傷痕
損壊し、城内のあちこちから煙がくすぶっている。そんな状態のハンベルニア城内部を探索する勇者一行。
短時間の戦闘のはずなのに、ハンベルニア城守備隊の兵士達の死体が目立つ。
城主の籠っていた尖塔の周りは、さらに激戦を物語るかのように、一段と激しい戦闘の爪痕が残っていた。
嫌な予感のするマークに聖人達、尖塔からは絶え間なく黒煙が吹き上げ、人の焼けた匂いが充満していたからだ。
「城主無事なのか?返事をしろ、城主!敵は後退した、姿をみせてくれ!」
「マーク…、残念だけど城主はもう…。この尖塔の様子からして」
「我らの方だけではなく、こちらにも相当数の敵がいた。死体の数がそれを証明しているが。私も城主探しを手伝おう。彼には世話になったのでな!」
「私は付近の残党の警戒をしますね!ソローいくわよ」
「飼い犬みたいに呼ぶなよリュー、言われなくてもやるさ!」
マークとヤクトバーグ、ネラフィムは尖塔付近の捜索。
リューティスとソロは、付近一帯の警備と役割を決めて行動に移った。
そしてマークは見た。
尖塔の残骸の側には、すでにこと切れた城主と近衛の死体があるのを。
城主の側で一礼し、目を瞑るマーク
「…城主すまない、僕が力不足なばかりに…。オフィーリア将軍とルバルフ将軍には貴方が雄々しく戦ったということを報告すると約束する。貴方の忠節、このマークが忘れません。仇は必ず…」
「武人らしく堂々とした御仁であったのに、悔やまれるな。天秤部隊のコルトとやらにとどめをくれてやることができなかったのが、心残りだが」
「天秤部隊の別働隊がここにいた、という事かしら?私達と戦っていた者達以外にもいたと考えないと、辻褄があわないわよ。強固な尖塔を墜とすには」
「あぁそうだねネラフィ、でもまずは城主と兵士達を…。野晒しはあまりにも酷だ、手伝ってくれるかい?」
「…えぇマーク」
「心得たぞマーク」
簡易の墓標を作り、城主達を埋葬していくマーク達。
遺品を墓に添え、出来るだけ身体を綺麗にしてから、墓穴に埋葬していく。
リュー達も生存者である者達を介抱し、傷付いた者には、城にあったあり合わせの包帯を巻き、応急処置をした。
生存者達も、自分達の主人たる城主を守れなかった事に、言葉数少なく意気消沈気味で、空を見上げていた。
マークは思った。
自分は人々に希望を与える存在のはずが、今や関わる者全てに死を振りまく存在になってしまった事に。
「…僕はこのままで、いいのか?」
「わからんが、サマエル達の野望を阻止せんと、この大陸全土がよからぬ事になるのは確かだ」
「マーク迷うなとは言わない…、ただ貴方は私達と一心同体なの。この先なにが起ころうと、私が側にいる。それはリューやソロ、ヤクトバーグも変わらない。皆で悩み、皆で進もう!」
「ありがとうネラフィ…」
思考の袋小路に陥りそうになった勇者を、笑顔で迎える聖人達。
彼らの行く道は、まだ誰も分からぬままに、事態は進む。




