閑話 決戦前夜(後編)
壮行会のような親睦会が、集結した北部連盟全軍で催され、それは明け方まで続く盛況ぶりだった。
そこでは上司も部下も関係なく、飲めや歌えや、踊れやのどんちゃん騒ぎが行われ、酔っ払いの集団であった。
亜人達や魔族達、人族の兵士達が肩を並べ、意味不明な歌や踊りを披露し、疲れた者から人知れず眠りについた。
眠りこけている兵士達に、毛布をかけていく不夜番の骸骨兵とリビングデッド達、彼らは眠る必要がなく、眠ることのできる兵士達がとても幸せな事であると感じていた。
「よし、こんなもんね!あんた達は、外縁部を二人一組で巡回、こういう時だからこそ、見廻りは大事なノ!」
カラカラカラ…
ハッポウの言葉に、首を縦に振り了承の意を示す骸骨兵達。
ほどなくして骸骨兵達は散らばり、辺りには眠りこける兵士達と、リビングデッド達だけとなった。
「あーあーだらしないなぁ、こんなに無防備に寝ちゃってさ。警戒の早鐘でも鳴らして、皆叩き起こそうカ?」
「寝かせておいてやれチビ、我々と違って睡眠が必要なのだ。それにだ誰もが不安の中、無用な混乱を起こす必要はないはずだ。よいナ?」
「けっ真面目なフトッチョさん、冗談だよ本気にしないでおくれ。睡眠ができるのが羨ましかっただけだよ、ネコゼはどう思う、そこんとコ?」
「…?別にどーもせんよ、ただ夢をみる事は、自分の記憶の整理ともいわれているそうな、本当かどうかはわからないが、つまりは必要な事だと思うゾ」
「興味深い話だナ」
「じゃあ妙に色っぽい夢だったり、誰かに追われたりする夢とかも、自身の記憶の整理だったりするのかナ?」
「さぁどうだろう、私にはわからないさ、精神的な負荷が夢にまで影響するのかもしれないな。兵士達の寝顔を見る限りは、そんな心配はいらないサ」
「そうだろうネ」
睡眠について、自身の講釈を披露するネコゼに、ホソミとハッポウが熱心に聞き入っている。
チビとフトッチョは、大樹の下から満天の星空を眺め、横になっていた。
「なぁフトッチョ、死んだ者はよく夜空の星になるってゆうだろ?じゃあ俺達のような存在でも、死後はあんなお星様みたいになるもんかネ?」
「再び元の土くれか、媒介となった骨の姿にでもなるんじゃないか?元々死んでる我々が、死後の世界を心配するのは杞憂といえよウ」
「夢がないなぁフトッチョ、そんなんじゃ会話が成立しないだろ!少しは会話を続ける努力がほしいナ!」
「こういう性格なのダ…」
「性格ねぇ、まぁフトッチョらしいといえばらしいかもネ〜」
取り留めのない会話をつづける二人に、他の三人も加わり、より議論は白熱してゆくこととなる。
勇者達の天幕では、酒をあびるにように飲んだヤクトバーグ卿とネラィム卿が、早々にダウンしてしまった。
酒に強いソロ卿とリューティス卿は、お互いに泣き上戸と笑い上戸で、話が噛みあっていなかった。
「だからなぁ、俺は聖人になる前は、そりゃあひでー生活だったよ!場末のチンピラでくすぶってるような、ろくでなしだったんだ。それをな、ヒック、拾い上げてくれた中央庁が、うぅぅぅ…」
「マーク、大の大人が泣き崩れてるよ!アッハッハ、それより私の気持ちにいつ向きあってくれるのかな?色男めぇー、このこの、私も泣いちゃうよ?」
普段の調子からは真逆の二人、どごまでも弱気なソロと、どごまでも奔放な性格のリューティス。
長くなりそうだとそそくさと退出するマークを、据わった目で見るリューティスと、弱りきった目で見るソロ。
「マーク、逃げないでよ〜!」
「待てよ、うぅぅ、マーク!」
「ちょっと風にあたってくるよ」
夜風に吹かれ散歩と洒落込むマーク、自分達の宿敵であるはずの魔族との共闘に、どこか夢見心地のマークだった。




