人魔の契り
ミミイ達を連れて、オスロ要塞線の奥へと案内する現場指揮官。
内壁も増設され、今や第1城壁から第3城壁まで築き上げ、本丸である元々の城壁の第4城壁を含めると、城を何個も連結させたような外観であった。
「お待ちをそちらの方々は?」
「なんの約束でございますか?」
「魔族の者…?」
居並ぶ衛兵達が怪しむ中、現場指揮官は魔族側の特使であるの一点張りで、ルバルフ卿達のいる一番大きな尖塔までミミイ達を案内した。
「私が案内できるのはここまでだ、後は近衛の者が案内いたす。話は通してある、ご武運を勇敢な方々!」
「ありがとう!再び会うと約束しよう、それまで陥ちたりするなよ?」
「ははは!当たり前だ!」
声高に叫ぶ現場指揮官は、肩で風をきるように自身の担当場所まで、確かな足取りで戻っていく。
「いい雄だねミミイ姉、ありゃあなかなかに好人物だよ。婿さんは、ああいう殿方にしないとねヌメイ?」
「そうだね〜メメイ!けど私は、もう少しふくよかでも許容範囲だよ!ミミイ姉はどう思うの?」
「あんたらはぶれないね、緊張している私がなんだか阿呆らしいわ。けどこの先は行儀よくね?真面目な顔をしてくれていれば、それでいいから」
「報酬は?」
「私秘蔵の火酒でどうかな、度数強めの、一舐めで酔えるお酒は?」
「ん〜、まぁいいよ!」
「忘れないでよ!」
「ん、ありがとう二人共!」
前後を近衛兵に囲まれながら、どこか間の抜けた会話をする三人組。
近衛達はなにかの暗号かと勘繰っていたが、たわいのない会話であった。
やがて一際広い部屋へ入ると、ルバルフ卿をはじめ、オフィーリア卿にレイノルズ卿、さらには内務卿や司法長官など、帝国の首脳陣が揃い踏みであった。
そんな雰囲気に臆することなく、機先を制して、自己紹介するミミイ達。
「突然の訪問、まずは謝罪いたします。私は第一軍団所属、レジーナ空中機動部隊のハーピーミミイと申します。こちらは二女のメメイ、三女のヌメイです。どうぞお見知りおきを、本日は北部連盟からの書状をお持ちしました!確認を」
「二女のメメイと申します」
「三女ヌメイ、宜しく…」
あまり喋るとぼろのでる二人は、言葉数を減らすという荒技を実行した。
ミミイは、ひとまずルバルフ卿の動きを注視しながら、出方を窺う。
「こちらこそ遠路はるばる来てもらい感謝するミミイ殿、ネルト帝国救国同盟軍のルバルフだ。さっそく書状を拝見したい、暫し待たれよ!」
その書状に書かれている内容は…
・北部連盟主力を援軍にだす用意がある、連絡を請う。
・万が一オスロ要塞線が抜かれた場合、軍を後退させ、我々の領域であるロート山脈近郊にてケリをつける。
・前線の情報を共有し、共に巨悪へ立ち向かう準備がしたい。
・人族と魔族とでひとまずの休戦協定を結び、協力関係を築きたい。
以上が書状の大まかな内容であった。
脅し文句や恫喝ではなく、純粋な善意からの協力申請に、帝国の首脳陣は、胸をうたれる思いであった。
「ミミイ殿、今は少しでも戦力が欲しいところなのだ。謹んでこの申し出、受諾したいと私は考えている」
「私からもお願いするわ!ただ現在、我が軍はこの地から動くつもりはない。最善を尽くすつもりだが、もしもの時は厄介になると伝えてほしい」
「それを聞けて一安心だわ、現在大陸各地の魔族の隠れ里にも、被害が広がっていてやきもきしていたのさ!この戦乱の収束は、御使い様の願いでもある。数日中には、こちらに北部連盟の援軍が到着することだろう」
「大陸を再び我々の手に!」
「えぇもちろんよ!」
両者握手を交わしながらに、和やかに談笑する中、メメイとヌメイの真面目な顔を保つのが限界を迎え、表情がピクピクとひくつき、レイノルズ卿が不思議な視線を送ると、今度はにやけていた。




