戦乙女
第2城壁を素通りし、第3城壁攻略を開始するサマエル達。
シルベスタにクロスフィア、さらにサソリとヘビが付き従い、主人の望みを叶える為に奔走してゆく。
周囲に飛び交うのは、瞳を閉じた美麗な戦乙女達と、クロスフィアが創りし醜悪な天秤部隊が隊列を敷きながら、銃火の中を縫うように飛翔する。
戦乙女達はサマエルの親衛隊であり、数こそ少ないものの、戦闘力に関しては一般の天使達を凌駕していた。
銃火に怯まず、怪我や損傷に対しても無頓着でありながら、傷口は驚異的な速さで塞がる神話の兵士達。
「城壁を突き崩す、サマエル様の理想実現の障害は、我ら戦乙女が先駆けとなり討ち払わん!その身を捧げて浄化せよ、矮小な種族達よ!我々こそが規律であり、法であり、秩序である!」
「抜刀せよ!目標、敵本丸に篭りし御使いリーゼ、及び追従者達に離反者達である!私に続け!」
「「「戦場こさ、我らが庭!」」」
戦乙女達が小隊単位で次々に城壁に取り付き、人魔の兵士達を無力化してゆく。
その速すぎる流麗な太刀筋は、音も無く兵士達に迫り、気づいた時には赤い花を咲かせる骸と成り果てていた。
第3城壁の一区画は完全に破壊され、戦乙女達は城壁内部へと浸透する。
その崩れた道を悠々と通るサマエル達。
「コルトにクモ、ノルンまでもが道半ばにして天へと召された。永い永い付き合いだがら、私は感傷的になるな。だが君達の忠心は、このサマエルが引き継いだ。あぁシルベスタにクロスフィア、一働きしてもらうよ?」
「もちろんですサマエル様!」
「はっ、なんなりと我が主よ!」
「さぁ、彼女はどうでるかな?顕現した時に早々に抹殺すれば、ここまで面倒にはならなかった。それにナナイ、あの子も困ったもんだ。悪戯娘には、きついお仕置きが必要だね。どうしてやろう」
盤上の駒は全て出し、あとは相手の出方次第、消耗戦か持久戦か?不意の一撃にも要注意だ。
それに、あの業魔将共とリーゼ。
手駒に出来ないのなら、そんなモノ達はいらない、廃棄する。
勇者達同様、人も魔族も、場合によっては部下であったナナイも…。
損得勘定のみがサマエルを支配し、歪んだ思考を隠そうともしない。
サマエルは本丸の第4城壁を目指す。
第3城壁が瞬く間に抜かれた。
人魔の兵士達の怒号が響き、必死の抵抗が無為にされてゆく。
第3城壁陥落は時間の問題だった。
収容されていた負傷者達を、より後方に移送するため、ナナイ達が奮戦する。
今から第2城壁の周辺に展開する部隊が引き返そうにも、間に合わない。
その逆に、第4城壁からでも距離があるために期待は薄い。
現状の戦力で、どうにかするしかない。
「貴方達も貧乏くじですね、私と一緒に苦行の旅路の供をしないといけないなんて。まぁ強制したのは私です、恨みたければ恨んでくれていいわ!」
「なにを今更、ナナイ様!」
「私は勇者にこれまで散々助けられてきたんです!今回は私の番です!」
「そう、ありがとう。ソロにリューティス、いい自慢話ぬなりそうね。それに貴方達もお手伝いしてくれるのでしょう業魔将の方?」
ナナイが背後を振り向くと、そこには業魔将軍のイシュガルを筆頭に、ムストにゴーレム部隊、さらに第3城壁までついてきたプリメール達もいた。
「くえないお人だ、最初から我々も勘定に入っていただろうに。まぁ御期待には応えるとしよう、第三軍配置につけ!敵は神話の兵士達だ、勝って孫の代までの語り草とせよ!」
「「「おっーっっ!!」」」
イシュガルの声が響き渡り、辺りに反響してゆく。
その大音量の声は、不思議と味方を勇気づけ、士気を底上げする力となる。
「イシュガルさんもくえない人よ、この配置、兵力分散に、防衛線の再構築なんてすぐにはできないわ。私達をあてにしていたのは、貴方じゃない?」
「はて、なんの事だろうか?」
「まったく、策士ね貴方は!」
主戦場は第3城壁となりつつあり、正念場を迎えつつある。




