破滅の足音(2)
閲兵式の最中での凶報の報せは、帝国の首脳陣に衝撃を与えた。
中央教会のある中央庁の仕切りで、今回の閲兵式の段取りが組まれたが、このような事は前代未聞であった。
ルバルフ卿をはじめ、オフィーリア卿とレイノルズ卿は、帝都郊外の発令所で警備の指揮を執っていたために、からくも難を逃れていた。
中央庁の指導部に今回の件を問いただそうにも、帝都の厄災で生き残りは皆無である現状であった。
中央庁の彼等でさえ予想だにできなかった、まさに異常事態ともいえる、今回の聖女の大虐殺。
人族でもない魔族できない、別のなにかであるサマエルの軍勢に、各州に駐屯している州軍も対応が後手に回って、各個撃破されていた。
ルバルフは緊急の軍議で吠えに吠え、レイノルズ卿とオフィーリア卿も、打開策を考えるために荒れていた。
「一体どうなっているか⁉︎しかも聖女の正体が天使で、そいつが守るべき民を襲っているだと?なんの冗談だ!天使ではなく、破滅の使徒ではないかまるで。各州軍も有効な手立てがうてずに、孤立無援な状態だと聞くぞ。すぐに帝都近郊に陣を築かねば、帝国の屋台骨そのものが揺らぐ大問題だぞっ!帝国軍の底力、見せるは今ぞ!軍団を再投入せよ!」
「叔父様、我々の派遣した軍団からの連絡が途絶え、陣を築く時間さえ稼げなかった事から、私達も一旦退避しなければ、事態のわからぬままに無駄死にです。幸い国境線沿いの要塞線は健在ですので、付近の軍団を統合しつつまずはそこに防衛線を築きましょう!」
「わかっとるわ!オフィーリア!」
「わかっていません!叔父様!まずはこの進言をお聞き下さい、戦力の再投入など集団自殺と同じです!」
「黙らんか小娘がっ!」
「いいえ!黙りませんっ!」
激昂し声高に叫ぶルバルフを、諭すように助言するオフィーリア。
そのオフィーリアも言葉に熱が入り、軍議そのものが中断していた。
レイノルズ卿もオフィーリアと同意見であり、まだ国の形が保っている間に、軍団を統合し、一つにまとめることには賛成であった。
「やめないかルバルフ、オフィーリア!敵は未知数、能力も不明で目的も不透明ときた!私もオフィーリアと同意見だ。今我々が決戦を挑んだら、誰が民草達を護るというのだルバルフ!お前は今、冷静ではないのだ!まずは落ち着け…」
「ぬぅ…、確かに気が動転していた。では要塞線に下がりつつ、周辺国に応援を頼む。それで良いか?我らの帝国、必ず奪い返すぞ!」
「もちろんです叔父様!」
「当たり前だ、お調子者め!」
ルバルフ率いる主力部隊は、帝国の各地の残存部隊を統合しつつ、サマエル達に対する一大抵抗勢力を結成。
自らを救国同盟軍を名乗り、北部帝国国境線の要塞線にて籠り、粘り強く抵抗を続けていく。
クモ達率いる天秤部隊は、帝国各地にいる帝国の州軍や義勇兵を、しらみ潰しに潰し続け、単調な作業に気だるさを感じ始めた頃に、ルバルフ率いる主力部隊に目をつけ、部隊を動かす。
一方のコルトとノルンは、地方都市を壊滅させながらに帝国の国内を抜け、欲望のままに他国に進軍を開始する。
だが、どこまで抵抗できるか…。それは誰にもわからぬ事であった。




