鈍痛
コルトを担ぎながらに撤退するノルン。
コルトは勇者によって傷付いた肌に布をあてがい、出血を抑えていたが、ジリジリと肌を刺すような痛みが続く。
邪を打ち払う勇者の聖剣の特性に、おもわず毒づくコルトに、ノルンも労いの言葉を投げかけ励ましていた。
「…慢心していた訳ではないんだよ、ノルン、けして侮りも驕りもなかった。ただ勇者の戦闘力を見誤っただけなんだ…、本当だよ?それにしても傷が焼けるようだよ、聖剣め、忌々しい…」
「えぇわかっていますよノルン、勝負は時の運といいますしね。あまり拗ねないで下さい、それに喋ると傷に障りますよ。ヘビさんの部隊に腕のいい治癒術の者がいたはずです、まずはそこに向かいますよコルト」
ケフッケフッ…
「…うん、そうしようノルン。そういえばヘビさんといえば、例の城主を討ち取ったそうだね、ノルンに楯突いた報いだよ、いい気味だねノルン?」
「コルト少し寝てなさい、体力を消耗するでしょう。ですが私達ですらも囮にして、目的を果たすヘビさんは、時々薄気味悪くもあります。まぁ仲間を悪く言うつもりはありません、あくまでも褒め言葉としてですがね」
「へへ、毒舌だねノルン。…じゃあ少し眠るとするよ、おやすみ」
「おやすみコルト…」
すぐに寝息をたてるコルトに、安堵の笑みを浮かべるノルン。
しかし、時折苦しげに呻くコルトを心配して、さらに速度を上げ、クモやヘビ、サソリのいる天幕を目指していく。
それから数日が過ぎ、勇者達のいるハンベルニア城で動きがあった。
傷の浅い者達が歩哨に立ち、外壁や城内の補修工事をしている中、なんの前触れもなく、空中を飛翔するようち現れた魔国からの使者達。
勇者達の返事の件であろうが、あまりに突飛な事に、勇者達以外の兵士達は、天秤部隊の次は魔族かと、臨戦体制を整え迎え撃つ構えをとる。
「ついてねぇ、天秤部隊の次は本物の化け物がおいでだ。動ける者は武器持ってこい!叩っ斬ってやれ!」
「弱っている時には会いたくない奴らだな、あの数は偵察か?」
「この惨状を見て、勝てると勘違いしたのかもしれない。応援を呼んでる場合もある、全方位を警戒しろ!」
僅かに数騎のグリフォンを従え、先頭には一際大きな半人半竜の人外。
その背中には、業魔将エンリエッサの腹心のマトと、プリメールにプリメーアの姿がそこにはあった。
空中から着地し、悠然と近づいてくるマト達と、数名のオークやトロルの武官。その出で立ちは礼服のような儀礼的な服装であり、戦闘服ではなかった。
マーク達を真っ直ぐと見据え、確かな足取りで歩み寄るマト達。
「こんにちは勇者、それに聖人達。私は業魔将エンリエッサの名代として参ったマトとゆう者だ。二つ名『鉄鎖』の名を冠している、以後お見知りおきを。まずは武器を下げてくれ、我々は戦いではなく勇者達に用がある」
「…よろしく、私はプリメール、こっちは、プリメーアだよ、今日はマトの護衛…、眠いのだから手早くね?」
「ウナナー!」
「勇者、単刀直入に聞く。リーゼ様よりのお誘い、受けるか否かの返事を聞きに来た。答えは如何に?」
まるで貴婦人のようなドレスを着飾る三つ目の魔族に、それに寄り添うように青のマントとスカーフを巻いている者達。
「ふん、軟弱な奴らに何を期待しているんだマト?私は嫌だね、こんな奴等と一緒になって戦うのは。こいつらが駄々をこねるのなら、この話はお流れでいいじゃない?」
フリルをふんだんに使った衣服を身に纏う、半人半竜の者は、勇者達に対し露骨に不機嫌な表情をみせていた。
「もし、嫌と断わったらどうなる?」
勇者は仮定の話をすると、マトと名乗る魔族と瓜二つの者が答える。
「…決まっている、私とこのプリメーアが、王国を襲った帝国軍の末路の再現を、してやるだけだよ。この城の中で…」
おさらくは二つ名持ちの魔族の者が、妖しく笑いながら、反応をみていた。




