閑話 イシュガルの考察
ロート山脈に定住するまでは、イシュガルは流浪の悪魔であった。
忠誠を誓った大悪魔様達は、天魔戦争のさいに敵である大天使達と相打ちとなり、多くの悪魔や眷属である魔族達もまた散り散りとなっていた。
目的を失ったイシュガルは、自身の見識を広めるためにため、あてもなく旅を続けていた。
やがて流浪の悪魔として名が広まり、何処か落ち着ける場所を探していた矢先に奇妙な噂を聞きつけた。
東の地、魔族の隠れ里で聞いた噂話によると、北の山脈に魔族達を庇護する二柱の悪魔がいるとう話であった。
大陸中から安住の地を求めて、噂を聞いた魔族達が少しずつ集まっているらしいとのことだった。
亡き大悪魔のアスモデウム様の意思を継ぐものか、または関係者かもしれないとイシュガルは推測した。
そして新しい悪魔ではなく、天魔戦争の地獄を生き延びた旧い悪魔であるという確信めいた自信があった。
興味にかられて、イシュガルも北の地を目指した。もしかしたら彼の地の悪魔達は、国創りをしているのかもしれないという関心から。
そしてイシュガルの予測はあたった。ロート山脈にいた悪魔達は、イシュガル同様に二つ名持ちの旧い悪魔であった。
「噂を聞きつけてこの地にきたイシュガルというものだ。このロート山脈を守護し、魔族達を庇護するその末席に私も加えてほしいのだがいかがだろう?」
「あら?貴方随分と物分りがいいじゃない。てっきりバンネッタと同様勝負しろとかいうのかと思ったわ。末席ではなく、私達と共に同士としてこの地にご招待したいけれどどう思うバンネッタ?」
「むっ…この時代を憂う同士は多ければ多いほど良いと考える。俺は、エンリエッサと同意見だ。それに各地を流浪していたなら大陸の情勢にも詳しいと考えるが、どうなんだイシュガル?」
「こうも話がとんとん拍子で進むとは思わなかった。これからよろしく頼む!バンネッタ私の見聞きした話によると、中央教会は近々軍を動かす。その目標は、このロート山脈という話だ。聖人の姿を確認したが、勇者の姿は確認できなかったな。まだ(見つかっていない)のかもしれないがね」
「それは有益な情報だわお手柄よイシュガル、では聖人と軍隊を分断する方策でも一緒に考えましょうか。考えなしに突っ込む誰かさんのために」
「なっ…なんだとそれは俺のことか!」
「大きな餌で釣るのが上策であるかな?その餌は、とびきり上等じゃないといけませんな」
「うんうん、なにか策を閃いたのね聞かせてほしいなイシュガル参謀!」
「大きな餌とは一体?」
「それはですね…」
出会った頃を思い出し、イシュガルは考える。まるで個性の違う三人の凸凹な関係にも関わらず、今日まで混乱なく山脈を守護できたのはまったく偶然ではないと考えていた。
普段戯けたような態度だが、物事の本質を探る事に長けたエンリエッサ。
無鉄砲な行動が多いが、その行動には必ず意味のあるバンネッタ。
そして、私の役割は…
「こらっ、イシュガル!軍議中に瞑想する癖やめなっていつも言ってるでしょ。反応がないと困るのよ」
「わっはっはっ、瞑想とかいいながら居眠りかい?まったく器用な奴だ」
「ふふ、すまないな。それでどの話であったかな?」
まだ探している最中であるなんていったらこの二人に笑われるかもしれないな。




