篝火
ポリーウット城塞都市と同じ城壁の高さまで飛翔すると、リーゼは今まで行った能力の実験を思い出しつつゆっくりと翼をはためかせていた。
体内の温度上昇や口から火の息吹を吐くなど自分の身体を介してなら消費する魔力は少量であった。
その逆に体外の外の空間に炎の塊などを想像し生み出すさいは、魔力消費が大きいことがわかった。
なにかをイメージするさいは塊を投げつけるのではなく、炎を明確にイメージし、固めて手元に置きながら攻撃するほうが魔力の消費が抑えられると考えた。
そこでリーゼは、先程村の自警団が使っていた槍をイメージし炎の槍を具現化させた。身の丈以上に大きな槍を見つつどこかうっとりとした表情で行動を開始した。
「まずはあの大きな城門を切り崩してから挨拶しようかな、玄関から入らないと面白くないだろうし。」
そう笑うと、高温の炎でできた槍を振るい門を崩しにかかった。腕力にものをいわせた一撃は爆音とともに大きな大穴を門にあけた。
「さぁさぁお楽しみの時間だわ」
炎の槍を振るい炎の塊を雨のように降らす悪魔に対し、守備隊の兵士達は死物狂いの様相だった。
「悪魔が出たぞーっ!応戦しろ弓矢と槍をもっと持ってこい。こいつは異常だ!」
「わかってるそわな事は、山脈にいる業魔将の一柱かもしれん」
「撃て!撃ちまくれ!」
一体に対して集団で取り囲み、矢を射かけ、剣や槍を振るい接近戦を仕掛けていく。
こちらの攻撃は悪魔にあたっても有効打とはならず、必死な抵抗を嘲笑うかの如く、周囲には人の焼け焦げた跡が増えていくのみで、死の匂いに溢れていた。
大盾の裏から魔法攻撃を繰り返す魔術師達を鬱陶しそうにリーゼは見つめ、息を大きく吸い込むと紅蓮の業火を吐き出しその周囲を景色ごとなぎ払った。
燃え広がる炎はとどまることをしらずあたり一帯を飲み込み、さらに犠牲者を増やしていった。
隠れている者、逃げて避難する者、応戦している者に、救助を行う者の区別なく全てを巻きこんだ。
警戒の早鐘を聞いた矢先に、ブルーノは大きな衝撃音が聞こえたことに危機感を露わにし矢継ぎ早に指示をだした。
今なお爆音と剣戟、断末魔の声が鳴り止まない中で、
「城門守備隊はどうなった?街の隔壁を全て閉ざし脅威を中心部にいれてはならん。すぐに対応せよここからは時間との勝負だ!敵は何人なのだ?ロート山脈の動向にも気をつけよ敵の策かもしれん」
情報が錯綜する中一人の伝令の言葉に司令室は凍りついた。
「閣下一大事です!敵は悪魔一体なのですが、単独で正門を破壊した力から御使いではないかと魔術師達が騒いでおります。現に正門方面では夥しい被害がでており、被害を拡大させながら真っ直ぐに市街中心部を目指しております。すぐに脱出を!」
伝令は顔面蒼白となりながら事実を伝えきった。額には汗が滲んでいた。
「住民を避難させる時間を稼がなければ、後方の村々が襲撃されてからここに来るまでの時間があまりに早過ぎる…おそらく真実であろう。戦況はどうか?まだもちそうか?」
動揺を振り払いながら指示をだしたが、皆の動揺と緊張が収まらないでいた。伝承にある御使いの登場にみんながみんな正常な思考ができないでいた。
そこに場違いに明るい少女の声が響いた
「一番偉いやつはここにいる?」
底抜けに明るい声でこちらを見つめながら返事を待つ、燃えるような緋色の髪色に可憐な容姿をした女性悪魔がそこにいた。
誰もが息をのみそれが化身の悪魔だと一瞬で理解した。やがてブルーノは覚悟を決めて名乗りをあげた。
「この都市の司令官であるブルーノ・レスタだ。殺戮をやめていただきたい我らは降伏するゆえ化身よ何を聞きたい?」
誰もが思ったことをブルーノは代弁したしかし全ては相手の気分次第だと、どこか覚悟を決めていた。
「ここに捕らえた魔族はいたりするのかしら?それと勇者や聖人は近くにいるのかな?貴方は知っている?」
どこか探るような目つきで見据えていた
「捕らえた魔族はこの城の地下に何十人か収容されている。勇者様方の情報は現在の居場所はわかりかねる。」
ブルーノは吐き捨てように呟くと、彼の意識はそこで途切れた。
「そう、ありがとう…」
そう言いながらその場にいた将官共々ブルーノを切り捨てた。
その場には物言わぬ死体が転がるばかりで、ポリーウット城塞都市はやがて巨大な炎により灰燼となった。
「ちょっと身体が重いわね、熱が身体から抜けないような。能力の行使のし過ぎが原因かもしれないわ…山脈に忙がないと、あとは同胞の救助ね」
ポリーウットは皇国の地図よりその名前を消し、廃墟には御使いである悪魔が一人佇んでいるだけであった。




