上位個体
一週間程が経ち、新都市リーゼガルトの修繕作業が順調に進み、城壁と城の修復が完了した。
後は住宅街などの内側の部分だけとなり、業魔将達とリーゼは各々の作業に従事することなった。
懸案だった結界については、イシュガルとエンリエッサが知恵を出し合い、外縁部の広範囲に探知の結界を張ることで決着した。
この探知の結界の性質については、結界内の人族と魔族を色で判別し、この都市に害意や敵意のある者を色の濃淡で区別するようになっている。
城主の間に鎮座した、イールガルにある水晶球の模造品に、マーカーのように映しだされ、色の濃度が濃いほどに危険度を表す力作となっている。
現在は魔族を表す紺色のマーカーが多数を占め、今後移住するであろう人族達については、赤色で表示される。
また防衛力の強化の案としては、エンリエッサお手製の骸骨兵達数千体を召喚し、三人一組で巡回と警備を担当することで落ち着いた。
そして駄目押しの案として、
「骸骨兵達の指揮者として、リビングデット達を使う案を実行に移す時がきたようね。どういう具合になったかわくわくするね」
「別々の魂と体ですからね、反発する素体が多い中で定着した数少ない五体ですから。意思疎通ができれば御の字なのですが、あとは結果次第ですか」
「死霊術と呪術、付与術のハイブリッド体ですし、夢が広がりますね」
「どうなるんですか?エンリ姉様?」
五つの棺を前に、危険な雰囲気を出している三人と、よくわかっていない一体のいる城内の一室で最終調整が行われている最中であった。
棺の蓋には、複雑怪奇な紋様が別々に彫られ、エンリエッサが丁寧になぞることで淡く発光し、
やがて蓋が一斉に動き出し、開いた。
小太りな男や猫背の男、痩せ過ぎな男、まだ幼い少年に端整な女性が棺からのっそりと出てきて、同時に片膝をついて命令を待っているようであった。
全員が青白い肌に、首や額、肩や手の甲、胸元に別々の紫色の紋様が浮き出ていた。
目だけは、赤く光を灯しながら。
「これは、成功かな?」
「魔術紋は正常に機能してますね」
「素体が良かったんですよ〜」
概ね実験が成功した事に胸を撫で下ろし、各々が議論している中、
「貴方達、私はエンリ姉様によって召喚された1番の古株、レジーナよ!私の訓練は厳しいわよ」
「「はイ…レジーナ様…」」
よくわからない持論を展開させているレジーナによって、意思疎通ができたことにエンリエッサはとりあえずレジーナを褒めた。
そんな中慌ただしく扉が開け放たれ、副官の一人が報告してくる。
「エンリエッサ様、水晶球に複数の人族の反応が、百名程の人族が別の人族の集団に追われるようにこの地に向かってきます。いかがいたしましょう?」
「その百名程の人族を救い出しましょうか。リーゼ様の方針のこともある、この子達の活動データもとりたいしね。もし助けた後こちらに反抗するようなら、この子達の仲間が増えるかもしれないし…良いことね」
「お前達、初仕事よ!存分に暴れてその力を私に見せてみなさい」
「「お任せヲ…我ラが主様…」」
「私も頑張ります!姉様っ!」
リビングデット達アンデットと、レジーナ達魔獣の合同作戦が今まさに展開されようとしていた。




