オスロ上空にて
エンリエッサはオスロ上空へと高度を上げながらに、紫電を身体に纏わせながらに突進してゆく。
レジーナ達が討ち漏らした殉死隊の天使達を巻き込みながらに。
大気には電流が走り、不穏な音を響かせながらにレジーナ達へと迫る。
「一人で来るとは…」
「なにも出来やしない、死体が増えるだけとしれ。我々の贄となれ!」
「囲んで堕とすのだ!」
周囲の殉死隊がエンリエッサを発見すると、口々に囃し立てる。
「ふふん、無個性な軍団なんて意味はないのよ!殉死隊だって?名前負けなんだよ!道を開けないのなら、大人しく私の前で死人となれ!」
エンリエッサもまた、久々の獲物を前に気持ちが高揚し、理性を抑えられそうになかった。
同僚である業魔将バンネッタには、よく考え方が違うと意見するエンリエッサだが、似た者同士でもある二人。
一体一体天使達を、多様な魔術を用いて墜落させるエンリエッサ。
雷で羽根を捥ぎ、黒き触手で雁字搦めにし、巨大な骨で殴打する。
それはまるで子供が遊んでいるような光景がそこには広がっていた。
やがて隊列の奥からは、レジーナ達がボロボロになりながらも、なんとか生存している姿を確認すると、思わず顔を綻ばせるエンリエッサ。
「レジーナ!元気そうね、貴方達も無事でなによりだわ!さてと、私が来たからには好きにはさせないよ」
「エンリ姉様、すいません…。面倒をおかけしますが、お願いします…」
「エンリエッサ様だ!敬礼ー」
「けいれいー」
「不出来な妹達ですいません、エンリエッサ様!けど正直助かりました。手持ちの炸裂弾をほぼほぼ使い切り、私達だけでは突破は厳しかったです…」
「いいのよ、私が気まぐれで来たようなものなんだから。それに暗躍している気になっている、どっかの阿保にたっぷりとお灸をすえないとだしね?」
それと同時に現れたノルンに向け、仄暗い笑みを浮かべる。
「おやおや?これはまた大物な方で、私どもの歓迎はいかがでしたか?貴方が相手ならば、私も気合を入れないと」
ノルンも瀕死のレジーナ達よりも、新たな敵であるエンリエッサに興味が移り、真面目な顔で観察している。
ノルンとしては、この場を一刻も早く切り上げ、同胞であるコルトとクモの亡骸を回収したい思いがあった。
しかしだ、この相手ではそうも言ってられない事情がある。
業魔将が一人、深淵のエンリエッサ。
彼女の呼び名は幾つもあり、
魔族の庇護者
死人を統率せし者
真理を覗き見る者
魔術を追い求める者
物騒な呼び名が所狭しと並び、彼女自身が畏怖の対象でもあった。
そんな相手と全力で戦う。
何物にも縛られず、ただ単純に勝ち敗けのみを決する一騎討ち。
ノルンもまた興奮していた。
「貴方には、私の聖遺物の力を直接感じていただきましょう。この起源の書の力をね、心ゆくままにね」
ノルンは懐から書物を取り出し構え、エンリエッサもまた、黒い小降りの刀を握りしめその時に備える。
パーティーのような和やかな雰囲気のままに、殺気立つ二人。
オスロ上空での戦いの幕が上がる




