ミュンヘルト会戦(2)
街道沿いで始まった会戦は、今や平原一帯に広がりを見せており、部隊の前衛部隊が激しく近接戦闘を開始していた。
豊富な物量で攻める連合軍の前に、魔族側の旗色は悪かった。
連合軍の持つ新式の単発式ライフルの射程距離は長大で、弓矢やクロスボウの数倍の射程を誇り、地上で猛威をふるっていた。
隊列を敷き、入れ替わり立ち替わりで射撃することで隙を無くし、絶え間なく弾幕を張り続けていた。
「装填よし、目標敵前衛歩兵部隊。充分に引きつけよ、放てっ!」
「命中多数、効果甚大なり」
「隊列を入れ替えよ、目標そのまま、敵の潰乱した部隊を叩け!」
「グギャ…」
「ゲヒッ…ゲヒッ…」
命中した多数の弾丸に魔族側の兵士は前のめりに倒れこんだ。
だが、魔族側の兵士達もやられてばかりではなかった。戦友の屍を乗り越え密集している隊列に向け、ゴーレムの圧倒的な高さから投擲される数多の炸裂弾により、連合軍側の被害も少しずつ広がっていく。
平原の戦いにおいて動きがあったのは、両翼に展開している砲兵の陣地だった。
野砲の群れを片付けようと、急接近する魔族の特務部隊。骸骨の騎馬にまたがる亡者の群れ、先頭にはリビングデットの姿があり被害度外視で突撃をかんこうしていく。
野砲陣地からは絶え間なく弾幕が張られ、次々骸骨兵が落馬していく中、リビングデット達は行動を開始する。
「やっぱりこれ雑用じゃないか?中央は血みどろみたいだヨ。そっちにいこうよ、ホソミ」
「ぼやくなチビ、任務に雑務なんてもんはないんだよ。己の勤めを果たせ、次にいくゾ」
「はいはイ…」
ぼやきながらも、手に持つ武器で惨殺劇を繰り広げるリビングデット達、いつの間にか生き残りの骸骨達も加わり、この世の地獄を作り出していた。
陣地を守備する兵隊達を確実に仕留めていき、手投げ式の炸裂弾を投げ入れ、次々と野砲を沈黙させながら陣地を周るチビとホソミ。
身体には無数の弾痕が開いているにも関わらず、平然と動くその姿に薄気味悪さを連合軍の兵士は抱いていた。
それは反対側の陣地でも同様であった。
「こいつは、まだ動くか!このっ」
「くたばれ人外!」
馬乗りになり0距離射撃で、何発も撃ち抜いているのに死なない存在。
こちらを不思議そうに見つめ、されるがままにしているハッポウ。
それを横薙ぎに払い首を落とすフトッチョ、周囲の野砲に熱心に炸裂弾を投げ入れ続けるネコゼ。
「遊び過ぎだハッポウ、驕りはやがて致命的なミスに繋がる、謹メ!」
「硬いのよフトッチョは〜。もう少し遊びなさいよ、遊び心をだしても罰は当たらないワ」
「もう少しネコゼを見習エ、ハッポウ」
「あいつは仕事中毒なのヨ〜」
他愛もない会話をしながら、ハッポウは突然真顔になる。
「中央の部隊はまだ持つかナ?」
「さぁどうだろうな、今は第三軍のゴーレム部隊と第二軍が粘っているが…」
ブォォーン、ブォォーン!
一際激しい角笛が辺り一帯に鳴り響く、途端に要塞方面からは歓声が上がる。
「バンネッタ様とエンリエッサ様が出撃なされた。我らの獲物を残していてくれるとよいのだが、どうなるかナ?」
「どうだろうネ?」
二人は怪しく笑い合い、本隊に合流するべく骸骨達を率いて野砲陣地をあとにした。角笛がどこまでも鳴り響く中…
ローガルド要塞からは意気揚々と、エンリエッサとバンネッタの両名が出撃していく。
バンネッタは、自身の配下である副将のティナとヲイスを率いながら悠々と出撃する。彼の部隊の戦士達は目が血走り、お腹を空かせた肉食獣のようだった。
「さぁお前達、お待ちかねのでっかい戦だ。血肉を啜り、死体を踏みつけ、人間達を蹂躙しろ。ティナにヲイス統率は任せる、俺は強者を探す!」
「はい、バンネッタ様お任せを!」
「ゴ武運ヲ…」
エンリエッサは上空に飛翔し、戦場をはためきながら全体を俯瞰しながら骸骨を直接指揮していた。
「さあナナイ、私と貴方の決闘の舞台は整ったわ。後は噂の勇者さんね、いったいどんな奴なのかな?こればかりは早い者勝ちだよバンネッタ…」
増悪に塗れながら、自身の敵を求め災厄を起こす者達が要塞の中を飛び出し、蠢き始めた。




