白の化物、黒の化物(4)
オスロ要塞線の全ての城壁は崩れ、城壁の高さをいかした地の利は意味を成さず、人魔の連合軍は、相対する天使の軍勢と野戦にて決戦を行っていた。
戦乙女に率いられし星屑部隊と、天秤部隊達が生き残りの人魔の兵士達に殺到し、駆除してゆく。
対する人魔の兵士達も、自分達の存在を誇示するかのように、雄々しく戦い、互角以上の戦いをみせる。
バンネッタ達とシルベスタ達の闘争は、未だに決着がつかず、旧友と再会したかのように、思い出に浸るかのように戦いを満喫しているかのようだった。
振り降ろす剣尖には一切の容赦もなく、大地を砕いていたが、その圧倒的な暴力を放つバンネッタに対し、力で強引に均衡を保つシルベスタ。
「シルベスタよ、まだ膂力を上げたか?天魔の頃より変わらんな、筋肉達磨め。しかしこれでは埒が開かんな」
「なら投降して自らの首を差し出せ、それで終いだバンネッタ!お前との闘争は実に興味深いが、サマエル様の御身が心配だ!先程の地響き、お前達の指導者たる御使いも、なかなかにやるようだ」
生真面目なシルベスタの答えに、バンネッタは吐き捨てように反論する。
自身の自論を展開する。
「はん、笑い話にもならんぞシルベスタ!自らの主人の勝利を信じずして、どうしてこの闘争の決着がつくと思ったのだ!こちらに集中しろ」
「ぶははっ、こりゃあいいバンネッタ!お前からそんな事が聞けるとはな、いや失礼したな。私達の闘争に幕を引く、それが重要であったな」
「構えろシルベスタ!」
「いつでもくればいいバンネッタ!」
再び果てなき闘争へと戻る二人。
決着をつけると言いながら、力比べでもすかのような雰囲気があった。
シルベスタの副官を務める銀髪の戦乙女と、それに対峙するティナ。
銀髪の戦乙女は息を乱さず、淡々とティナを攻めたてるのに対し、ティナは息も絶え絶えになり、装備も破損しまさに必死の形相であるが、決して膝を折らずに武器を構え闘志を燃やす。
「貴方のその闘争心に忠誠心、見事ですね。ただ、勝敗は決しました。敗北を認めるのならば、主に懺悔する機会をとどめを刺す前に設けると、主に誓って約束いたしましょう」
「銀髪、舐めるなよ!私はバンネッタ様の先駆けであり続けなければならない、お前に一太刀浴びせ、一矢報いなければならないの!だから、だからっ!敵わなくても、お前達を…」
「そう、貴方は気高いのね…。ならば私も君を武人として扱おう」
「あっ…う、バンネッタ様…」
目が開かない、辺りが暗い。
ルルドやヲイスが繋いでくれた命、私は約束を破ってしまったな。
あいつらに会ったら謝らないと…
許してくれるかな?
けど死ぬのって、想像してた以上に怖いのね、あぁ、死にたくないな…。
戦乙女に対し啖呵を切り、果敢にも一騎討ちを挑んだティナ。
その胸には深々と剣が刺され、引き抜くと同時にティナの身体は崩れ落ちる。
同時に戦乙女が近づいた刹那、戦乙女の脇腹にナイフを投擲し、傷をつけることに成功していた。
「良き戦士でした…。この傷は、そのままにしておきます。貴方の手柄なのですから、誇っていいのですよ。気高き獣人の戦士長よ、眠りなさい…」
辺りに咲く一輪の花をティナの側に置き、ティナのうっすらと涙が溢れた目を拭い、身体の汚れを拭く戦乙女。
最期まで戦士たらんとする彼女の姿勢に、同じく戦いを生業とする銀髪の戦乙女を感化させた。
そして星屑部隊に、遺体を丁寧に埋葬するようにと言付けると、彼女は再び戦場へと舞い戻る。
混沌の戦場へ…




