王国の考え
ウェルドア王国に奇妙な使者が来たのは、一週間程前のことだった。
フードを深く被って顔色はわからなかったが、自らを魔族と名乗っていた。
使者は書状を携えており、その書状にはこの国との交易を望むことや、住民の往来の自由化を望むことなど様々な文言が並んでいた。
また使者殿は、お近付きの印として見事な銀細工の工芸品を献上してきた。
なんでも、魔族の都市の統治者がこの国産出の果実類をいたく気に入り、是非とも交易を結びたいとのことだった。こちらとしても良い関係を築きたいとのことで快諾した。
使者殿は、今日より一週間後に使節団をこの王城に派遣すると告げ、下知を取ったことに安堵しながら礼儀正しく退出なされていった。
それから一週間後に、約束通りに使節団の一団が正門の前に現れたことにより、にわかに城内は慌ただしくなった。
案内の者に先導されながら、今は城内を見学しながらこの謁見の間に近づいているとのことだった。
また使節団を見て、筆頭である宮廷魔導士は頭を抱えていた。
使節団の半数は我々と同じ人なのであるが、もう半数が問題であるということ。
先頭を歩く貴婦人のような女性、くすんだ茶髪を肩まで伸ばし、額に目のある三つ目の魔族。淡い紅いドレスを着用しているが、魔力の底がまるで見えない。
おそらくは魔族の中でも精鋭の一人であり、代表者であろう者。
使節団の最後尾を歩く、上半身が女性の姿、下半身は翼竜の姿をした異界の魔獣。フリルの沢山付いた衣服を着用しているが、下半身の姿のアンバランスさが際立っている者。
また使節団の左右にいる瞳の色が虚ろな護衛であろう三人は、命の灯火がまるで感じられない。魔族でも魔獣でもない別のなにかであり、身の運びにはまるで隙がない。
宮廷魔導士は重ねて王や側近達に進言する。決して争うことをしてはいけないと。あれは一騎当千の化物達だと、どれほどの災厄がうまれるかまるで見当がつかないとも。
王は何度目かわからない頷きを返し、側近達も固唾を呑んで見守る。
衛兵達にも手出し無用との命をだし、その時を待つ。
「ラタニア、下を向いて歩いてはいけないわ。もっと堂々としなさい、そうすれば自然と箔がつくものよ。あとレジーナはもっと静かに歩きなさい」
「はい、マトさん」
「マトは意地悪だよ」
「おまえ達は、不測の事態に備えさい。何が起きるかわからない」
「心得ましタ」
「君達には記録係を頼みたい。議事録として、後ほどエンリエッサ様に提出するからね。頼める?」
「はっ…はい!了解です」
そんな考えとは裏腹に、どこまでもマイペースな一団は謁見の間の大きな扉に手をかけ、扉を開けた。




