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化物達の理想郷  作者: 同田貫
災いを呼びし者
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悪鬼の跳梁

城門の周辺には、結界破壊の際に使われた鉄杭が深々と刺さり、周囲には人族と魔族の死体が散乱していた。

打ち破った城門を橋頭堡にしようと後続の魔族達が続々と侵入し、急造の陣地が出来上がりつつあった。



「皇都の外壁は徐々に占領しつつあるみたいね、問題は宮殿手前の内壁部分かしらね?残存の部隊と聖人が粘ってるみたいだし、時間稼ぎかしらね?」


「その可能性はありますね。今指導者達を逃すと、後々禍根となりましょう。あまり時間をかけるべきではないと考えますが」


「同胞の救助もあるし部隊を二つに分けましょう。エンリエッサは、ティナ達獣人達と共にとらわれている魔族の救助と保護。私は、ヲイス達巨人の一団とともに宮殿の攻略にむかうわ」


「はい、お任せ下さいませ!」

「御命令拝命いたしました御使い様」

「ヌッ…了解シタ」


獲物を求めて、さらに奥へと突き進んでいく。一切の容赦を持たず、慈悲も無く、戦力差をものともせず蹂躙を開始した。





宮殿に繋がる内壁の城門では、皇都側の防衛網が着々と構築されつつあった。

本来攻城などに使う兵器の数々が、即席のバリケードに備え付けられ、必死の抵抗をみせていた。

聖人のフランチェスカと、皇軍の将ロッシ指揮の元粘り強く抵抗していた。外壁が破れた今、この内壁が最後の防衛ラインでもあったからだ。


「攻城兵器が威力を発揮していますな。これで皇族の方々や、指導者達を避難させる時間が稼げます!イベルタの血を次代に残さねばなりません」


「聖光壁をはりなおす暇もなかったからな。しばらくは持つだろうが油断は禁物だ。敵も突破するのに必死だろうしな」


「たっ…大変です将軍⁉︎巨人族の一団がまっすぐこちらに向かってきています。一際大きい個体の右肩には、悪魔も確認されています」


「業魔将か、御使いのどちらかだろう」


「攻撃を巨人に集中させろ。ダメージを蓄積させるんだっ!足の止まった個体から順に討ち取れ、焦らず確実に行い敵を殺せ」


バリケードの隙間からは、バリスタや投石機の矢や石が絶え間無く対象へと飛んでいき、巨人に浴びせていた。

弓兵達も番える矢も、間断なく発射し、敵を寄せ付けない。通りに面した広間には、攻めてであるはずの魔族の死骸があちこちに転がっていた。


巨人達の背後から、魔族達の軍勢が高きバリケードを狙おうにも、攻撃の激しさに、進展をみせていない状況であった。



ヲイス達巨人とリーゼは、なかなかの抵抗に満足気な様子であった。


「己の存在をかけて、自分達の国を守る。なんとも崇高な使命じゃないか、こちらも全力で応えるぞヲイス!相手に失礼のないように、徹底的にな」


「御意ニ…」


大盾を掲げ、鋼鉄の甲冑を身に纏う巨人達の進軍は止まらず、勢いそのままにバリケードを破壊していく。

攻城兵器を優先的に叩き、内壁の戦力を無力化していく。


「グガ…邪魔ダ…」


バリケードの内部を統率していた、指揮官達を狙い打つように槌を振るうヲイス。

やがて内壁内部も混戦となり、人族に比べ、身体能力の勝る魔族達に軍配があがり始めていった。


「あなたがここの指揮官かしら?私は今代の御使いのリーゼよ!こっちは巨人のヲイス、一応聞くけど道を開けてくれるかしら?」


「断る、お前達はここで物言わぬ屍となるからだ。通すことはできない!」



フランチェスカとリーゼはお互いに睨みあいながら、距離をとる。

間合いをとりながら、魔力を練り術式を展開する。リーゼも炎の槍を具現化させ、構えをとる。

ロッシ将軍率いる騎士団達も、ヲイス達巨人に対し白兵戦を展開する作戦に切り替えた。


肉薄する勢いで、攻撃するが巨人の圧倒的な膂力の前に徐々に数を減らしていった。

そして最後は、一体の巨人に狙いをすまして、相討ちになるように事切れるロッシ将軍達。今際の際に彼は、ただただ皇族の無事を祈りながら、倒れ伏した。


「あなたの聖杖の力私に見せてよ…頑張らないと簡単に死んじゃうよ?ねぇ、色々やってみせてよ、待っててあげるからさ。」


「見くびらないでほしいわね!それにボルドーの旦那との約束もある。それにアイズの仇をとらないといけないの!だから貴方は、ここで死に絶えろ化物っ!」



リーゼの放つ複数の火球を、フランチェスカは身体全体を覆う聖光壁でしのいでみせた。

杖からは、光輝く光線が発射される。

互いに放ち合う火球と光線がいくつも煌めきあい、さながら花火のように幻想的な空間となっていた。

フランチェスカは、聖光壁を剣に纏い、リーゼに対し接近戦を仕掛ける。


リーゼもそれを軽く捌くと、焔の槍を出現させ、それに応じた。

どこまでも、フランチェスカをせせら嗤うように対峙するリーゼ。我流であるが、隙の少ないリーゼの槍術に、フランチェスカは攻めあぐねていた。


「ほらほら息が上がってるよ、もっと見せてよ貴方の限界を、私にさ!」

「へらず口をっ…」



フランチェスカは、魔力を練り上げ、光り輝く大きな球体を至近距離から放った。

身体を掠めたリーゼは、お返しとばかりに炎の鞭をフランチェスカに巻きつけた。


「こんなものは通じないわ!」


「結界にはね…けど貴方自身はこの熱に耐えられるかしら?」


鞭はやがて巨大な青白い焔の繭のように姿を変え、フランチェスカを蒸し焼きにするように形を変えた。

たまらずフランチェスカも動けぬ繭の中から、光線を乱れ撃ったが焔の勢いは止まらずフランチェスカの皮膚を少しずつ、少しずつ焼いていった。


「選ばせてあげる。このまま焼かれるか、私の槍に串刺しにされるかどちらがいいかしら?私はどちらでもいいわ、だって私は優しいからさ」


「くぅぅ…お前なんかには、屈しない…いずれ勇者に…討たれる時まで…せいぜい…あがけばいいさ…」


「ごめんなさい…ボルドーの旦那…私は…ここまでみたい。あとは、勇者…頼み…」


必ず帰るからと約束した皇女に叱られてしまうな、仲良しだった皇女の事を想いながら、フランチェスカは息絶えた。

フランチェスカのいた場所には、光輝く聖杖だけが残されていた。



こうして皇都の軍勢の組織的な抵抗は終わりを迎えつつあった。

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