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化物達の理想郷  作者: 同田貫
相反する理想郷
133/171

破滅の足音(3)

クモ達率いる天秤部隊の、帝国国内での掃討作業は順調であった。


湧いてでる湯水のように、次から次にでる帝国の抵抗勢力に、クモにサソリ、ヘビは大いに満足していた。

帝都の中心地から広がるように地方に向かい、蹂躙を行う彼等にとって、自分自身の力試しを行う練習台であった。


クモは天使の輪を浮かべ、黒い羽根をはためかせながらに、左半身は全体が異形へと変貌していた。

左手には鋭き爪をはやし、右手には邪剣を握りしめ、身体全体に黒い紋様が広がり、高揚感に酔いしれていた。


サソリは頭部以外が異形の姿となり、クモ同様に天使の輪を浮かべ、身体には無数の眼が開き、それぞれ別々の方向を向きながらに、周囲の状況をつぶさに観察しているようだった。

腕は四本に増え、攻撃できる範囲がより広がり、残虐性の増した姿形となっており、醜悪な姿ともいえた。


ヘビは天使の輪を浮かべ、顔には巨大な一つ目が灯り、老体であるはずのヘビの体は洗練され、引き締まった若々しい形に変化していた。


三者三様の姿だが、人間離れした見た目は、根元的な恐怖を抱かせるのには充分であった。

それは、天秤部隊の兵士達も同様であり、本来の姿のままに進軍していた。



「何たる甘美な気持ちか、この姿になるとなんでもできると錯覚さえしてしまうな、まさに我々の信仰心の賜物といったところだろう。だが、帝国の奴等にもいささか飽きてきたな、もっと大きな狩りがしたいものだな!」


「ふっふ、サソリ浮かれておるな!だが、まだまだ前哨戦だということを忘れるでないぞ?帝国は足掛かりに過ぎない、大陸を手中に収めてはじめて、サマエル様の宿願は成就するのだ!」


「けどさーヘビ、サソリの気持ちもわかるな!たしかに退屈だよ、単調に寄せてくる奴を手当たり次第っていうのは、天秤部隊としてどうなのさ?」



異形と化した姿のまま、盛り上がる三人組、彼等は一瞬の快楽に情熱を燃やしているようにもみえた。


「戦闘の最中に、ここにいる兵士に聞いたのよ、軍団を組織し、再編している輩がいる話をね。もちろん、その兵士は寝てしまったけどね」


「…本当かクモ?」

「初耳だな、たしかなのかい?」


「えぇ、そいつらは北の要塞線に集結しているそうよ。ここよりも遙かに巨大で頑強だそうだ、御使い達の率いる魔族達との、いい模擬戦になりそうじゃない!わくわくするわね…」


「違いない」

「まだ諦めないしぶとさ、ノルンが聞いたら喜びそうな話だな」



燃え盛る都市の中、次なる目標を何処にするかで話続ける異形達。


辺りには帝国兵の死骸と、彼等が護るはずの民達の死骸が散乱していた。





一方で人形部隊と殉死隊を率いる、ノルンとコルトは、帝国の衛星国家群の攻略に着手していた。


平原での会戦に手堅く勝利し、勢いそのままに国境を越え雪崩込む、街を都市を、村々を飲み込み、兵士達や国民達を殺し、嬲り、また殺し、また嬲り、人々の希望を奪っていく。



コルトの側には、喜びをたたえた天使が数人おり、コルトのしている事に余計な邪魔が入らないように警護していた。


「この子は合格!顔の形や体つき、全てが整っているわね!次の子は、ん〜標準的すぎるな、次の子と一緒に不適正だ連れて行きなさいお前達。さぁさぁ列を崩しちゃ駄目だよ、横に並んで!」


コルトの指示で合格と言われた者は、猿轡を咬まされ、荷馬車に他の者達とすし詰めにされていた。

不適正と言われた者達は、横にある大穴に連れていかれ、短い悲鳴とともに二度と戻って来なかった。


「私はね、綺麗な者や美しい者は保存すべきだと考えているの!だからね君達は特別なの、私と一緒に、どこまでも一緒にいましょう…ね?」


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