挨拶
プリメールとプリメーアの恫喝が続く、下手をすれば勇者達の発言一つで、この城の生存者達に犠牲がでる。
二人の様子は本気そのものである。
同じ実力者であるはずの他の二人は、一人は愉快そうにこちらの様子を眺め、もう一人は静観をきめている。
プリメールは、両の手を細分化し、負傷者達の側まで触手のようにくねらせ、とり囲むように這わせた。
プリメーアもまた周りの地面を収奪し、自身の体積をみるみる膨張させながらに、威圧するように呻く。
「エンリエッサが言ってた、交渉の場では強くでよと、君達を断わりづらくした。今ね私達、ひどくお腹が空いてきたの、レジーナも喰べる?」
「魅力的な提案ねプリメール、私は丸々と肥えた自堕落なニンゲンが喰べたいわね。貴方は、プリメーア?」
「ウナッ、ウナナー!」
「ははっ、何言ってるかわかんない!」
恐ろしげな話をしだす人外達に、生存者達は一縷の望みを勇者達に託す。
触発されたソロとリューティスが、いきり立つように反応する。
「はん、そうなる前にお前らを倒せば、それでしまいだろうが!」
「私達は人々の希望になるんだ!こんなところで立ち止まれないのっ、あんた達に振り回されるわけにはいかない!」
「おやぁ?あちらさんやる気だよプリメール?反抗的だよ、これは罰則が必要だよ。負傷者の何人か喰べちゃいな」
「レジーナ、悪い顔してるよ。けどそういう時の顔、嫌いじゃないな。歯止めがきかなくなりそう、いい?」
「あぁ、より取り見取りだ」
ソロとリューティスが動くよりも速く、プリメールの触手が動く。
「止めろ!プリメール、レジーナもだ!
そういう下衆なやり方は好ましくない、それでは天秤部隊の奴等と同列だ。いいな、勝手はするな!」
「ちっ、わかったよ冗談だ!」
「マトが怒った?ごめん、なさい」
「プリメーアもだ!元の大きさまで戻りなさい、ん、良い子だね」
「ウッ、ウナッ!」
呆気にとられる周囲をよそに、マトは三つ目を全て見開き、阿修羅のような怒気をはらませ見渡している。
レジーナやプリメール達が大人しくなるのを見計らい、マーク達のほうに振り向く三つ目の魔族。
さっきとはまるで違い、慈愛に満ちたような表情をしていた。
「失礼した勇者、どうにも君達人に悪感情を抱く者が多くてね。君達も武器を下ろしてほしい。こちらに敵意はない、返事を聞きにきた。ただそれだけ、それ以上もそれ以下もないから」
マトに圧倒されたマークと聖人達だが、ひとまずの謝辞を述べる。
「礼を言うべきかな?これ以上の流血は私達も望んでいなかった。感謝するマト殿、生存者達に代わり礼を言う」
「魔族にも色々な方がおるのだな!」
「マト殿、私からも礼を言わせてくれ!皆戦いの後で気が立っていた」
「こちらにも落ち度ありました、そうかしこまらないで下さい。それに…」
「それに?」
【本題に入る前にお流れなんて、芸がないでしょマーク?共闘するか、しないか、簡単な問いなんだから。あまり焦らすと、こちらも今度は止めないよ?】
勇者マークにだけ、心に語りかけるマトに思わずぞっとするマーク。
「エンリエッサの腹心、その称号は伊達ではないってことか…」




