第二軍団整理
ミュンヘルト会戦から一夜明け、魔族側の前線基地であるローガルド要塞は、第二軍の負傷者でごった返していた。
治療中にも関わらず、銃弾の傷により失血死する者が多く、酷い状況であった。
衣服や装備は破れ、破損した鎧がそこかしこに転がっている。
体内に貫通せずに残った銃弾を、数人がかりで抑え込み、煮沸消毒した鉄棒で取り出されている者は声にならない悲鳴をあげており、より悲惨だった。
しかし、彼らはまだましな方だった。
蜂の巣にされた魔族などは、痛みを感じる暇もなく息絶え、声すら上げれずに最期を迎えた者も少なくない。
そんな兵士達を戦場で回収できるだけ回収し、荷車から降ろし、要塞内の広場で連日合同で火葬をして弔っていた。
顔の判別できない者や、上半身に下半身がなくなった者、腕や足だけの者などを沈痛な面持ちで見つめる、ティナをはじめとした戦士長や部隊長達、自分の部下の亡骸がどれかもわからず、ただただ無言で火葬場所から離れられずにいた。
咽び泣く者、悔しさに震える者、仇討ち誓う者がいる中、ティナだけは虚無感が広がっていた。
信頼する部下と同時に失い、目指すべき目標を見失っていた。
そんな彼らを見かねた第一軍のリビングデッド達は、彼らに声をかける。
「戦いは時の運だ、犠牲は当然ついてまわる。生き残った者は、死んでいった者達の想いを引き継ぐ義務があル」
「顔を上げなさいティナ副長、貴方は貴方ができる最大限の努力をした。バンネッタ様の補佐は貴方にしかできないし、我々では替えがきかない、貴方がいるべき居場所だ。だから無策にあの連合軍の群れに突撃しようなんて思っちゃ駄目、それは一番してはいけないことヨ」
「でも…でも私はなにも…なにも出来なかった。奴らの誘いに乗り、第二軍全体を死地に追いやってしまった。籠城策をとっていればこんなことには…。ルルドもヲイスも私を逃すために…」
「いいやそれは違う、どのみちあの数では籠城戦であっても犠牲はでたはずさ。今は彼らを弔ってやることが先決さ、彼らも雄々しく戦い、そして散った。名誉の戦死ダ」
「左様であル」
「まっ起き上がりの自分らに、説得力がないとか言うのは禁止だからナ」
「ふふ、どこまでも明るいですね。それに貴方達の両翼での働きで、我々はこれだけ生き残ることができました。第二軍を代表して感謝します!」
「持ちつ持たれつな関係じゃないか私達は、あまり畏まらないデ」
「むぅ〜、そう言われてもですね…」
凝り固まった雰囲気が解けだすように、活力が戻りつつある第二軍。
次第に生き残りの兵士達を茶化しはじめ、場を和ませていく。その様子を、リビングデッド達はいつまでも楽しそうにながめていた。
ローガルド要塞の楼閣の一角で、業魔将とリーゼは第二軍の再編について議論を交わしていた。
中核を構成する部隊が軒並み壊滅し、その穴埋めとして魔獣達を臨時で編成する案をだし、亜人の部隊の訓練が終わるまでの臨時的な措置がとられた。
「ですが、魔獣達ては陣形や行軍、軍務などに様々な支障がでると予想されます。我々第三軍のゴーレム達を引き続き、第二軍所属といたします」
「私の骸骨兵達も同じように第二軍に仮配属という形にします。体裁だけはとらないと、敵に侵攻の口実とされてしまう。それだけは避けるべきことでしょう。副官には、レジーナとムストを招集しましょうかリーゼ様?」
「そうね、それが現実的な案だと考えるわ。数を揃えれば、増強されたと敵も勘違いするだろうし。ただちに行うように、それにしてもよく生きていてくれたエンリエッサ、バンネッタも!救出が遅れてすまなかった」
「私はとんだ醜態を晒しました。面目ありませんリーゼ様」
「こいつは褒めると増長します、貶すぐらいがちょうどよいのですリーゼ様」
「あぁん?」
「何よ…その顔。文句ある?」
「やめないか二人共、御前だぞ。あぁ申し訳ありませんリーゼ様…」
「気にするなイシュガル、なんだか皆が揃うのは、随分と久しぶりな事なんだし、なんだか嬉しいな」
「左様でございますか…」
「はっ、獣のように叫んで戦うなんてどこの原住民よ、バンネッタ言葉は喋れるのかしら?イシュガルに捕縛されていた貴方は芋虫みたいだったから、悪魔じゃなくて虫なのかしら?」
「エンリエッサ、あまり調子にのるな…俺は気が短い、喧嘩なら買うぞ?」
相変わらずの二人に、イシュガルは盛大にため息を吐き、リーゼは楽しそうに二人を眺めていた。




