白の化物、黒の化物(5)
エンリエッサ率いる部隊がイシュガル達と続々と合流し、入れ替わるように天秤部隊と星屑部隊達と対峙する。
緊張と疲労がピークに達していた、イシュガル麾下の第三軍は、陣の内側に下がり息を整えている。
イシュガルとエンリエッサは、戦乙女達と戦いながらに、お互いに戦況報告をし、情報を共有してゆく。
「イシュガル状況は?」
「ご覧の通りだよエンリエッサ、クロスフィアが率いていた部隊と泥試合だ。連中、クロスフィアが倒れた事で、我らを打倒するのに躍起となっているのだ。進退窮しているところだな、バンネッタ達はどうしたのだ?」
戦乙女の攻撃を躱し、反撃ざまにエンリエッサに質問するイシュガル。
器用なもんだと感心しながらに、イシュガルの問いに答える。
「あいつはいない、熾天使のシルベスタとの闘争にご執心だよまったく。あの戦馬鹿、リーゼ様の身を案じながら、自分の欲求を優先させたのよイシュガル。あいつにつける薬がいるわね」
「とびっきりな劇薬がな、でないとあいつには効果がなさそうだがな。それとリーゼ様の方も一進一退の様子、物見からの報告では、サマエルもまたリーゼ様と同じような力を扱うそうだな」
「言うわね〜イシュガル!貴方のそういうお茶目なところ素敵だと思うわ。ただ真面目な話、サマエルとリーゼ様の戦闘辺りに影響がでているわね。戦場一帯をすっぽりと結界で覆う?」
調子外れな事を述べたかと思うと、急に核心をつくような事を述べたりと、エンリエッサも忙しいなと思いつつ、口にはださないイシュガル。
「そうだな、この辺り一帯が焼け野原になる前に行動すべきだろう。避難している人魔の民にも影響がでるかもしれんしな、範囲からでようとする流れ弾の威力を削ぐ術式を構築せねばな…」
「うん、ではそうしようか。全てはリーゼ様の理想の為に」
唄でも謳うかのように朗々と、韻を踏むかの様に、術式を連続して詠唱して重ねて発現させてゆくエンリエッサ。
その術式の隙間を埋めるかの様に、イシュガルも術式を構築してゆく。
ものの数分で、オスロの地を覆う巨大な結界が出現し、幽玄な光景を醸し出しているかのようだった。
リーゼとサマエル
御使いと大天使
焔を操りし能力と光を束ねし能力
表と裏、光と闇、相反する性質のように反目しあう両者。
地上戦だけでなく、空中戦を織り交ぜながらに、近距離や中距離、遠距離、あらゆる方向に光と焔が乱舞し、眩い光景を演出しているようであった。
「いい加減しつこい、のよ…」
「それは君さ、リーゼ…」
息を吐きながらに、肩で息をする二人。
リーゼの背中にある紋様のような刺青は、いまや身体全身にまわり、刺すような痛みを与えており、能力の使用を抑制させるかのようであった。
サマエルもまた、身体全体が青白く発光し、四枚の天使の羽根からは、光を溜め込みすぎて熱をもち、うっすらと煙を吐き出しているようだった。
二人はすでに肉体が限界を超え、能力を酷使して使用しており、いつ身体に影響がでてもおかしくなかった。
それでもなお、彼らを動かすのは、執念であり意地であった。
【主よ、神敵を討ち滅ぼす力を我が身に集め給え。我が身は、主人のためにあり、我が身は常世全ての光とならん。主の敵は我が敵、我が敵は眼前にいる御使いリーゼ…。極光よ集え!】
【我が父闇の神よ、我が身はもはやどうなろうと構いません。いま災厄の化身となりつつあるサマエルを討ち滅ぼすだけの力を、この身に集め給え。灰燼となす焔よ、我が身を纏え!】
サマエルは、自身の身体から青白い光を発光させながらに、リーゼに迫る。
リーゼもまた、自分自身を種火にするかのように、どす黒い焔を身体から立ちのぼらせ、サマエルに接近する。




