穢れた天使と清廉な天使
シルベスタ達の軍勢と、バンネッタ達の軍勢が正面衝突を起こし、武勇を見せつけあうように戦う両者。
好戦的な者達が多い両部隊で、それは必然であり、当然の帰結であった。
その脇をすり抜けるように行軍を続ける一団、本来の目的である御使い様との合流を目指し、目的を置き去りにしたバンネッタを放置する事に決めたエンリエッサは、炙れた者達を吸収しながらに、一路第4城壁へと急ぐ。
「敵に構い過ぎるな!通過点として捌き、対応するべき者達と区別せよ!リーゼ様との合流が最優先である!敵大将サマエル討滅の手助けをする、全速前進で事にあたれ!確実に実行せよ!」
「「了解いたしました!」」
【幽鬼め、また自分の興味本意のことばかりにうつつをぬかしおって、抜群の戦闘能力も、これでは形無しではないか!御使い様に万が一があれば、屋台骨が崩れるのは我々も一緒だというのに!探求よ持ち堪えていろよ!】
同僚であるバンネッタに毒づきながらも、もう一人の同僚であるイシュガルを気遣うエンリエッサ。
彼女は、天使側の阻止部隊を引き受けたバンネッタ達もまた心配であった。
それでもと気持ちを振るい立たせ、死霊術にて骸骨兵を量産しつつ、目的の場所へと迫りゆくエンリエッサ。
薄紫色の魔方陣からは、多種多様な骸骨兵が姿を現してゆく。
兵卒の骸骨兵に騎馬兵、悪魔の羽根たる蝙蝠の羽根をはやした者、さらには大盾に全身鎧を着込む者などなど。
「御使い様、どうかご無事で!今エンリエッサがそちらにいきます!」
逸る気持ちを抑えに抑え、エンリエッサ達の疾走は速さを増してゆく。
第3城壁と第4城壁のちょうど中間。
そこではナナイとクロスフィアが一騎討ちの真っ最中であり、他の天秤部隊に戦乙女達を、第三軍団が総出で相手をし、聖人達もカバーをしていた。
ナナイが純白の剣と盾を装備しているのに対し、クロスフィアは死神の持つような白い大鎌を手にしていた。
規則正しい攻めのナナイに対し、クロスフィアは変幻自在な動きを見せつけ、ナナイを嘲笑うかのような動きだった。
「はい右ー、はい左ー!ナナイしっかり避けないと、重傷ではすまない怪我をすることになるよ!」
「舐めないでくれるかしらクロスフィア?私にも意地があるし、矜持があるのよ!そんなちゃちな大鎌、私が粉々に砕いてやるんだから!」
「親切で言ったのになナナイ、そういう態度がますます唆るな!屈服させ、服従させたらさぞ愉快に違いない!あぁ楽しみだ、楽しみが増えたよ!」
「…下衆め、楽には殺さん!」
どこまでも有頂天なクロスフィアと、凍えるような視線を向けるナナイ。
それに気づいたクロスフィアが、さらにニタニタと嗤う。
「この大陸のある世界はね、僕の玩具箱なのさ!新しい玩具がどんどん増え、どんどん壊しても、次から次に新しくなる。掃いて捨てる埃の様に、まるで無尽蔵であるかのようにね。それが愉快で愉快でたまらない訳さ。次はどう壊そうか?次はどんな人体実験をしようか?興味が尽きないのさ!」
「救えないなクロスフィア!光の神への冒涜では飽きたらず、背信行為に、忌避したくなる所業の数々。お前には罰が必要だ、とびきりの罰がな!」
「罰か、罰ね…。どんなものか想像できないな、自分さえも実験の対象にできるかも?久方ぶりの恐怖や痛みが、体験できるな…くくくく」
「もはや語るに値しない!」
純白の大鎌と剣が交錯し、火花を散らしながらに隙を窺う両者。
熾天使同士の決戦が続く。




