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化物達の理想郷  作者: 同田貫
次代へと繋ぐ
160/171

闘争劇

人魔の連合軍の残敵掃討の任を受けたシルベスタ、いまなお第1と第2城壁にはかなりの数の兵力が残っており、捨て置くことはできないとサマエルからの直々の指令を受けた。


戦乙女の親衛隊をサマエルから借り受けたシルベスタは、低空を高速移動しながら、戦乙女達と共に、前進を続ける敵を屠り続けてゆく天使達。

敵の真っ直ぐ過ぎる前進、それは天魔戦争の時より知る仇敵の雰囲気そのものであり、シルベスタは警戒強めてゆく。



「用兵も戦術も、戦略もなく、己が命が尽きるまでただただ突撃する。単純ゆえに侮りがたい、そんな相手は俺は一人しか知らないな。やはりお前か、お前であるはずだ…バンネッタ!」


「バンネッタ?あの天魔戦争の悪童ですかシルベスタ様?エンリエッサとイシュガルと同列であるという悪魔、ここで雌雄を決したいところですね」


「幽鬼のバンネッタ!」


「相手にとって不足なし!私達戦乙女の手で討ち取り、美談としてくれる!」


好戦的な戦乙女達は、敵の名前を聞くと、満面の笑みを浮かべながら、すぐにでも飛び出しそうである。


「待て!」

「待つのだ、戦乙女達よ!敵を過小評価するな、足下をすくわれてからでは遅いのだ!後続を待ってからだ!」


「しかしシルベスタ様、敵は寡兵なれば、我々の武力で粉砕できるはずです!」


「そうですよ、何故躊躇うのです?」


瞳を閉じながらに、口々に言い募る戦乙女達の意見がだしきったのを見計らい、声高にシルベスタは一喝する。


「くどい、もう決めたのだ!」


それはシルベスタも同じ思いであったが、後続の味方である、天秤部隊を待ってから仕掛けることにした。

単騎で先行し過ぎており、勢いだけでは勝てない相手であったからだ。



百名単位で天秤部隊を纏める戦乙女達、その先頭にはシルベスタが仁王立ちし、バンネッタ達の進撃に合わせるように出撃する手筈であった。


やがて地響きとともに、土煙を上げながら、こちらに挑みかかる人魔の軍勢を率いるバンネッタ達を捕捉すると、一網打尽とすべく猛然と襲いかかってゆく。



「おいでなすったか!天魔の悪童め、今度こそ成敗する!各隊、敵の前衛を潰し数を減らした後、包囲殲滅に移る!では参るぞ諸君!」

「「「ははっ!仰せのままに!」」」



互いの軍勢が、勢いそのままに交錯し、交錯する刹那に数十人が落馬し、手傷を負いながらに戦死してゆく。


シルベスタは、白銀の大剣を抜くと同時に振り抜き、辺り一帯の魔族の第二軍を吹き飛ばしてゆく。


「まだこんなものじゃないだろバンネッタ?まだだ、まだまだだ!足掻いてみせろ、みっともなくな!」

「俺を満足させてみろ!」


シルベスタの白銀の大剣が震え、大気さえもが震えているようだった…。





それはバンネッタ達の側からも確認しており、バンネッタも自らの愛剣を引き抜くと、黒い大剣を手近の天秤部隊に振り下ろしながらに、粉砕してゆく。


単純な魔力などを介さない、純粋な暴力が、異形と化している天秤部隊を薙ぎはらってゆき、相手の屍を増やしてゆく。


「わっはっはっは!どうした?どうしたんだ天使達の狗め、鍛え方が足りんぞ!俺を止めてみせろよ、このバンネッタを!数ばかりは立派なようだがな!」


「進め進めーっ!バンネッタ様をお一人にするな、我々も共に天使狩りに参加するぞ!弓兵狙え、敵を落として地に引き摺り下ろすのだ!陸地にてケリをつけよ!」


「羽根だ!羽根を狙え!」

「落ちろ!クソがっ」


やられてはやり返す人魔と天使達、彼らの闘争はより激化し、白兵戦がそこかしこで展開し、血みどろであった。



やがてバンネッタと対峙するシルベスタ、お互いに懐かしむように顔を見つめ合い、まるで旧友に再会するかの如く、昔を思い出す雰囲気を醸し出す両者。



「よー、まだ生きてたか。骨董品を着込んだ悪魔よ、腕は錆ついてはいないだろうな?前回の御使いとの戦い以来か、では積もる話はあるがそろそろ参るぞ悪魔よ!」


「はん、ぬかせ筋肉達磨が!頭まで筋肉でできてるような発言だな、お前との喧嘩はどこか心が踊るのだ!手加減はできないぞ天使よ、くたばる準備をするんだな!」


「くっくっく、幽鬼め言いよる!」

「なます切りにしてやるよ天使っ!」


憎み合いながらも、互いに互いを認め合う二人は、これまでも幾度となく戦い、決着はつかずじまいであった。


裂帛の気合いの入った斬撃が、両断する勢いで放たれてゆく。

得物が大きいはずなのに、振り抜く速度が尋常ではない、それどころかより力の入った剣尖が乱れ飛び、平地を耕してゆく。



「貴方がバンネッタの副官かしら?」


「だったらどうするの、天使の小間使いさん?殺される前に殺してやるよ!」


「まるでケダモノね、獣風情が…」

「羽根虫野郎が、えらそうに!」



銀髪の髪を短く切り揃えた隊長格の戦乙女と、ティナの視線が剣吞となってゆく。


「とりあえず遺言はあるかしら?墓碑にはなんて刻めばいいのかな?獣ちゃん。死後の世界への手向けとしてあげる」


「くたばれ糞野郎!で結構よ、私は生き抜くから!バンネッタ様の側で!」



譲れぬ思いを秘め、死闘が幕をあげる。

観客のいない死の舞踏の幕が…

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