熾天使として
クロスフィアとナナイの死闘が続く。
その周囲では、クロスフィアの部隊である戦乙女と天秤部隊達がひしめき合い、第三軍のイシュガルと聖人が共闘して対処している最中であった。
前衛をイシュガルとソロ、リューティスが出張り、脇を固めるのがプリメールとプリメーアであった。
高過ぎる戦乙女の戦闘能力に、現状対抗できるのはこの五人であり、それ以外の兵士達で対処すると、悪戯に死傷者ばかりを増やすと判断したためであった。
そのため他の人魔の兵士達は、防衛線の内側の陣地から天秤部隊を相手どり、激しい射撃の雨により、敵を寄せ付けない働きを見せている。
それを遠巻きに見つめながら、戦乙女と相対するイシュガル。
他の聖人達も、呼吸を整えながらも、どうにか己の責務を果たしていた。
「どうした聖人、息が上がっているぞ?お前達の光の神への忠誠心とやらは、この程度のものか?」
「山羊頭野郎が、舐めるなよ!俺達は、勇者であるマークと共に旅をしてきたんだ!この程度なんでもない!」
「ソロの言う通りよ業魔将イシュガル!私達の力、見縊らないでくれる?」
イシュガルの問いを聞くや否や、すぐさま反論する聖人達。
その姿勢に頷きつつも、イシュガルは指示を出してゆく。
「元気な事だ!その調子で頼むよお二人さん、プリメールとプリメーアは、サマエルに追従した天秤部隊を追え!こちらは我々が保たせる!」
「了解、…頑張る」
「ウナ、ナナナー!」
クロスフィアの部隊と、互角以上に渡り合うイシュガル達。
彼等は、御使いであるリーゼへの忠義に燃えていた。
ナナイとクロスフィア
彼等には、さしたる重要な特殊能力は備わってはいない。
それはシルベスタも同様であり、彼等は単純に武力のみが突出した存在。
熾天使である。
その武力によって世界の調和を担い、法と秩序の番人たらんとする者達であったが、今はその番人同士が、互いに相争うという矛盾した状況。
「ナナイ、君も意固地だねぇ。自分の欲求に素直になりなよ、何故敵対する?何故叛意を持つ?それに勇者が大事だったなら放し飼いにすべきじゃなかったのさ。首に首輪をつけてでも縛りつけておけば、万事解決だったよ」
「そうかもしれない、だが勇者の意思を捻じ曲げ、無理矢理に縛りつけるのはどこか違うんだ!人は、いや人々は、自らの意思で明日へと歩きだしているんだから!その邪魔はさせない」
「ナナイらしい答えだ」
「そりゃあどうも、クロスフィア」
互いの信念と信条が、互いの主義主張、その全てが真逆の二人。
そして決着の刻を迎える。




