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化物達の理想郷  作者: 同田貫
大陸の理
152/171

発露

勇者マークは疲弊していた。

自身の利き腕である右腕を喪失し、臓器にも損傷をきたしていた。


利き腕はどうにか治癒術にて血止めしたが、全身を這うような痛みが続く。



瞼も重く、意識も朦朧としている。

クモと勝負を急ぎ過ぎた結果だ。

長期戦は不利と判断したマークの無理が、ここにきて皺寄せがきていた。


「…クモ、君はたしかに強敵だったよ。いままで戦った誰よりも難敵だった、僕も無理をし過ぎたかな?片腕だけじゃ、もう戦えないかもな…」


意識が閉じる瞬間、マークは暖かな光に抱かれるような感覚を覚えた。

それは穏やかで、どこか懐かしくもあり、忘れがたい存在。


「…ナナイ様?なのですか…?」


そこでマークの意識は途切れた…。



再び勇者が目覚めた場所。

そこはオスロ要塞線第3城壁、人魔の傷ついた兵士達が横たわり、自分もその場所に移送されていたようだ。


まだ意識ははっきりしない、朧気な中、近くにネラフィム卿とヤクトバーグ卿の気配を感じ、安心したのか再び深い眠りへと誘われるマーク。



「…マークがこんなにやられるなんて、ネラフィも、それにヤクトバーグが殉死するなんて。もし、もしもだよ?マークが眠ったままだったら…」


「止めろよリューティス!マークは生きてる、そんな柔な奴じゃない!それに俺達がいる、まだ終わらない!」


「けど、けどさ私達だけじゃ、もう戦えないわよソロ。それに星詠みの巫女様の御告げ、貴方も聞いたでしょ?私達は運命からは逃れられない…」

「そんな訳あるかよ!そんな訳…」



弱気なリューティスを励ますつもりが、そのソロまでもが意気消沈し、誰がみても二人は気落ちしていた。


「情けないですよ二人共、まだ貴方達と私がいる。それでは駆け出しの頃に、泣きべそをかいていた時と変わりませんね。星詠みの巫女の御告げを、私達で変えてやればいいじゃない?」


「「…ナナイ様っ!」」


「驚くのは後、私はサマエルのやり方には賛同できない!魔族達ともわだかまりもまだあるが、今は保留よ!私に協力してほしいの二人共!」


「はい、喜んで!」

「わかりましたナナイ様!」


第3城壁に近づく脅威に向け、団結する第3城壁の面々。

人魔の兵士達も鬨の声を上げる。





第2城壁周辺における戦いは、徐々にだが終息しつつあった。

突破力のある部隊である彗星や、数の暴力であった人形部隊達が、軒並み浮き足だち、エンリエッサ率いる第一軍団が盛り返しつつあった。


残るはレジーナ達と死闘を繰り広げている、ノルンの殉死隊のみであった。


「マト!周囲の掃除任せた、一掃してあげなさい。後腐れないように!」


「はいエンリエッサ様!お任せを!」

「やるぞお前達、敵は虫の息だ!後一押しで、ここ一帯はケリがつく」


「人使いが荒いですな、マトさん」

「まったくだ!」

「やりますよ〜!」


魔術兵団の兵士達が口々に愚痴る中、エンリエッサは頭上を見やる。


「ぶんぶんと、汚い羽虫共が!纏めて撃ち墜としたら、さぞ気分爽快に違いない!糸目の奴はどれだけやれるのか、期待外れでないといいわね?」


オスロ上空へ、自ら飛翔し救援へと向かうエンリエッサ。


けらけらと嗤う彼女。

いまや彼女の心中を察する事は、誰にも予測ができない。

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