今後について
下層部の大会議場は、階段状に広がる多目的な空間であった。
その室内はエンリエッサの号令のもと、各部族の代表や長老達、戦士長、業魔将達の副官、亜人達の族長などこの魔都の主要メンバーが揃っていた。
数年に一度魔都についての方針を決める議会などはあったものの、ここまで大規模なものは初めてのことだった。集まったメンバーは、どこか落ち着かない様子で開始の時刻を待っていた。
やがて業魔将と御使いであるリーゼが会議場に入室したことで会議が始まった。
「ご静粛にまずは集まったメンバーに、今後のことについて御使いであるリーゼ様の考えを聞いてもらう。その上で意見のある者は考えを述べてほしい。リーゼ様お願いいたします。」
「えーおほん、皆集まってもらい感謝する。今代の御使いであるリーゼだ。天魔戦争で我等魔族が天使達に敗北して以来、長い時が流れた。今や人族に比べ、我等魔族の総数は当時の十分の一程にまで減少している。このまま人族や天使達との全面戦争となれば、民達にも甚大な被害がでてこの魔都イールガルも無事ではすまないかもしれない。一部の力ある者達が残っても、周りに魔族の同胞がいなければそれは敗北と変わらない。そこで私は、敵対する国や勢力に対しては徹底的に断罪を行い、融和や友好的な関係を望む者達とは手を取り合う未来を望んでいる。もちろん私達魔族を捕虜とし、公然と売買するレベルタ皇国と、その背後にいる帝国は許すつもりはない。同胞を救出した後、地図上より消滅させると約束しよう。皆の考えはあると思うがこれが今私の考えていることだ。」
長い演説の後、会議場は静まり返っていた。ここまで具体的に考え、我々魔族を庇護し導く指導者がいただろうか?
どこか感動すら覚えその余韻に浸っていた。やがて意を決して一人の部族の代表が口を開いた。
「発言をお許しいただきたい、御使い様の考えはわかりましたが、長い間敵対していた魔族と人族が理解し合えるでしょうか?」
「御使い様であるリーゼ様の考えを理解せぬ弱小種族共が、我等がお前達を食ってやろうか?」
「私達ラミアの民は、御使い様の考えに賛同いたします。同胞救出の際は是非とも私達の戦士をお使い下さいませ。」
途端に会議場は、様々な種族達の意見や主張が飛び交い、なかなか収集のつかない事態となった。やがてエンリエッサが咳払いをしつつ手を挙げ、場内をなだめた。
「今はまずイベルタ皇国を攻める部隊と、イールガル及びイリトバ城塞を守備する部隊を選出することが急務である。当然こちらが攻めれば、あちらも相当数の攻め手が皇国より出陣するだろう。そこでわだかまりを無くすため、各軍団より数百名ずつ精鋭を選出する。攻め手を少数精鋭で固め、ここに残る守備側を厚くするというのはどうだろうか?」
「うむ、その案に異論はないな。」
「折衷案としては良いと思うが…」
「なるほどね〜なるほど…」
残りの業魔将と、御使いであるリーゼ、各部族の代表達もエンリエッサの案に納得した様子を見せる。
そして事態は加速度的に動き出し、波乱に満ちた会合が閉会しようとしていた…




