ミュンヘルト会戦(1)
人族側連合軍は、足並みを揃えて進軍を開始した。少し前までは、皇国の生き残り達で組織された義勇兵の集団が、今や一国の兵力数に匹敵する膨大な数となっていいた。
総兵力は、三十万人にも増強されており、昨夜にも増援が到着し、戦意旺盛な様子を見せていた。
「いい眺め〜、ねぇバンネッタそろそろ始めないかしら?我慢のし過ぎは身体に良くないしさ。それにあのナナイがいたんだよ、勇者や聖人も参戦させるってさ。笑いが止まらないわ!」
「この戦場は大盛り上がりだな、第三軍のゴーレム部隊も到着した!そろそろ開戦といこうか!」
「「おぉぉっーー!!」」
バンネッタの掛け声に鬨の声をあげ応える第二軍の兵士達、弓矢に矢を番え、軍旗を掲げ、第三軍のゴーレムの背中の足場に乗り込み、第三軍開発のとある装備の確認作業を進める。
「うんうん頼もしいねバンネッタ、私も気合い入れるか!《夜天に迷いし亡者の魂達よ、生者を黄泉へと引きずりこみ給え。我が命、我が願いに従い現世に顕現せよ。果たせぬ願いを成就する時は今、死せる亡者の軍勢よ進軍せよ!》」
「ハッポウ、ネコゼにフトッチョ、ホソミにチビは周辺の骸骨達を指揮しつつ、自由に動け!脆弱な人間達に我らの武威を示せ、奴らの血でこの地を真っ赤に染め上げてやれ!」
「「はっ主様の仰せのままに」」
薄紫色の魔方陣が幾つも出現し、数体、数百体、数千体、数万体と鼠算式に骸骨達は数を増していった。
その数は皇都を攻めた比ではなく、膨大な数となって連合軍と対峙した。そして一定の数が揃うと、ゆっくりと軍旗を掲げながら行進を開始した。
先頭にはリビングデッド達と、第三軍の鉱石や重金属などでできたゴーレム達部隊が骸骨兵を先導していた。
連合軍と魔族の混成軍団が激突したのは、ちょうど旧皇国の街道沿いであった。その街道は付近を治めていた領主の名から、ミュンヘルト街道と呼ばれていた。後世の歴史家達は、この会戦をミュンヘルト会戦と名付け語り継いでいった。この会戦は、リーゼが御使いとなって初めての大規模会戦となった。
連合軍の士官達は、迫り来る異形達に対し下士官に指示を飛ばす。
「第一から第十砲兵隊、打ち方用意!目標敵魔族兵っ、撃て!」
「弓兵構え、炸薬装着!目標敵中央、撃ちまくれっー!炸薬の量は気にするな、どんどん使え」
「続いて工兵達よ、投石機で投石を開始せよ。目測で構わん、投げれるものを投げまくれ。敵を足止めし、足並みを混乱させろ!」
連合軍の怒涛の攻撃の前に、前衛の骸骨達は粉微塵に粉砕されるが、後続の骸骨は続々と攻め寄せる。
ゴーレムにも被害がおよび、何体かはバラバラに砕けた。ゴーレム達の背にいる魔族は、そんな砲弾の雨を頑強なゴーレムを盾とし、背中の足場から手投げ式の炸裂弾を次々と投擲する。
地上に炸裂弾の花火が咲き、その花火が咲く毎に誰かの命が確実に散っていく。
投擲している魔族にも弓矢が殺到し、ゴーレムの背で絶命する魔族達。
「やっぱり相手の遠距離武器が邪魔ね、少し黙らせようカ」
「フトッチョとチビは左翼ヲ」
「ハッポウとネコゼと俺は右翼ダ」
「ちょっと勝手なんだかラー」
「心得タ」
そんな戦場を、骸骨達を率いて攻め寄せる一陣がいるのを連合軍は察知できないでいた。戦いはまだ始まったばかりであったのだから。




