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化物達の理想郷  作者: 同田貫
次代へと繋ぐ
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化物達の理想郷

それから…


ヴァスティーユ共和国の経済圏は拡大の一途を辿っていくが、それにより、貧富の差が地域毎に広がりゆき、同じ経済圏同士での経済摩擦が表面化してゆく。

事態を重くみた指導者達は、共和国議会の設置を決める。


地域毎に選挙により選出された議員達が、各区毎にある問題点を提起し、議会に条例を提議する。

定員百数十名にのぼる議員数を抱え、任期は三年と定めた。


民達の信任を得て、選出された議員達のさらに上部議会として、元老院が存在し、七人の各国の指導者達が存在し、議会で提議された条例を審査し、可決するかを決める査問議会であった。


一度は経済摩擦は落ち着き、経済が潤滑に回りはじめたかにみえたが、査問議会である元老院自体が腐敗し、共和国議会と元老院の軋轢が深まり、提議された条例は一部の元老院により黙殺され、多数決での可決を悪用した元老院議員。


みかねた共和国首脳部は超法規的な機関を設置することを決めた。

天使伯ナナイ、悪魔公エンリエッサ、そして共和国成立後に合流した、星詠みの巫女の三人で構成された弾劾機関。


共和国議会に、元老院議員、首脳部でさえも断罪が許された特別な存在。


私欲にまみれた存在を粛清する処断公エンリエッサとも呼ばれた悪魔公は、とくに恐怖の対象となり、腐敗の元となる元老院は解体され、共和国議会議長には公正明大な星詠みの巫女が就任し、一つのシステムの完成をみることとなる。



「紆余曲折があったけれどもようやくね。どんなに頭を捻ろうとも、悪人は後から後から湧いてくる。なら、それ相応の罰が必要だと思うのよ私は…」


「エンリエッサ、君だけが嫌われ者にならなくても、その役割は私も分担しないといけない気がするわ。星詠みの巫女はどう考えますか?」


「エンリエッサ、貴方は充分に今まで苦労をしてきたのです。その業は、別の者を指名してもよいのではないか?」


毅然とした態度で宣言するエンリエッサに、ナナイは心配気に、星詠みの巫女は単純な質問を口にした。


「星詠みの巫女、今更そんな心配は杞憂です。私は業魔将のエンリエッサなんですよ、業を重ね過ぎる事に抵抗はありませんしね。それにリーゼ様が目指した理想郷の建設、約束を果たさないとなりません。この業は私が背負います」


きっぱりと自分の考えを述べるエンリエッサ、その返答を聞いた星詠みの巫女は、

これ以上の追及をやめた。


「そうですか悪魔公、貴方がその道に悩んだその時は、私が相談にのりますよ。サマエルも貴方のように情熱があれば、もしかしたら…。違った結果になっていたかもしれませんね」


弾劾機関としての三者は、月に一度の定例会議には必ず出席し、共和国議会を盛り立ていくことを誓う。


大陸が少しずつ復興する様子を見ながら、エンリエッサはどこまでも穏やかな笑顔を浮かべている。


「リーゼ様みておられますか?今の私達は、貴方様の理想に近づけているのでしょうか?今はただ、貴方様に無性に会いたい、ただただ会いたい。この願いはきっと色褪せないですよ…」


「エンリエッサ、我々を忘れてはなかろうな?我々三人で御使い様の業魔将なのだ、これまでも、これからも」


「辛気臭い、辛気臭いぞエンリエッサ!御使い様が心配なさる、そんな表情はよさんか!笑って福を呼び込むのだ」


「そうね、そうよね…」


業魔将の果てない闘いは、まだまだこれからも続いていく。

共和国の発展という闘いが…





オスロの地に佇む、元聖人。

人魔合同の慰霊碑の前で祈りを捧げる、アイズやボルドー、フランチェスカにヤクトバーグ、それにクモとの戦いの怪我により早逝した勇者マーク。


かけ替えなのない仲間を想い、両の手をあわせるネラフィム卿。


歳の頃は三十代の半ばにさしかかり、仲間であったソロ卿とリューティス卿が恋仲となり、結婚するまでに時間はかからなかったのは不思議なものであった。


「やぁ、皆元気にしてる?ヤクトバーグに勇者も久しぶり、最近はようやく落ち着いてきたから遊びに来たのよ。この大陸は一つの国となり、争いそのものが激減したのよ。それでも、不穏分子や危険分子達はごろごろいる。平和っていうのは遠いわねマーク。貴方が生きている間に、私も貴方に思いを伝えればよかったわ。こんな寂しい思いをするとはね、ヤクトバーグの笑った顔が見えそうね」


そこに見知った声が聞こえてくる。


「おーいネラフィ、ロノウェ見なかったか?あいつ活発で直ぐに飛び出していきやがるんだよ」


「あら大変、そそっかしいのは誰似なのかしらねリュー?父親よね?」


「やめてよネラフィ恥ずかしい…」

「おっ、おい否定しろよ…」


サマエルの戦乱からはや十年、戦いの記憶が少しずつ薄れる中、合同慰霊碑のまえで催される同窓会。

その催しは深夜にまで及び、辺りが暗くなり、戻ってきたロノウェが寝息をたてる中でもまだ続いていた。


彼らの戦いもまた終わらない。

真の平和を勝ち取るその日まで…





むかしむかし、あるところに、闇の神の化身たる御使い様が顕現なされ、その方は、大陸を滅ぼすのでもなく、支配するのでもなく、宿敵であるはずの人族との融和を目指しました。


もう一人の光の神の化身は、この大陸に住まう、全ての種族の現状に不満であり、滅ぼしてしまおうと考えました。

代わりとなる生命を自ら創造し、その大陸に新たな芽を芽吹かせるかのように。


やがて二人が巡る理想郷の闘いは、二人の消滅により、終息しました。


しかしその後も闇の神の御使いの意思は引き継がれ、大陸は一つの大きな、大きな国が出来ましたとさ。


めでたし、めでたし。



「ねえばあば、どうしてそのお話の闇の神様のお話に詳しいの?ばあばがしってる人だったりするの?」


「えぇ、私はあの方をよく知っているのよ。懐かしいわね、私はねあの御使い様の侍女として、よく御使い様の身代わりをしたものなのよ」


「身代わり?」

「そう身代わりよ、あの方はよくあちこち出掛けては、私が身代わりをして、いろんな人に怒られたのよ」


「やんちゃなひとだったの?」


「そう、まさしくやんちゃね。けどあの方がいなければこの共和国は生まれず、いまだに争いが絶えない大陸だったかもしれないのよ」


「じゃあどうしてばあばは、いつもイールガルのあのお部屋を掃除してるの?ねぇどうしてばあば?」


「あの執務室は、私とあの方の思い出の場所なのよ。それにね、掃除して綺麗にしていれば、あの方がまたふらっと戻ってきてくれるかもしれない。私はまだ、あの方がいなくなった事実を受け入れられないだけかもしれないね」


「ふーん、へんなばあば」

「そうね、変かもね…」


時代が移り変わっても、リーゼの思いは脈々と受け継がれ、時代へと継承されてゆくこととなる。


ヴァスティーユ共和国…


そこは化物達の理想郷…

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