北部条約の締結
使節団一行は、三日間を王都の施設や都の民の暮らしぶりの視察、条約締結に向けての準備に忙しく動き回った。
一日目と二日目は、たっぷりと王都の見学に費やした。ヴァスティーユ大陸中の品々が、この王都の市場に集約しているような盛況ぶりにそれぞれが目を輝かせていた。
マトはエンリエッサに対してのお土産を吟味し、レジーナとラタニアは珍しい食材や屋台を見つけては食べ歩きをしながら付き添いをしていた。
リビングデット達も、武器屋や防具屋を熱心に回り、珍しい素材や形の物に子供のようにはしゃいでいた。
連れには二日酔い気味の村長の親戚四人を連れ出し、薬屋などにも寄っていた。
「木彫りの闇の神の土産物も捨てがたいが、先日たしか果実酒をいたく気に入っていたがなにか同じような物はあるか店主?なにっ、この先にアラトラムの果実酒なるものを扱う酒蔵があるのか!でかした店主またくるよ。いくよ二人共」
「普段は落ち着いた態度なのに、エンリ姉様が絡むといつもああなんだよマトは。あっオヤジさんそこの串焼き10本お願いね!ラタニアもいる?」
「はい、頂きますね。エンリエッサ様とはまだお話したことがないんですが、とても素敵な方のようですね」
「見てよネコゼ!このレイピアの装飾を、技巧を凝らしているワ」
「ハッポウビジン、わかってないな剣は大きく使い勝手の良いものこそ至高なのだヨ、なぁフトッチョ」
「うん?そうだね。まぁ好きな物を買いなよ。この盾の感じ、欲しいナ」
「頭がいたい…水飲みたい…うぷっ」
王都に魔族の使節団の方々が来たという噂は瞬く間に広がり、紺色の礼服の集団が今は市場にいると都の民が大勢集まってきていた。
遠方からは、わざわざ亜人の者も大勢かけつけていた。
口々に第一印象を語りあった。
「あれが魔族の方々か…」
「おい、人も混じってるよすごいな」
「第一軍団の精鋭なのかな?」
「一人魔獣の方がいるな、種族名がわからないんだけど」
一行は市場巡りの次に、庭園や果樹園、酒の醸造所、製鉄所など様々な場所を巡っていった。
技術や知識を書き留め、報告の材料としていった。
そして三日目に、この遠征の本来の目的の条約締結の交渉を開始した。
議会場ではそれぞれに不利益がでないように、お互いが何度も条文となる文章を添削、修正した。
そしてその日の夕方にようやく形となり、代表のマトと国王が署名をし、捺印をした批准書を交換した。
議会場は万雷の拍手が巻き起こり、マト達一行はようやく帰国の手筈となった。
だが帰国の前の晩、辺りが寝静まる刻限にマト達一行を疎ましく思う一派から派遣された暗殺者の集団が忍び寄っていた。音を消しながら気配を絶ち、闇夜を闊歩していた。
「目標は使節団の排除だ。見取り図を確認しろ。宿泊している棟を囲め、逃げる者と目撃者にも容赦するな。仕事の時間をはじめようか」
暗殺者のリーダーは囁きながら号令をだし、行動を開始する。
そんな彼等を見ながら、使節団の五人の人外達は舌舐めずりしていた。




