一筋の光
ハンベルニア城内部での激戦は続く、コルトの聖遺物により、必要以上にアドレナリンを分泌された兵士達が、自軍との戦闘に快楽を見いだしていた。
相対するハンベルニア守備隊は、つい昨夜まで、同じ釜の飯を食べていたハンベルニアの同僚と、血みどろの戦いを演じるのには気が引けていた。
それでも城主の命令を実行せんと、通路の爆破の為の時間を稼ぐため、無理矢理に気勢を上げて、挑みかかる。
櫓の高所から矢を射かけ、ライフル銃での狙撃、長槍での槍衾など、高低差を活かして右へ左へと寝返り軍を翻弄する。
前へ前へと進むことしかできない寝返り軍は、たちまちにその勢いを失い、犠牲者を増やしていく。
コルトはそんな寝返り軍の様子を肴に、ノルンと一緒にのんびりとお酒を嗜みがらに、跳ね橋の上の櫓に籠る守備隊の攻略を思案していた。
「ノルン、ノルン、彼等はとても頑強ね!脳に刺激を与え過ぎると、細やかな対応を失うのが面倒だよ。微調整が難しいのが私の聖遺物の欠点ね、日々精進しないと、サマエル様に叱られる」
「けどコルトはまだ、諦めてないのでしょう?彼等をどう料理するかをさ?」
まるで世間話でもするように、酒屋で飲み交わすような雰囲気で話す二人。
「うん、少し趣向を変えようと思うの!余計な事を考えないように、破壊衝動ではなく、多幸感で彼等を虜にしてさ、幸せな感情を抱かせながらに、殺すのってとても面白そうじゃないノルン?」
「よくもまぁえげつない方法を考えるものだねコルト、けど面白い事は大事だよ。多幸感の代償に、彼等は彼等の隣人達によって、その短き生を終える。異端の末路には相応しいかな」
「でしょでしょ?これで勇者達が現れれば気分爽快なんだけどね。まぁ欲張りは禁物よね、今は目の前に集中しなきゃだよねーノルン!」
先ほどとは別の音色を奏でる聖遺物であるラッパ、清流のような清らかな音色を響かせ、身の内から幸福感を呼び起こすかのような音色。
必死に戦っていた守備隊も、一人また一人と顔を弛緩させ、自分の世界の殻へと閉じこもっていく。
兵士達はうわ言のように、各々が幸せだった時間へと立ち還り、虚空を見つめながらに呟き続けていた。
「やったよ母さん、俺今日から帝国の兵士になれたよ!給金送るよ!これでひもじい思いをさせないよ」
「村一番の娘と、息子の婚儀が決まったんだよ!これほど嬉しい事はないじゃないか!聞いてるか?」
「初孫だってさ、あいつがねー人生わからないもんさ!」
「テユ、あんまり走ると危ないぞー!今日はお前の誕生日なんだからな、欲しがってた帝都の職人のクマのヌイグルミだぞ〜!名前つけないとな」
櫓に籠る守備隊達は、幸せな笑みを浮かべながらに、数を減らした破壊衝動に囚われた同僚達に殺されてゆく。
笑顔のままに、幸福そうに…
「ノルン、人は脆いね。こんなにも感情豊かなのに、感情に囚われて自身を縛りつけてるみたいじゃない?」
「そうだねコルト、人は脆い。それ故に管理しなきゃならないのさ。サマエル様による統制され、規律のある世界でね。おや?コルトどうやらお客様だよ。お目あては私達みたいだ、ご指名だよ…」
薄ら笑いを浮かべる両者に対し、勇者マークとその仲間たちが激昂していた。
天秤部隊の行いを正すように、自らの正義を示すかのように…




