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化物達の理想郷  作者: 同田貫
大陸の理
140/171

オスロ要塞線にて

リーゼと随伴するように歩く業魔将の面々達、その背後では慌ただしく指示を飛ばす部隊長や戦士長達。

その中には、南部にいたギュンター老率いる第四軍も加わっていた。


今回のオスロ派兵の行軍中に第四軍と合流し、そのままの形でリーゼの幕下へと加わっていた。

北部連盟の各軍団が救国同盟軍の籠る城壁へと、配置についてゆく。


城壁には帝国の黒き獅子の軍旗と、魔族達の半月を逆さにした軍旗、さらには北部連盟各国の軍旗がたなびいていた。


そのオスロの大広場では、即席の机の上に広げた地図上に戦力を表す駒を並べてゆき、サマエル軍の侵攻経路と現在地の確認、その対策の軍議が行われた。


地図上には第1城壁から、外縁部であるこの第4壁の詳細な図面が描かれ、収容している人員と兵装、さらには細かな情報が緻密に書き込まれていた。



「でははじめます、現在の聖女達の軍勢は州都ヤハウェを陥落させ、トラキソン国道を北上し、直線的にこのオスロ要塞線を抜く構えをみせています。我が帝国の阻止部隊が時間を稼いでおりますが、遅くても数日ないしはそれより早く、この地に来襲するはずです」


「斥候よりの報告では、敵は周辺諸国を攻略していた別働隊が本体へと合流し、この地の攻略に本腰をいれている。周辺諸国への蹂躙が止まったのが、せめてもの救いだな。」


「勇者、まずは君達の意見を聞かせて欲しい。主力を集中配置するか、分散させ均等に配置するか。また君達をどのタイミングで投入するかをだ!」


現状の説明をしてゆくレイノルズとオフィーリアに続いて、ルバルフは勇者達の意見を問うていた。

言い淀むマークはやがて口を開く。


「僕は分散配置をするべきかと考えます、この各城壁の構造は、抜かれてしまう想定で建設されている。ならば、戦力の集中配置は愚策でしょう。あとは僕達の出撃のタイミングは、聖女の軍団内に潜む超越者達がでてきたタイミングが、一番望ましいかと考えます」

「御使いリーゼもそれでいいか?」


「えぇ、構わない。このオスロの地で奴等との腐れ縁を絶ちたいしな。決着がつかなければ、戦線を後退させつつ抗戦することでいいのよね」

「イシュガル、魔導砲はこの要塞線まで射程圏内かしら?」



「はいリーゼ様、ローガルド要塞に運びいれた物が使用可能です。日に二発が限度といったところですが」


「私達もお前達が出撃するタイミングを合わせよう。リーゼ様、おそらく敵首魁であるサマエルも、この戦いに顔を出すはずです。奴とその側近達を、どうにか処理し活路を見出さねばなりません」



リーゼとエンリエッサ、イシュガルが援護可能な案を出しつつ、問題のサマエルの軍勢、天秤部隊の対策そのものに頭を悩ましていく。

聖人達も、実際にロート山脈やハンベルニア城で幾度となく戦い、その実力を重々承知していた。



「生半可な攻撃では彼らは物ともしない、友軍の屍を踏み越えてでも彼らは進撃を止めないだろう。また我々と違い、一体一体の生命力が桁違いだ、侮ることは、死と直結すると考えてくれ」


「ふーむ、超越者に造らた生命体達ときた。さながらお伽話の住人のような話だ、冗談ではないのがまた癪だ。我々聖人やマーク、そちら側の実力者達も分散させ、不測の事態に備えることのほうが賢明でしょうな」



「では各陣営の各軍団は持ち場につき、城壁が破られたら即時、後方の城壁へと退避するように。決戦は避け、持久戦にてこの難敵を攻略する。以上!」


結論が出たと判断し、レイノルズ卿が軍議の総括を続ける中、終始無言だったバンネッタに、ソロ卿が興味を覚えて話しかけていた。

「なぁあんた軍議中無言だったが、軍議の内容は理解できたのか?」


「いんや、要は目の前の敵を粉砕し、明日を掴めと、そういう事だろう?」

「違いないね、俺もさっぱりだ!」



脳筋の二人は妙な連帯感をみせて、軍議は熱気冷めやらぬ中閉会した。






第1城壁に籠る人と魔族の混成軍団、敵がいつ来るかわからない夜番の警備に、帝国の人族側が参っていた。


松明の光で暖をとり、縮こまっているすぐ横では、夜番をしながら魔族側は晩酌を強行していた。

「あんた達怖くないのかい?俺達の持ち場が一番先端部だから、最初の修羅場はここなんだぜ?」


「怖くないと言えば嘘になるが、お前らも辛気臭いぞ、酒でも飲んで有意義に過ごせよ。我々の上官はそんなに口うるさい者はおらんからな!」


「有意義な時間ね…」

「そう、今を楽しく美しくってな具合だ!ほらあんたも飲みな、戦場では宜しくな!オレは魔国第二軍の者だ!」



「オフィーリア麾下の旅団の者だ、まぁなんだこちらも宜しく頼む」


ささやかな晩酌会が星空の下で催された。明日をも知らぬ決戦の前に、彼らの晩酌会は夜更けまで続いた。


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