狂宴模様
暗殺者達は包囲を狭めていく、王宮からわざわざ離れた屋敷に使節団が宿泊してくれるなんてとても愉快なことだった。
心おきなく、辺りを気にせず仕事ができるからである。
あとはどう料理するかの道筋を考えるだけであった。
マトは屋敷の使用人達十数人を集めた。
その中には使節団のラタニア達人も混じっていた。
一箇所に集めた方が守りやすいためであるからであるが、集まった使用人達は不安気な表情であった。
中には泣きだしてしまう侍女などもいたが、ラタニアが横に寄り添いマトがその涙を拭いていた。
「真夜中にすまないね君達、ふふふっ、すぐに片付くさ。大船に乗った気でいたまえ諸君。私達の憩いの時を邪魔した報いを受けさせるからな!」
「まったくもー、マトさんは」
緊張感の欠片もないマトの様子に、安心したかのように客間全体に笑みがこぼれていた。
「配置はどうしましょうカ?」
そんな中で淡々と装備を確認しながら、臨戦態勢のリビングデット達にマトは指示をだす。
「お前達は屋内に入りこんだ敵を駆逐していけ。レジーナは、屋外にいる敵を頼むよ。私はこの客間の直掩にまわるから。いい?」
「了解しタ」
「屋内であれば好きにやりますネ」
「三人で競争しようカ?」
「わかったー私は屋外担当ね!」
「真面目にしなさいよ?では各自仕事の時間よ。ラタニアと君達も大丈夫だから。夜は私達の領域なの、だからそんなに心配した顔しないの」
部屋をでたリビングデット達は三方に別れて散っていく。
ネコゼは幅広なククリを構えて疾走し、ハッポウビジンは優雅に歩きながらぶらぶらとレイピアを構え、フトッチョはある程度進むと廊下の中程で止まり獲物を待ち構えた。
最初に暗殺者達を見つけたのはハッポウビジンだった。
「見ーつけタ」
一足飛びで暗殺者達に迫り肉薄し、レイピアで連続して刺突していく。その人の動きを超えたスピードに暗殺者達はなす術なく命を落としていく。
「遅いわ。そんな動きで何と戦うつもりなのよ!うふふフ」
「この化物めっ!」
「毒の短剣だぞ?当たっただろ…」
「何度も致命傷を与えたはずだぞ」
暗殺者達がハッポウビジン与えた傷は、首筋や胸、肩や足など多岐にわたるが、そのどれもが決定打とならずにいた。
それどころか、斬られた傷口からは血がでずに淡い紫色の光を放ちながら徐々にだが修復していた。
「それはね、我らがすでに死人だからだよ。生者の肉と魂を糧にする我々にそんなモノは効かないナ〜」
「もう一人いやがっ…ガッ…!」
ハッポウビジンにいつの間にか合流したネコゼも加わり、廊下一面に血の匂いが濃くなっていく。
乱戦の剣戟が止む頃には、暗殺者達の死体で一杯となり、手持ちの武器を点検しながら客間へと二人は引き返していく。
フトッチョは二人とは真逆の戦闘スタイルだった。カウンター狙いの動きで向かってくる者達を仕留めていた。
後の先を取り、攻撃後の隙を見逃さない。緩慢な動きであるはずなのに、どこか洗練された動きだった。
「話が違うぞ!こんな奴等が警護にいるなんて、頭に…報告だ。速やかに退け!」
フトッチョは館内に敵がいないと判断し、後退する敵を追尾しつつレジーナの加勢に向かうも、レジーナによって食い散らかされた暗殺者達であったモノが転がっていただけであった。
顔は血に塗れていたが、不思議と衣服は綺麗なままであった。
「ごちそうさまでした。ちょっと筋張ってたかな?粗悪品って感じがするし、腹痛起こすかもよ、フトッチョも食べる?」
レジーナはフトッチョに対し、頼んでもいない味の感想を述べる始末だった。




