正義の証明(3)
ノルンの指揮のもと、十数名の天秤部隊の兵士達が次々と人とは掛け離れた、本来の姿へと変貌してゆく。
腕が裂け、脚が分かれてゆく兵士達。
頭が膨張し、目や鼻、口に耳が分かれ、身体の随所に奇怪なマークが浮き出る者達にマーク達は戦慄する。
頭がなく胴体だけで胸に目がある者、顔に象の鼻のような物が生えた者、四本の手に八本足となり多脚生物のようになる者など、サマエルの目指す世界の狂気の片鱗を見た気がした。
「さぁマーク!私達に見せて下さい人の可能性を、我ら人を超えし者達に。軟弱で脆弱な部分を脱ぎ捨て、より洗練された形となった我らに!コルト?大丈夫ですよ、私達二人は戦線を脱けてサマエル様への報告に向かいます」
「…すまないノルン、私が不甲斐ないばかりに、けどサマエル様へは私から、ご報告、するからさ君は、この場に残って対応してほしい…」
心配顔のコルトに、ノルンはその提案を跳ね除け、コルトと一緒にいくことを曲げなかった。
「「さぁ我らに示せ、力を示せ!」」
「糞、なんだあれは⁉︎人を超えた者だと?人を辞めた者の間違いだろ、皆気を引き締めろ並みじゃないぞ!」
天秤部隊の人外達は、変身するやいなやマーク達に踊りかかり、ノルンとコルトの撤退の時間を稼ぐ。
「お前達人は緩やかに滅びる存在だ、それは魔族も同様であり、淘汰された世界の後、サマエル様の世界創造の糧となるのだ。抵抗は無駄としれ…」
「等しく死に絶えよ」
「惨たらしく死に絶えよ」
「塵芥となり死に絶えよ」
「大地に還元され死に絶えよ」
大柄な体躯から想像できないほどの素早さで、肉薄する天秤部隊達。
聖人達も勇者を護らんと、気力を振り絞りながら、攻撃をいなしながら、隙を窺い、必殺の一撃を狙う。
しかし天秤部隊の兵士達は、繰り出す攻撃を物ともせず、怪我や損傷を気にすることなく、勇者達へと迫り来る。
根本の耐久力が底上げされていた。
たまらず聖人達は、一体一体を集中して倒し、数を削る作戦へと切り替える。
「だぁーしぶてぇし、硬いなぁ畜生がっ!こんなんばっかりか?天秤部隊の奴らはか全員よー!」
「ソロ黙って!こいつら動きが不規則で反応しづらいんだから!ネラフィなんとかならないかな?」
「なんともならないよリュー、生命力が段違いなんだから!一体一体潰していくしかないっ、まだ半数以上いるんだからさ!…ヤクトバーグ右いったわよ!」
「そうだろう…よっ!急所であろう箇所を抉り、数を減らすしかないのぉ。骨が折れるが、他に策がない」
聖人達全員が協力してやっとの思いで六体目を始末した頃、勇者は単騎で三体に止めをさしていた。
勇者は許せなかった、天秤部隊の者達を怪物にしたサマエルを、他者を見下し自分達が特別だと言わんばかりの天秤部隊の者達を。
「聖剣よ!醜悪な者達に救いの光をともせ!僕にさらなる浄化の光を、救済者としての役割を示せ、聖剣っ!」
「ぐふぉ…おのれ異端め…」
ドスン…
怒涛の勢いで攻める勇者に、また一人斃される天秤部隊。
そんな勇者に恨み言を言う兵士
「…ククク、我らはサマエル様の尖兵なり、我らの命の灯火は、次代へと受け継がれ、お前達を苦しめるだろう。そして最後に嗤うのは、我々なのだ勇者!お前達の足掻きなど、微々たる抵抗なのだ。大きなうねりの流れに絶望せよ、勇者よ!そして我々の主人サマエル様の…をぐぉっ!」
「サマエル、サマエルと…哀しい奴等だな。お前達こそ勇者としての僕の力、とくと味わえ!サマエルの尖兵など尽く打ち倒すまでだ」
勇者は決意を改め、天秤部隊を殲滅すると、聖人達とハンベルニア城の残敵の掃討と、生存者探しへと目的を切り替えて行動してゆく。




