王国にて
ウェルキア王国、魔族達との北部条約締結後、人類側と魔族側とで交易を行い、富を築きあげる国家。
しかし今回、ミュンヘルト会戦への出兵を拒否したことでウェルキア王国の立場は微妙なものになっていた。帝国とその周辺の衛星国家群からは疑いの目を向けられ、会戦開始間際には連合軍の一部隊が派遣され監視される事態になった。
その部隊からは外交特使が派遣され、国王の考えを直々に伺う姿勢をとっていた。返答次第では部隊に戦闘の指示をだすようだ。
ジョン国王は難しい舵取りを迫られていた。下手をすれば戦禍がこの地に及び、無用な争いが勃発する。
急進的な今のネルト帝を敵にまわすのはあまりにもまずい…
「ジョン国王陛下何故、ネルト帝直々の参集命令に背いた?これは我々人の聖戦なのだ!陛下は、裏で魔族と繋がっているという噂もある、何度も使節団を派遣しあい友好を深めているそうじゃなか。それは我々を裏切る背信行為だ、決して容認できない。沈黙は肯定と捉えるが、返答は如何に?」
「一国の主人にむかって随分な物言いだな特使殿?我が国は古来より中立を国是としてきた。また魔族や亜人達との共存に力を注いできたのだ、その行いに誇りを持っているし、当然のことだと私は考える。そもそも貴様達の国こそどうかしているのだ、魔族達を理解しようせず、ただ奴隷として扱うなど歪んでいると言わざるをえないな。我が国の政治方針に、他国の者にどうこう言われる筋合いはないのだ。それと外の軍勢はなんだ?安い脅しだな、魔族の彼らのほうがよっぽど道義的だ。物資の補給には協力するが、出兵は拒否する。どうしてもというなら、外の軍勢を使えばよかろう。その時は我らも意地を通してもらおう」
「ふん、ジョン国王一度でた言葉は取り消せませんよ?今日のところは引き下がりましょう、後日また良い返事が聞けることを信じて伺うとしましょう。ではご機嫌よう陛下」
糸目の外交特使が、慇懃な礼をして立ち去るのを国王は見送った。
それから数日間ミュンヘルト街道で大規模な会戦が勃発し、両軍ともに甚大な死傷者をだすものの、連合軍の新兵器により辛くも勝利し、元皇国の領土を奪い返したとの伝聞が王の耳に入った。
軍勢の数と物量が桁違いにも関わらず、痛み分けにした魔族軍の手腕にジョン国王は驚嘆していた。
また万一の事態に備え、国王はエンリエッサから虎の子の魔導砲と、手投げ式の炸裂弾を秘密裏に供与されていた。
もし連合軍の一部が攻勢をかけたら、この魔導砲の先制攻撃で敵の数を減らしてくれと言付けを託された。
結局連合軍からの攻撃はなかったものの、一緒に派遣された魔導砲を扱う第三軍の技術者から驚くべきことを聞いた。
「今回の連合軍への出兵拒否の件、御使いであるリーゼ様は大層お喜びである。ジョン国王の英断に感謝するとともに、後日礼をさせる代表団を派遣させるので場を設けてほしいとのことだ。確かに伝えたよ国王陛下、数日後にはこちらに着くそうだ」
これには居並ぶ文官、武官も驚いた。
ジョン国王と側近達は対応に奔走することとなる。




