幕間 星詠みの巫女の名前
星詠みの巫女
その存在は、帝国の建国以前よりも前に確認されており、御使いや勇者とは違う存在であった。
ネルト帝国建国以前より前は、大陸各地を渡り歩き、様々な場所で占いをしながらに、人々の生活の助けをしていた。
そんな噂を聞いた、時の大天使サマエルは、星詠みの巫女に帝国の国家建設の手伝いを願い出て現在に至る。
当時の大陸は、人族の国々が群雄割拠し、争いの連鎖が続いており、人々は
戦争に疲れ、英雄の出現を望んだ。
そんな中で、サマエルと共に才覚を見出し、初代の皇帝に導いた者こそが、現在までも脈々と血筋が続く、ネルト家の者の一人であった。
当時のサマエルは、神の代行者としての使命に燃え、そんな彼女の姿に星詠みの巫女自身も元気をもらっていた。
当時の初代皇帝の計らいにより、サマエルと星詠みの巫女は、帝国の意思決定兼相談役としての地位に就いた。
しかしいつの頃か、サマエル自身が庇護した人々が、病や戦争、寿命でその生を終える事に、虚無感を覚えだんだんとその思想は捻じ曲がっていった。
「建国当初の頃が懐かしいなサマエル…、あの頃の君は輝いていたよ。私と君は、一体いつから道を違えたのか、今はもう遠い過去のことのようだよ。君は人族の可能性を諦めたが、私は見限れない、同じ光の神の同胞として…。」
「この館にいつも来てくれていた君は、だんだん私すら遠ざけてしまった。警護とは名ばかりの、監視役の天秤部隊の者を数名置いて」
何人もの占星術の見習いに、星詠みについて教える講義の合間の休憩時間に、思わずポツリと呟く星詠みの巫女。
彼女の屋敷は、学びの学舎として広く知られ、知識を求める者達がこぞって彼女を訪れる。
そこに地位は関係なく、等しく彼女の教え子として、彼女の側近と一緒になり、占星術はもちろん、算術や歴史、読み書きや倫理、道徳など自身の経験を惜しみなく教え子達に教育する。
するとまだ休憩時間だというのに、数名の星詠みの見習い巫女達が、巫女に面会を求めてきた。
「貴方達、午後の講義の予習かしら?関心ね、どこがわからないのかしら?さぁ見せてちょうだい。昨日はちょうど、難解な部分だったからね」
「「星詠みの巫女様」」
覚悟を決めた女生徒の並々ならぬ気迫にたじろぐ星詠みの巫女。
それでも優しく対応する姿勢を崩そうとはしなかった。
「どうしたのかしら?」
「巫女様の本当のお名前を教えて下さいませんか?巫女様と呼ぶのはどうにも他人行儀に感じまして、…ご無礼は重々承知です。けど知りたいんです」
「あぁなるほどね。いいわ、教えてあげる!少し側に来てくれるかしら?」
「「はいっ!」」
「私の名前は、******と言うの。今はもう失われた言語なのだけれどね、そんな風に聞いてくれたの随分と久しぶりなのよ。だから皆には内緒よ?」
「はい!******先生!」
「ふふ、元気で宜しい!午後の講義もお願いするわね、宿題のとこ当てちゃうから期待しててね」
昼下がりの一室で、どこまでものんびりとした時間が過ぎていった。




