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化物達の理想郷  作者: 同田貫
次代へと繋ぐ
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各戦域模様

御使いリーゼが出撃した。


その知らせは人魔の連合軍の中で広まりゆき、各々が第4城壁を目指し、合流を目指して奔走してゆくこととなる。


第1城壁の守備を担当していた業魔将バンネッタ率いる第二軍団と、ギュンター老は部隊を再編し、リーゼの元へ馳せ参じるために疾走している。


騎兵も歩兵も、工兵や衛生兵、弓兵や伝令達も一緒になりながら、バンネッタに付き従う行軍であった。

いまだに戦場全域を闊歩する、星屑部隊や天秤部隊達を跳ね除けながらに、強行軍を続けるバンネッタ達。


途中少なくない数の兵士達が落伍するも、なおも歩みを止めない。


「わっはっはっは!いるわ、いるわ敵の群れが!その敵を掻き分け、包囲の一角を崩しながらに進む!この戦場はまさに、最高潮の盛り上がりだ!ティナもそう思うだろう?」


「えぇ、まったくですバンネッタ様!獣人にとって戦場こそが華でございます!前列部隊、交代せよ!第3列と交代しつつ息を整えるのだ!敵を寄せるな、速度こそが我々の強みだ!勇猛果敢に、気高く、一挙にゆくぞ!」

「「「第二軍、前進せよ!!」」」


バンネッタとティナの気性の荒々しさは、そのまま第二軍団を象徴しているかのようだった。


「ちと待て、あまり揺らすでない!腰に響いてかなわんのだ!もう少しゆっくりと儂はいっておるのだ…!」


ギュンター老のつぶやきさえも、辺りの喧騒に搔き消え、機嫌を悪くする。

しかし、その雰囲気に喜色を浮かべながら、腰をおさえていた。




一方の第2城壁とその周辺地帯では、殉死隊との空戦で損耗したレジーナ空中部隊と、第一軍団を率いる業魔将エンリエッサが傷ついた者達を治癒していた。


怪我の程度の軽い者達は、続々と戦線に復帰してゆき、第1城壁方面からくるバンネッタ達の援護にまわす指示をだすエンリエッサ。


しかし怪我の程度の重い、レジーナやヌメイ、その他の隊員達は、悔しそうにしながらに、指揮を執るミミイとメメイを見送っている最中であった。


「では行って参ります隊長にエンリエッサ様!他の隊員達を頼みます、ヌメイも養生しててね」

「参ります〜!じゃねヌメイ!」


「あぁ気をつけてな、頼むぞ?」

「互いに連携すること、それに相手を見縊らないこと、あとは自分達の命を大事にすること!」


「くそー、メメイのやつ!」


見送る言葉は三者三様だが、彼女達を心配する気持ちに変わりはなかった。

短い挨拶を終えると、編隊を組みながらに空へと舞い上がる空中部隊。


「あーあ、いっちゃったよ…」

「まぁまぁごねない、ごねないヌメイ。それからすいませんエンリ姉様、貰った服が破けてしまって、頂いた服をだめにしてしまいました…」


俯きながらに、エンリエッサに対して上目遣いをするレジーナ。

大きな図体の割にしおらしいレジーナ、それが可笑しくも、愛おしいのが彼女の魅力なんだと、くしゃくしゃと頭を撫でまわしてあげるエンリエッサ。


「心配はいらないよ、レジーナが無事でよかったよ。服は今度また新しく作ってあげるから、そんな顔しないの!」


「ほんとですかエンリ姉様?」

「本当よ!甘えん坊なんだから…」


ヌメイや他の隊員達がいる中で、二人は抱き合いながらに、二人の世界を形成している。


恋人みたいだなぁと、ヌメイはぼんやりとしながらに考える。

普段優しい隊長の、めろめろになっている姿に、エンリエッサに少しだけ嫉妬心を覚えるヌメイ。


「やーそこのグリフォン君!私と一緒に暖め合わないかい?」

「キィ…」


なんなとなく言った言葉だが、グリフォンにそっぽをむかれ、心に予想以上のダメージを負ったヌメイ。


「なかなか難しいかぁ…」


遠い目をするヌメイがそこにはいた。




第2城壁の守備を固めていたマト達も、バンネッタ達の一団と合流するため、動ける者は根刮ぎ動員し、第2城壁からうってでる最中であった。


「魔術兵長!敵はこちらを分断するのが目的だ!速やかに御使い様とイシュガル様のおられる戦域を目指す、広域術式を霧散させ、部分術式に切り替えろ!」



きびきびと几帳面な指示をだすマト、それを慣れた様子で応じる兵長。

「へいマトさん!仰せのままに、けどいいんですかマトさん?エンリエッサ様にお会いしなくて?」


「今回はレジーナに譲るさ、彼女達の牽制があったからこそ、我々が戦況を有利に動かせたのは事実だ!」

「けどマトさん、レジーナが今エンリエッサ様と固い抱擁をしてますぜ?」



魔術兵団の一人の部下の言葉に瞬時に凍りつくマト。

瞬時に武人の顔から、乙女の顔となるマトの姿に、ほっこり顔の部下達。


エンリエッサをマトが恋慕している事は、彼らも周知の事実であった。

本人は隠しているつもりだったが…


「…なっ、なな、今なんと言った!」

「いやですから、抱擁してますと」


遠眼鏡を覗き込む部下が意地悪言いながら、さらに追い討ちをかける。


「もしかしたら抱擁しながらに、接吻しているかもしれないな、ここからの角度ではわからないなぁ」


「せっ、せせ、接吻だと!」

「おのれレジーナめ、エンリエッサ様の優しさに漬け込みおって!私のほうが、エンリエッサ様の寵愛をだな!永年にわたり付き従い、私の純潔をエンリエッサ様に、その、なんだ、うん!」


「バンネッタ様達の合流を急ぐぞ!」

「「「はっ!直ちに!!」」」


逃げた。


多分言ってて自分で恥ずかしくなったんだろうな、と純な感じのマトを見れた部下達は、暫くは行軍しながら、ニヤニヤ顔が抜けなかったという。

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