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化物達の理想郷  作者: 同田貫
次代へと繋ぐ
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白の化物、黒の化物(1)

サマエルは一人歩む…


力が満ちたことで、聖女イズマイルの身の内から脱けだし、イズマイルの身は数人の戦乙女に守護させながらに、少年の姿のサマエルは歩く。


付き従う者達は、彼の親衛隊である戦乙女達と、天秤部隊と星屑部隊の指揮を担当するサソリとヘビ。

サソリは後方より迫り来る部隊の迎撃、ヘビは前方より突貫するリーゼ達と全面衝突していた。



彼は思う…。

例え付き従う者達がいなくなり、孤独になろうとも、自身の目的の為なら犠牲を厭わない覚悟が必要だと。

しかしあの者達の出現が、周到に用意した彼の計画を狂わせた。


帝国の掌握も、その衛星国家群の攻略も、ひいては大陸の統一も、魔族の指導者たるリーゼが障害となる。

思えば彼女が、魔族達の拠点たる北方にて顕現し、地盤固めをして勢力を拡大させながらに、対抗勢力を組織する。


その事こそが、今回起こった事象への布石であった可能性もある。


「だからなんだと言うんだ…、忌々しいリーゼめ。魔族と人族の融和だと?何百年、何千年といがみ合う関係がそう易々と覆るものかっ!僕も努力はした、けど些細な事で関係がこじれ、また元の木阿弥に戻る、もう疲れたんだよ…。種の限界というのを感じてね。真っ新に、全てを絶やし、零から創生する。そうしなければならない、救われない」


「サマエル様?いかがされましたか、気分が優れませんか?」


「なにか飲み物でもお持ちしますか?」

「歌を唄いましょうか?」


サマエルの様子を見た戦乙女達が、しきりにサマエルを介抱しようと、各々が世話をやくが、それを面倒そうに手で払うサマエル。


「大事ない、ありがとう。君達の働きには応えないとね、それと聖女を遠くへ避難させてくれ。今までその身を借りていた宿主だ、彼女の存在は保存しておきたいんだよ…」


「はい、お任せ下さい」


「ん、さて手早く片付けたいものだが、敵はどうでる?僕に何を見せてくれる?退屈過ぎるのもつまらないよ…」

「おいで、リーゼ」


戦乙女に指示を出し、隊列を整えさせ、その刻を待つサマエル。


前方では激しく燃える焔により、大地が轟々と煙を吐きだし、生物が燃える匂いが辺りをみたしていた。





リーゼ達の勢いは止まらない。


殴り込み部隊の進撃は、ヘビ率いる天秤部隊を圧倒していた。

異形の形をした兵士を屠り、陣形を乱しに乱し、その乱れた部分を後続のジョン国王とレイノルズ卿が、ことごとく粉砕してゆく。


即席であるはずの部隊の筈なのに、彼らの連携は熟練者の領域であり、リーゼの意を汲んだかのように、部隊は生き物のように戦場を支配する。


「止めよ!この先はサマエル様のおわす本陣ぞ!失態は我々の働きですすがねばならない、敵を止めよ!」


「わかっているが止まらんのだ!」

「御使いだ!奴に攻撃を集めろ!」

「あいつを仕留めれば終わりだ!」


リーゼ達の勢いを止めようと、リーゼ自身に攻撃が集中するが、それはかえって好都合であった。

天秤部隊の注意が逸れた殴り込み部隊が、自由に動き回れるからだ。


自分達よりも、遥かに劣ると考えていた人魔の兵士達により、次々に鏖殺されていく天秤部隊の兵士達。


「鬱陶しいな、本当に!サマエルの創った兵士は、纏めて焼却よ!」


隊列が群れをなしているのを、端から順に焼き払い、火葬していくリーゼ。

火遊びをする少女のように、その姿はどこか蠱惑的であった。


「ヘビさん…このままでは」

「隊長、私達はどうすれば…」


「待て!退くな、戦え!」

百戦錬磨であるはずの天秤部隊達が及び腰になり、ジリジリと後退する。

リーゼの圧倒的な武力を前に…。


「レイノルズ卿!前方敵指揮団を視認!包囲いたしますか?」


「こたらも確認した!奴らに我らを侮った報いを受けさせる!敵は逃すな、ここで禍根を絶やすのだ!ジョン国王、よろしいか?」


「あぁ、リーゼ殿の戦いの邪魔はさせんよ、彼奴らは地獄行きよ。弓兵、敵に矢弾を馳走してやれ」

「放てっ!」


ヘビ達のいる指揮所周辺に、矢弾が殺到し、討ち取られていく彼の部下達。

しかしヘビだけは、外骨格の硬さにより難を逃れたが、その運は長続きはしなかったようであった。


上空より飛来せし、白い焔により狙い撃ちにされ、その硬い外骨格ごと骨ごと丸焼きにされるヘビ。

ヘビのいた場所には、黒いシミのような煤が少し残るのみであった。



その直後である。

健全であったはずの第4城壁が眩い光に包まれ、音も無く消失した。


第4城壁に残って守備を担当していた人魔の兵士達や、程度の軽い怪我をした者達、避難をしていた付近の住民達、その全てを飲み込んだ途方もなく大きな光。


リーゼの前にサマエルが姿を現し、凄惨な表情を浮かべている。



それが怒りなのか、哀しみなのか…

誰にもわからぬまま。

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