閑話 集う力
ミュンヘルト会戦の後、久々に再会した勇者と聖人達は違いの健闘を讃えあっていた。
聖鎧ヤクトバーグ卿に聖槍ネラフィム卿、聖拳ソロ卿、聖灯リューティス卿、この四人は勇者が幼い頃からの旧知の仲であり、友であり家族の一員だった。
「マーク久しぶりじゃない元気してた?怪我の具合はどう?会戦であんたが負傷したって聞いて、天幕からすっ飛んできたよ。それと天使ナナイ様にご挨拶したいのだけれど、今はどこにいらっしゃるかしら?」
「おいおいネラフィム卿、少しは落ち着かんか。矢継ぎ早に質問したら、マークが答えられんだろうに。無事でなによりだマーク、傷は痛むか?暫くはゆっくり休め、休息も必要だ」
「ありがとうヤクトバーグ卿にネラフィム卿、ナナイ様は自分に治癒術を施した後、他の天使様方に今回の事の報告に向かわれたよ」
ベッドに横たわり包帯の場所を心配そうに摩るショートヘアーの黒髪の女性と、体格のよい中年の男性。甲斐甲斐しく世話をやくネラフィム卿と、帝国の土産を勇者の枕元に並べるヤクトバーグ卿。
相変わらずの二人に、勇者の表情は穏やかそのものだった。
「それにしてもだマーク、お前はいつも無茶をする。今回だって単騎で敵陣に突入なんて真似をして、一歩間違えばどうなっていたか…もっと周りを頼ってくれ、一人で戦う必要なんてないんだ」
「うん、ごめんよネラフィ。ナナイ様にもきつくお叱りを受けた。次は自重するさ、だから怒らないでよ」
「リューティス卿よ、ネラフィム卿が弱ったマークを狙ってるぞ。ここはお主の出番ではないのか?」
「わ、私は別にマークのことなんて。だいたいいつも自分勝手なんだから、今回のことだっていい気味よ、馬鹿…」
「ヤクトバーグ卿、リューティス卿は冗談が通じないのさ。勘弁してあげて下さいよ、本当は大好きなマークが心配で心配で、ここに来る前からそわそわしっぱなしだったんだよ」
「…⁉︎ソロ卿、余計な事を〜!」
真っ白な髪を一つに纏めたロングヘアーの女性、若干小柄な体型に、愛用の聖なる焔を宿したカンテラを持つ聖人。
もう一人の軽い口調の男性は、緑色の髪色で、服の上からでも鍛えぬかれた肉体美が見てとれる戦士であり、肉体そのもに聖気を纏い戦う聖人。
今回の勇者の旅の同伴者であり、旅のパートナー達でもあった。
聖灯のリューティスは、怒りを露わにしてその場をあとにした。本心を突かれて、動揺する自分を勇者であるマークに見なれないように。
それを横目で見ていたネラフィムが、すぐさまソロを嗜める。
「まったく、ソロ悪気はないにしても言い過ぎだ、すぐにリューに謝ってきなさい。せっかく皆がいるのに喧嘩するなんて、私が許さないからね!返事は?」
「…わかったよ、俺も言い過ぎたよ。リューティスを連れてくるよ」
「わかればよろしい」
「なにをやっているんだか、ところでマーク、お前程の腕前でも討ちとれぬ業魔将と戦った感想を聞かせてほしい。我々の足止めを行った者達ともなにか因果関係があるかもしれないんだ」
「わかりましたヤクトバーグさん、あいつは僕が討ちとった者達を見て激昂していました。気が昂ぶり、破壊の権化のように暴れ回っていました。僕も応戦しましたが、まず膂力が遥かにあちらが上です。捌くのが精一杯で、鍔迫り合いなんてしたら骨折なんかじゃすまなかったでしょう。数十合と打ち合った後、御使いと共に現れたもう一人の業魔将に捕縛され、後退していきました。彼がもし、冷静なままだったらこちらが危なかったでしょう。危険な相手でした。ヤクトバーグさん達の相手はどんな奴らでしたでしょうか?」
「なるほどよくわかった。我々が相対した者達は、青白い肌を持つ赤目の人外であった。ソロ達の方にも現れたそうだ。彼等は五人組であり、私とネラフィムが戦ったのはその内の二人。小太りな男性と端整な女性であった。彼等は武術に精通していて、とてもやりづらかったな。みたことない動きや構えから、魔族側の流派かなにかだろう。マークが戦った業魔将の腹心達であろうな。心せねばな」
「業魔将に赤目の五人組か、仕事が一つ増えたなマーク。はたして我々で抗えるだろうか、少し不安だな」
「ネラフィム卿そんな時はこの帝国産の魔法のジュースで…!」
「これお酒じゃないヤクトバーグっ!」
勇者の天幕からは、暫く笑い声が絶え間なく聞こえ、遅れて合流したリューティス達も含めて夜はそのまま宴会というどんちゃん騒ぎとなった。
不安を振り払うように…




