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化物達の理想郷  作者: 同田貫
相反する理想郷
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音色を奏でし者

ハンベルニア城内部は、突如として行動を開始した天秤部隊の攻撃に、防戦一方な有り様であった。


部隊を指揮する糸目の軍使ノルンと、子供のように小柄なコルトの頭上には、天使の輪が浮かび、背中からは黒い羽根をはためかせていた。


城と別館を繋ぐ、長い渡り廊下を挟むように、ハンベルニア城の守備隊が防衛線を敷いていた。

彼等の攻勢を止めることと、同僚の仇討ちに躍起となる守備隊を物ともせずに、ノルンとコルトが無造作に近付きながら、まるで庭に生える雑草を抜くかのように守備隊を斬殺していく。


また一人の守備隊の若者を斬り殺し、今際の際の表情を観察しながらに、ノルンはポツリと呟く。


「これだけ抵抗するという事は、この城がアタリだと自分達で言ってるようなものですね。度し難いな、実に愚かしい行為だ。何故他者の為に、自らの命をなげうつのか?敵わないなら逃るか、降伏すればいいのに、それが実に興味深いのですよ。ねぇコルト?」


したり顔なノルンは、思わず同僚であり、仲間でもあるコルトに質問してみるのだった。


同じ刻を過ごした同志にむけて


「私が思うにねノルン、人という種は、自分達の希望や可能性っていうのを、後生大事にする種族なのさ。絶望する、その瞬間まで彼等は諦めないのさ。だからその心を折ってやればいいのさ、抵抗する気も起きないように。そして如何に罪深い行為なのかを、理解させるの」


「具体的には何をするのです?」


意地の悪い微笑みを浮かべるノルンに対して、どこまでも嬉しそうにこれからする事の説明をするコルト。


「ノルンも意地悪だね〜、こうするのさ、いつも通りに!」


コルトは懐から、小さなラッパを取り出すと、仮面を頭上にずらしてから、それを勢いよく吹き鳴らす。


ラッパからは、不協和音のようなおぞましい音色が響き渡り、辺り一面に木霊しながらに反響してゆく。

彼女のラッパの特性、それは音色を聴いた者の心の均衡を崩すという、厄介極まりない特性であった。



もちろん耐性のない者達には効果覿面だが、耐性のある者には効果が薄い。


それが彼女の持つ聖遺物であった。


「前方の兵士諸君!二人一組になり、互いに殺しあいなさい!後方にいる兵士諸君は、前方で残った者の後始末ね、それが済んだら君達は、他の守備隊の攻撃よ。私達に協力!はい、じゃあ始め、始め〜時間は有限だよ」


「あぁそれと、近くの君と、そこの君は道案内してくれる?この城無駄に広いから疲れるのよ。もちろん、勇者達のいる場所にだよ?」


吹き鳴らした音色にコルトは、破壊衝動と殺人衝動を呼び覚ます音色を織り交ぜて聴かせた。


周囲一帯は、同じ軍同志での惨殺劇が始まり、無機質に作業するかのように、粛々と行動してゆく。


ザシュ、ドシュ、ガンガン、ドブッ


様々な鈍器や、鉄製の武器が擦れる音が響き渡りながら、鎧の砕ける音に、血が滴る音、それらの雑多な音もやがて小さくなり、最後は矢が空を切る音と共に、前方に広がる防衛線は壊滅した。


一人も生存者達を出さずに…。


後方の守備隊は作業が終わると、隊伍を組みながらに、自分達の守るべき城に四方八方へ散らばっていく。


「相変わらず見事な聖遺物だねコルト、自らの手を汚さずに、他者の意識を捻じ曲げて操るなんて、愉快だね」


「ノルンの聖遺物のほうが逸品だと思うな、私のとは勝手が違う代物でしょ?まぁこれで段取りは整ったね。勇者は甘ちゃんだからさ、城内に異変が起きたなら彼はきっと仲間と共に来る、文字通りすっ飛んでくる」


「偉い自信だなコルト、まぁ甘ちゃんだというのは同意だがね。彼は他者の命が無為に散るのを良しとしない性格だ、必ずこの場に来るだろうさ。とても御し易いと思うのだよ私はね、他者に執着する彼が」







天秤部隊の二人が手ぐすね引く思いで、勇者や聖人達一行の到着を待つ頃、ハンベルニア城内は、混乱の渦中にあった。


自軍が自軍にむけ攻撃されるという摩訶不思議な状態であったからだ。



「サリューの隊が裏切ったぞ!奴らこっちに攻撃してきたぞ、城主様を安全な場所へ!素早く後方の退路を確保せよっ、敵に気取られてはならんぞ!」


「どうなってやがる?天秤部隊を攻撃してた奴らが、どうしてこっちを狙う?」


「サリュー隊の他に、ボロゾフの隊にトットビアの隊も攻撃している?馬鹿な、彼等は永らくハンベルニアに駐屯していた最古参だろうに、確認せよ!」


「何度もしていますが…、事実です」



慌てふためく士官達に喝を入れるべく、城主は声を大にして、机を叩く。


「落ち着け、おそらくは敵の術か何かの類だろう。事態は最悪の一歩手前だが、詰んだわけじゃない。まだ手はある、勇者様方が脱出なさる時間を稼ぐぞ!抜け道は健在か?」


「健在でございます!バリゲートを構築いたしますか城主?」


「いや、それには及ばん!一角を爆破し、道を封鎖するのだ。爆薬の準備をいたせ、敵の足止めを最優先とせよ」

「ハッ!」



天秤部隊が動く中、城主達も意地をみせようと奮起する。




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