天地を穿つ(1)
カンカンカンカンカンカン
オスロ要塞線、第1城壁にけたたましい警鐘の音が響き渡る。
まだ朝靄の晴れない、早朝の時間帯にも関わらず、響き渡る警鐘の音が鳴り止む気配が無い。
寝ぼけた早番の兵卒の悪戯でないのなら、その理由は一つであった。
城壁の上では当直の者や、警備を交代するために城壁に登った者、警鐘を聞き身を乗り出す野次馬、第1城壁にいる全ての者がその異様な光景を目撃した。
天と地を覆い尽くすような天使達の軍勢を、地上は天秤部隊と星屑部隊達、上空にはサマエル直下の部下達である天使達の姿が、雲霞の如く続いていた。
「世界の終わりみたいだ…」
一人の兵士の呟きは、さざ波のように城壁上に伝わり、オスロ守備隊に絶望間を抱かせるには充分な数だった。
「戦う前から諦める奴があるかっ、この腰抜け共め!諦めるのは、この戦いが終わってからにしろ!あの要塞砲は使えるんだろ?弾を装填しろ、敵は待ってはくれないぞ、急げ!」
「レジーナ達は、上空からあの薄気味悪い天使達の牽制と、地上の奴等の爆撃準備よ、わかってるでしょ?」
「はいはーい、仰せのままにティナ副長。けど私達が帰るまで、この城壁残しといてよ?レジーナ隊いくよ!ミミイ、メメイ、ヌメイの各隊は陽動と撹乱に専念して!空は私達の庭なんだから!」
「はいっ、隊長!」
「あーい隊長〜!」
「了解でありまーす!」
いつもの調子で離陸していくレジーナ空中機動部隊の面々をよそに、先程のティナの叱咤激励が効いたのか、やる気を新たにする帝国兵達。
「よっしやるぞー!魔族の奴等が気張ってるのに、俺達が萎んでてどうするよ?銃隊、砲兵隊は射撃準備!バリスタと投石器も準備しとけ、敵はすぐそこだ!弱気な発言した奴は、給料差っ引くからなぁ、そのつもりでな!」
「やる気削ぐなよアホ!」
「へへじゃあ、俺は給金上乗せで頼むよ!これから大活躍するからさ!」
「団体客がわんさか来たぞ!全員打ち方用ー意っ!放てっー!」
多種多様な鉛弾が、雨霰のようにサマエルの軍勢に襲いかかり、星屑部隊や天使達先頭集団の動きが僅かに鈍っていく中、さらなる猛射を浴びせていく。
それでも突撃をやめないサマエルの軍勢は、徐々に徐々に、城壁との距離を縮めてゆきながらに。
ドドドドドドドドドド
嵐のような砲火に、指揮を執るノルンとコルトは興奮気味であった。
彼等は諦めないどころか、徒党を組み、連合を組織し相対している事に。
「第1波攻撃はいなされたかぁ、じゃあ人形部隊の諸君は第2波攻撃準備、準備ー!敵を間断なく攻めたて、相手を疲弊させろ!奴等の希望を奪い、明日への活力を奪え!ねぇノルン?彼等は命乞いとかすると思うかい?」
「さぁねどうだろう、ただ彼等は降伏なんてしないと思うよ。私が思うに彼等には後がないのさ、それこそ死に物狂いだと思うよ、必死の抵抗さ。それにだコルト、君は命乞いなんて聴くタイプではないだろう?」
「あは、バレバレかぁ。流石はノルン、我が相棒だよ!君の観察記録も伊達じゃないねー、惚れ惚れするよ!」
「褒めても何も出んよ?では殉死部隊前へ、奴等を教育せよ!」
上空を飛行している天使達や、地上の星屑部隊を指揮し、オスロ攻略の糸口をあざとく探す両者。
ただ久方ぶりの骨のある相手に、短期決戦ではなく長期戦を、はなから見据えているのが、二人の共通認識だった。




