新たな都市
戦勝祝賀会のどんちゃん騒ぎから数日が経ち、魔族・悪魔達は動きだす。
イベルタ皇国のあった領土を自分達の領域とするべく、ポリーウット城塞都市があった場所から都市開発に着手する。
イールガルに住む魔族の住民が増え、新たな都市が必要となっていたためだ。
そしてイリトバ城塞から、この都市に玄関口としての役割を移す目的もあった。
一からつくるよりも、城が破損しているものの、都市機能がわずかに残るこの場所に白羽の矢がたった。
現在、第三軍のイシュガルによって創造されたゴーレム達と、技術者達により急ピッチで修繕作業が進められている最中でもあった。
中央にある天幕からは、意見の応酬が聞こえていた。
「リーゼ様、作業は概ね順調ですが、問題がございます。山脈の結界が、この地まで延ばせないということです。防衛力の強化の面を考えてなにか別の方策を考えねばなりません」
「わっはっは、イシュガルよ物事はシンプルに考えるのだ。この地に俺の第二軍を置けば問題は万事解決ではないか」
「さらに知恵ある魔獣を召喚したり、大陸各地にいる魔族を引き入れればどうかしら?もちろん相応の手間はかかるけどどうだろう?準備が整うまでは、この私の第一軍団が手綱を握りましょう」
「ぬっ…!」
「なによ?」
仲が良かったり、悪かったりと対抗心剥き出しの二人を見ながらイシュガルはそっと溜息を漏らす。
「こらこら喧嘩しないの、戦力が充実するまでは定期的に、ロート山脈とこの新都市、周辺地域の警邏をそれぞれ順番にローテーションするのはどう?」
「それが妥当でしょうな」
「では、エンリエッサ達第一軍をこの新都市、バンネッタ達第二軍は占領した地域の警邏、イシュガル達第三軍は山脈の守護を命じる」
「「はっ仰せのままに」」
ふとイシュガルは二人を見ると、エンリエッサはバンネッタに特大のドヤ顔をかましている最中だった。
主の前ということで自重しているバンネッタだが、肩はわなわなと震えていまにも爆発しそうな雰囲気だった。
またいつもの、模擬戦という名の喧嘩が始まりそうだとさらに溜息を深めた。
そしてある疑問を口にした。
「ところでリーゼ様、この都市の名前はどういたしますか?」
「うん?決めてなかったわ。なにか名案はないかしらイシュガル?」
質問したら、全投げされた事態に内心で動揺を隠しつつ、思考にふける。
他の二人はというと、期待に満ちた瞳をこちらに向けていた。
考えることを早々に諦めたようだ。
やがて…
「リーゼガルト、ではどうでしょうか?リーゼ様によって平定された最初の都市ですし、リーゼ様の名を冠するのは当然でしょう」
「自分の名が付いてると気恥ずかしいな、まぁそれで頼むよ」
「はい、ではそのように致します!早速各作業の確認に向かいますが、リーゼ様もご一緒にどうですか?」
「間近で見てみたいしついていくよ」
残りの二人もしきりに頷きあい、素晴らしい名前だと絶賛していた。
こうして、山脈以外の新たな都市としてリーゼガルトは産声をあげた。




