星屑部隊
カラーンコローン、カラーンコローン
喜びの表情をたたえた天使が持つ鐘の音が鳴り響く中、ラッパの合図で指示を出し、帝国の阻止部隊を駆逐しながらに順調に北上するサマエルの一団。
聖剣の気配に反応するように、自身の大きな傷跡が疼くコルト。
傷は塞がったとはいえ、ジリジリとさすような痛みは継続し、彼女の行動をより荒々しいものへと変質させる。
彼女の指揮する人形部隊には、サマエルとクロスフィア肝いりの、模造品達が配置されていた。
模造品達とはそのままの意味で、過去の偉人や聖人、傑物に豪傑、勇者等の膨大な戦闘記録をもとに造られた代替品達であり、人造天使達に比べると見劣りする粗悪品であったが、大量生産、大量消費が可能なメリットを併せ持っていた。
天秤部隊の前衛部分にはその模造品達が、数人の顔のモデルのパターンはあるものの、ほぼ同じ姿形に、性別や若干の髪質や瞳の色の違いを除けば、まったく同じ存在が行進しているような不気味さを感じる存在であった。
一面同じ顔の集団
サマエルより星屑部隊と名付けられ、頭上に天使の輪を浮かべながらに帝国の阻止部隊めがけて、今まさに猛威をふるっていた。
「なんだあいつらは?攻撃しても、しても湧き続けてきやがる!それに全員同じ顔してやがる、どういう事だ?」
「しのごの言うな、あいつ等は人ではない!人の様に似せた何かだ、倒し続ければ正気はあるはずだ!」
「けっ、けど隊長!あの数は…」
「いいから撃て!目測で構わん、オスロに味方が集結している今、少しでも時間を稼がねば、我々の任務を成せ!」
「はっ…はい!」
バラバラに射撃を続ける帝国の塹壕陣地へ、幾つもの塹壕を潰しつつ、規則正しく行進して近づくコルトと星屑部隊。
「いるいる、帝国の負け犬共め」
「主人に代わって誅殺せよとのご命令だ、迅速にかかれ!型番020001から028000まで、敵中央突破を敢行しろ!型番0036588から0041000までは、側面防御と前方集団を援護!残りは前進を続けよ、異端に叛逆者、彼の地は敵であふれているぞ!進みなさい我が人形達!」
「「ススメ、ススメ、ススメ…」」
隊列も陣形も無視した、でたらめなさ突撃をし、その進撃を帝国軍の阻止部隊は止めることはできなかった。
国道に設けた関所や塹壕を飛び越え、銃弾や砲弾飛び交う戦場を跋扈し、帝国の築城した陣地を次々に攻略してゆく星屑部隊の兵士。
手には、両手剣に短弓、斧に槌、槍など様々な兵装で武装していた。
「穴倉ニ籠ル」
「蟻ノ群レ」
「生命ガ…、弾ケ、混ザリ」
「終ワリ、終ワル、始マリ、始マル」
「なんなんだ!こいつらは!」
「殺せ!殺せ!」
意味深な言葉を続ける星屑部隊達、彼等を捉え切れずに、屍だけを量産する帝国阻止部隊の面々。
「糞、オスロ要塞線はどうなっている?数は揃ったのか?こちらはそう長く保ちそうにはない…」
「辺りはどうか?」
「…」
「おい、どうした?」
そこにはすでに事切れた部下と、塹壕陣地奥深くまで侵入した星屑部隊達が指揮官に雪崩れ込んできていた。
「絶ヤシ、殺シ、無トナル…」
「世界ハ閉ジル…」
「「サマエル様ノ為二!」」
「ゲフッ…、こいつら」
「将軍閣下、後は頼みます、どうか帝国を、私達の帝国を頼み、ます…」
身体を散々に串刺しにされ絶命する指揮官、ただ、彼等はここで死んで幸せだったかもしれない。
これより始まる、オスロの地での地獄を経験せずにすんだのだから。
コルトと星屑部隊の先行した国道は、戦いの激しさを物語っており、星屑部隊と帝国軍の死骸が転がっている。
その通りを背後から追走するノルン達と、後詰で配置されたクモ達率いる天秤部隊。
「コルトは張り切ってますね!これではクモさん達の分は期待できませんね、物事に熱中する癖がありますから!クモさん達に連絡を、この先で待ってますと。あぁそれと、コルトに一旦進軍を停止するように伝えてくれないかな?一人で突っ込みかねない」
「かしこまりました…」
哀しみをたたえた表情の天使が、コルトとクモ達に連絡を行う頃。
コルト率いる先鋒隊が、オスロ要塞線第1城壁にたどり着いたのは、それから直ぐの事であった。




