参集する陣営
ティナ達の先遣隊達がきて僅か数日で、オスロの地に、北部連盟の主力が続々と参集していた。
北部連盟の軍勢は、いまや帝国の救国同盟軍と同規模、またそれ以上の規模を誇っていた。
ルバルフ卿とオフィーリア卿、レイノルズ卿のいる指揮所には、ひっきりなしに伝令が着陣の報告をしてゆく。
「ご注進、ランバルディア藩主国よりの軍勢がご着陣!藩主自らが手勢を引き連れたようであります!」
「ご注進!セプト自治州の軍勢もご着陣!報告より数が増えております!」
「さらにご注進!ウェルドア王国より、ジョン国王麾下の軍勢がご着陣!陣備えは如何様にとの事でございます!」
吉報の数々に打ち震え、感情を爆発するルバルフ卿に、レイノルズ卿が諌言し、自身の考えを述べる。
「ルバルフ、これでようやく五分五分といったところだ。控え目にみて五分だ、間違っても決戦なぞ申すなよ?敵の能力は、摩訶不思議どころではない。奇妙奇天烈だ、専守防衛を徹し敵を誘引しつつ、打撃を継続することで敵に犠牲をしいり、敵を釘付けにする」
「何を言うかレイノルズ⁉︎帝国の長年の敵役である王国までもが、我が陣営に加わり、徒党を組むというのに、臆病風に吹かれたかレイノルズよ!」
「ルバルフ叔父様、最早勝ち負けではないのです。私達人という種の生存を賭けた戦いなのを、まずはご理解下さいませ。通常の戦争とは違い、降伏という選択肢はございません。敗北は、すなわち種族そのものが無くなる事を意味します。貴方の考えが変わらなければ、私は貴方を地下牢に拘束し、心変わりするまで幽閉する覚悟がございます」
彼女の表情は真剣そのものであり、側に控える近衛に指示を出し、ルバルフ卿を取り囲む事態となる。
ルバルフ直参の部下もまた、主君の前に躍り出て一触即発の空気となる。
慌てたレイノルズは、双方落ち着くように再三警告をだす。
「双方待たれよ!今身内で争ってどうする、大事なのは対策であって、身の振り方ではないはずだ!オフィーリア落ち着け、ルバルフもだ!いいな?」
「…えぇ、すいません叔父様」
「分かっておるわ!…ぬぐぅ、儂とて承知の故よ。博打打ちなぞしてもどうにもならん、後は光の神のご意思のもと最善を尽くすだけだろう!」
そして静寂を破るように、沈黙していた室内に、最後の伝令の声が響く。
「申し上げます!魔国よりの軍勢を確認、先頭には勇者様方を確認いたしました!聖人様方もご無事でございます、軍勢を中に誘導いたします!」
「何と?左様か、直ぐに通せ!勇者達の元気な顔を拝まなければな、我々に活気を分けてもらわなければならんな!ぬはははっははは!いや、儂から会いに行こうではないか!レイノルズ、オフィーリア儂の後について参れ!」
「やれやれ、無鉄砲過ぎるぞ」
「お待ち下さい叔父様!走ると危ないですよ、もういいお歳なんですから!」
そして勇者達の無事をその目で確かめると、思わず感涙するルバルフ卿。
直情的だが、人情深く義理堅い性格は、勇者達とはまた違う魅力で、人を惹きつける彼の個性でもあった。
パチパチパチ…
あまりに乾いた拍手とともに現れたのは、魔族の指導者であり闇の神の分身、人族の仇敵であったリーゼが、拍手をしながらに歩みよってくる。
柔和な笑みを浮かべているが、根本的なおぞましさを内包した微笑みに、その場に居合わせた者全てに抱かせる御使いであるリーゼ。
可憐な外見が、その不気味さをより際立たせるのに一役買っていた。
「感動的な再会おめでとうマーク、それで君がここの指導者なのかな?改めまして、私が御使いのリーゼよ。サマエルの打倒が私達の最優先事項なの、それまで貴方達とは休戦ね。勿論、貴方達が私達魔族に仕掛けてくるなら話は別だけどね。まずサマエル達の軍の現在地を教えて?話はそれからよね」
「よかろう、その話は我々から提案したい事柄であった。こちらに抗戦の意思は無い、謹んで貴方の申し出を受けようと私は思う。皆もそれでよいか?」
ゆっくりと周りを見つめ、誰もがルバルフに肯定的であるのに、リーゼは笑みを深くしてゆく。
人魔の戦いが開幕してゆく。




