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化物達の理想郷  作者: 同田貫
希望と絶望と
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憤怒

倒れ伏したヲイスにとどめをさそうと、勇者は近づく、それを阻止しようと辺りの部隊が勇者に突撃するが、草木を払うように掃討されていく。

「ヲイス殿を守れ、ローガルドに連れ帰るんだ!勇者を討ち取れ!」

「糞っ、寄るなってんだ!」


「仲間の身を心配するか、そういうところは我らと同じだな化物共が、まったく反吐がでる。楽にしてやるよ、上官の後を追いながら安らかに逝け!」


今際の際にヲイスは、走馬灯のようにフラッシュバックする第二軍での日々を懐かしんでいた。

軽口ばかりのティナの腹心のルルド、根は真面目なのに普段の性格で損をしている飄々とした男。

獣人の部隊を統括し、自分と同じ副官であったティナ、どこかぶっきらぼうだが一本気のある豪快な女性。彼女の性格は嫌いではなかった、同じ副官というよりかは相棒といった存在。

そして、自分に副官という大役を任せてくれたバンネッタ様、果たして自分はご恩を返しきれただろうか?


ヲイスは目を細め、穏やかに微笑みながら、勇者の凶刃に倒れた。



「ヲイスッー!」

「ちくしょうよくも、あの野郎は私の獲物だ誰にも渡さない!」


言葉数の少ない同じ第二軍の副官が、目の前で殺された。

ティナはこの時、冷静ではなかった。それを嗜めたのがルルドだった。ルルドは自分達の上司をヲイス副官のように死なせることを許さなかった。なにより多くのものくれた恩人の上司を。


「ティナの姐さん、あんたはここで死んじゃいけない!ヲイス隊長はあんたに逃げろといった、俺たちはその命令を守る義務がある。だから姐さん、あなたは生きてくれ…、第二軍の魂は姐さんに預けましたよ!」

「ルルド、なに言ってるの?私も一緒に戦うわよ!命令を聞きなさい!」


「おい、ティナ隊長を後方陣地までお連れしろ!それに隊長、もしかしたら勇者を討ち取れるかもしれない、その時は褒めて下さいよ?」

「まっ…待て話を聞けルルド…」

「いってくれ、決心が鈍る。バンネッタ様には申し訳ありませんと詫びを伝えてくれ、ではな兄弟達。姐さんも」


「ルルド!ずるいぞ、私だって、私も!」


両肩をオークの兵にがっしりと組まれ、強引に後方に退がっていくティナ達を尻目に、ルルド達は覚悟を決める。

あの巨大なヲイス隊長を屠る存在相手に、自分はどこまでやれるか。


「あーあ、最期に隊長に告白でもしとけば良かったよ、お前達もすまないな俺のわがままに付き合わせて…」

「なんの、一人旅なんてさせませんよ」


「勇者に手傷の一つでもつけないと、我々の怒りも収まらないですし」


勇者に対して、残り少なくなったルルド隊は気力を振り絞る、殺気を漲らせ強烈な突きや矢を放ち、勇者に攻撃する。

囲い込み、多人数での波状攻撃、前後左右あらゆる角度の攻撃がいなされていく。


「この野郎が!」

「くたばれや、この天使の狗め!」

攻撃の度にルルド達は数を減らし、遂にはルルドと数名だけとなった。


「その闘争心賞賛に値する、名を聞いておこうか、獣人の戦士」

「ルルドだ、この糞勇者が!」


「そうか、私の名はマーク・ベルナドットという。さらばだ勇敢な戦士!」



勇者の聖剣の一閃に、残っていた部下達は粉微塵に斬殺され、ルルドの首は胴体から離れ、とめどなく血が辺りに降り注いでいた。

途端に辺りは連合軍の歓声に包まれた。勇者を讃える声や、賞賛する声が周辺にこだましていた。


「「勇者!勇者!我らが勇者!」」


しかし、そんな雰囲気を壊す、底冷えするような暗い声が辺りに響きわたった。


「勇者勇者とうるさいんだよ、俺の可愛い部下達を…貴様達は殺すっ!」

「殺す殺す殺すころすころす、コロスコロス、コォォロォォース!」


「ガァァァーーッッ!!」


「おやおや第二軍の主人、君が噂のバンネッタさんかい?」

聖人達の妨害にあっていたバンネッタは、遅れて合流したリビングデット達にその聖人達の対応を任せ、現場に急行した。そしていくつもの死体の中からヲイスとルルドの亡骸を見つけたことで、彼の感情は爆発した。


怨敵をただただ殺す化物となって、連合軍と勇者に襲いかかった。


連合軍側からの激しい銃火の嵐をものともせず、バンネッタの大剣の一振り一振りが連合軍の部隊の屍を増やしていく。

四肢を砕き、上半身が消し飛び、臓腑の溜まった血溜まりがそこかしこに増えていく。

黒衣の鎧の人外の勢いは止まらず、殺戮を続ける中、勇者の聖剣が黒の大剣の猛威を無理矢理に止めた…


「グゥゥ、グゥアァァーーッ!!」

「こいつは凄まじい、怒りの化身といったところか!将軍辺りの部隊を下げてくれ、被害が増えるばかりだ!」


「かしこまりました!」



平原の中央で勇者とバンネッタの一騎討ちが展開されていた。

上空のエンリエッサとナナイの戦いも決着が見えず、戦いは混迷の度合いを増していった。ただ一つ言えるのは、終結の刻が近づいているという不確かなことだけだった。

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