんぞ」
「ありがとう中佐、策というのはね…」
連日空襲を受け続けた連合軍は、ここにきて反撃の糸口を探っていた。
ネラフィム卿が示した策。それは偽物の集積所を設営し、敵を待ち伏せるというものであった。敵に見つかりやすいようにあえて大きく設営し、物資は偽物のハリボテを用意してその周辺に打撃部隊を配置する。その陣頭指揮に、ネラフィムは自ら志願する。
それを数箇所設営し、敵の動向を見守る構えをとることにした。
「戦いは常に敵の嫌がる事をやり続ける必要がある。だから奴らの一連の行動には意味がある、我々もそれに応えようじゃない盛大に。最後に笑うのは私達光の神の信徒である。皆力を貸して」
「もちろんですネラフィム卿!」
「奴らに一泡ふかせてやりますよ」
数日後にメメイとミミイ、ヌメイ率いる空中部隊の大部隊がネラフィム卿が築いた、偽の集積所に爆撃をくわえる。
けたたましい音とともに、辺り一帯に破壊をばら撒いていく。しかしミミイ達ハーピーの三姉妹は、この目標に違和感を覚える。
集積所に物資はあるにはあるが、集積所から火の手が回らない。敵の兵達は、守るべき物資を放棄し、辺りの森林へと退避していることに。
「なんか変だミミイ姉、敵もまばらだしこれだけの規模なのに敵の数が少な過ぎると思うな」
「ええそうね…ヌメイ、メメイは辺りを偵察して!嫌な感じだ、偵察と同時にレジーナ隊長に伝令を。敵はなにか仕掛けてくる気に違いない!各自距離をとれ、不用意に地上に近づくな!」
「ギィーキー」
静まりかえった集積所から、突如として槍が飛来した。
その槍は、槍の丈を伸ばしながらミミイ達の空中部隊に襲いかかった。どこまでも長大な一本の槍、通常ではありえない事象にたまらず回避行動をとる。
回避の間に合わなかったグリフォンやインプが、自身の抱えた爆弾ごと切り裂かれ、周囲を巻き込み爆散する。
「へぇーあの距離から違和感に気付くか、敵の指揮官もなかなか優秀じゃない。私らも負けてらんないね!砲兵、葡萄玉装填!装填が完了次第一斉射、その後は各々撃ちなさい!私はこの聖槍で搔きまわしてくるわ」
「了解いたしましたネラフィム卿!」
その呼び声に応えるかのように、付近の森の中からは多様な銃火器が姿を現し、ネラフィム卿の支援攻撃が開始される。
たまらずミミイ達も、突然姿を現した連合軍に対峙し、図らずも出会い頭の遭遇戦のような形となってしまう。
集積所で突如として激しい戦いの応酬の幕があがった。




