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化物達の理想郷  作者: 同田貫
災いを呼びし者
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去る者、残る者

会議が閉会した後、会議場には業魔将達とリーゼだけが残っていた。

攻め手と守り手の将を決めるべく、意見が割れた時に行う伝統行事クジ引きを行うためである。


「ぬっ…また留守番であるか」

「居残り組か、仕方ない」

「ようやく私の出番ね!」

「なかなか原始的なやり方ね…」


先端にある赤いアタリの紐を引いた、リーゼとエンリエッサが攻め手。

無地の白紐は、バンネッタとイシュガルが守り手で決定した。



こうして夜中のうちに軍団の編成が完了し、明朝日の出とともにイベルタ皇国を目指して、出陣を開始した。






イベルタ皇国は、天魔戦争で人族が勝利して以来公然と魔族を売買する国家の一つであった。


定期的に魔族狩りを行い、捕らえた魔族を商品として扱う。この方針は、自分達の宗主国でもあるネルト帝国の方針であり、政策の一部でもあった。イベルタ皇国以外にも追従する国は多くある。


このことが魔族の御使いの逆鱗に触れたことは間違いなく、今回山脈より攻勢にでた魔族達の対策は難航していた。


「陛下、今回の魔族達の軍勢はこちらの皇都を狙っているのは間違いありません。籠城策が最上かと考えます。」


「聖人様を屠る化物がいるのだぞ?早期講和こそが残された手段です!」


「許すわけなかろう?我々の所業は知られている。城門を抵抗なしに開け放てば、屍の山が築かれるだろうさ」


意見の一つ一つを聞き、やがてこの国の指導者であるハイネン・イベルタ皇王は、重い口を開けた。



「皇国の全兵力を皇都に集めよ!総力戦だ、同時にロート山脈へも攻勢を仕掛ける。半数をあてよ、また聖人様にも協力を仰げ、ボルドー卿にはロート山脈へ、フランチェスカ卿には皇都防衛に参加してもらいたい。死中にこそ活路が開ける。全軍奮起せよ!今こそ北の大地に平穏を取り戻す好機ぞっ」


皇王自らが檄を飛ばし、兵や将軍、列席者達を鼓舞している。


聖人の二人は、今生の別れをするようにお互いの顔を見つめ、武運を祈りあっていた。


「此度の戦は激しいものとなろう、決して諦めるなよフランチェスカ、己の命を投げ打つ覚悟で任務にあたれ!天使様方のご加護があらんことを!」


「あなたもねボルドーの旦那、魔族達との戦いは私達の宿命だもの。また再会できたら貴方の秘蔵のお酒を頂戴ね!天使様方のご加護があらんことを!」


「わっはっはっは!お主の軽口もしばらく聞けなくなると思うと寂しいな。では達者でな」


「ええボルドー行ってらしゃい。私も最善を尽くすわ!またね…」



皇国内の総兵力はおよそ十万人、その約半数の五万人もの大軍団がロート山脈攻略へと出陣した。全ての禍根を絶つべく、北の大地の平穏という大義名分を掲げながら。




夜明け前の薄暗い闇の中の行軍は、不安を駆り立てる。それは皇都に残る人々も同様であり、松明の灯りだけが安らぎを与えているようだった。


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