渦巻く策謀
ネルト帝国、帝都フェルテネーブルでは、勇者達が行方をくらませてから数日経った頃、大天使と熾天使達の会合が行われていた。
日光が燦々と煌めく大聖堂のホールの中で、お互いの意見を出し合っていた。
「サマエル様、勇者達の気配は捉えられませんか?ロート山脈へと向かう途中、ぱったりと気配が途切れたのです…。マークの守護天使としての責務を果たす途上で、なんたる不覚!私の不徳の致すところです、どうか私に罰を!」
鬼気迫る勢いで、大天使サマエルに迫る天使ナナイ、彼女なりに思うところがある心優しい天使。
そんなナナイを諭すように落ち着かせる、大天使サマエル。
「まぁ冷静にナナイ、まだ勇者達がやられたわけじゃない。きっと御使いの仕業だと思うが、まだ悲観する時ではない。わかるねナナイ?勇者や聖人達が柔じゃないのは、ナナイがよく知っているところだろう。状況を整理しよう…」
「…はいサマエル様、申し訳ございません取り乱しました」
「しかし困りましたな、我々の探知をかいくぐる場所に幽閉されたとみて、まず間違いないでしょうな。クロスフィア、なにか策はないか?」
シルベスタが、同僚であるクロスフィアはお手上げのポーズをとってみせた。
「隔絶空間、ないしは次元と次元の狭間、もしくはこの世界とは別の世界に飛ばされた?いや考え過ぎかな、やはり隔絶空間に囚われたとみて、間違いないでしょうサマエル様」
「うんそうだろうねクロスフィア、となると発見は容易じゃない。勇者達が自力で脱出するかしないと、私達ではなんとも言えないな…。この件暫し私が預かろう、シルベスタにナナイご苦労であった。クロスフィアは少し残るように、別件でちと用事があるのでな」
「…はい、サマエル様どうかマーク達をお願いいたします」
「かしこまりました!」
ナナイとシルベスタを下げさせ、クロスフィアとサマエルの二人きりとなると、お互いに邪悪な表情となる。
「…どう考えるクロスフィア?勇者達に御使いが妙な入れ知恵をしていると思うが、もしも核心を知ったならば、容赦はできそうもないな…。少々早いが、無理矢理にでも退場していただこうか。例の計画は滞りない、クロスフィア?」
「はいサマエル様、概ね順調であります。天秤部隊の人造天使達が、よく働いておりますので、予定よりも進みがいいほどです。あとは細かな調整と、動作確認になどでしょうか」
「結構、結構!楽しみねクロスフィア、勇者や御使いがどんな死に顔をみせるか!双方消耗したところで、止めといきたかったけど、今代の御使いはなかなか勘が鋭い厄介者ね。間接的な始末が望めないのなら、直接的に手を下すまでよ」
「まったくですねサマエル様、全てはサマエル様の御心のままに」
かつては、熱心な神の代行者として責務を全うし、励み続けたサマエルだが、永き時の流れの移り変わりにより、その正義の心は著しく歪んだ。
大陸の指導者としての地位に固執し、邪魔者と決めた者達を、蹴落とし、粛清しながらにその地位を盤石なものとしていたのだ。
歪んだ正義の狂人が、勇者と御使いそれぞれに牙を向けたのは、ちょうどこの時からであった。




