それぞれの主張
嘲笑を続けるリーゼと業魔将達、互いに相容れない者同士の、微妙な温度差がこの場を支配していた。
「あー笑った笑った、客人の前で失礼だったわね。それでマーク君、君達はこれからどうしたい?我らと決闘でもするかい?それともお茶会でもしながら、帝国を懲らしめる策でも一緒に考える?まぁ私としてはなんでもいいよ、理想の為の通過点と考えているからさ」
リーゼは戯けた態度だが、瞳は真剣そのものだった。
マーク達はより一層の警戒をしつつ、リーゼからの返答に苦慮していた。
勇者が渋るのを見かねたネラフィム卿が、御使いに対して提案をする。
「御使いリーゼ、私達の、いや私個人の提案だ。人族と魔族で停戦協定をむすばないか?争いあうだけの世界が嫌なら、少しはマシになると思うが…」
その提案を、エンリエッサ始め、業魔将達が却下し、自論を展開する。
「まったくネラフィム卿、君の頭はお花畑かな?そんなこと企んでも、大天使サマエルや熾天使達に嗅ぎつけられて、色々工作してくるに決まってるよ。彼等にとっては、邪悪な敵として私達魔族に、徹底的な悪を演じてほしいのさ。私達はいかに高潔で、気高く、聖なる存在たらんとする為にね。わかったかい?」
「…そんな事、やってみないとわからんではないか業魔将」
自分の自論を簡単に崩されたネラフィム卿に、さらなる追打ちがかかる。
「よいかな聖人、天使達も我ら悪魔も本質的なものは同じだ。信奉する主の為、狡猾に、残虐に、強かに、傲慢に、横暴さを併せ持つ人外の者達だ。常識の枠の外からの、未知なる来訪者、それが我らなのだ。そんな些細な事でも、奴等は事を大きくし、事態を深刻化させる手段を持つ宿敵達だ。軽はずみな事は止めてもらいたい。奴等の口実の種になる」
スラスラと自論を展開するイシュガルに、対抗しようと、バンネッタも言い淀んでいたが…
「…まったくその通りだ、俺も今正にその話を言おうとだな、うん」
イシュガルの視線に黙殺され、渋々と自重するバンネッタ。
「じゃあどうすればいいの?私達に道を示してくれるの?御使いリーゼ…」
「落ち着けネラフィ、焦りは禁物だ時間はまだあるんだから。それになリーゼ、私はお前達が暗に、天使様方が黒幕で、お前達が正義のような発言が妙に気になるのだが、何故なんだ?」
マークは真剣な眼差しを、ただただじっと不思議そうに眺めるリーゼ。
「君はやっぱり面白いなマーク。別に正義とか悪かなんて、どーでもいいのよ。そんな薄っぺらい理念なんて、肥溜めにでも捨ててきてくれない?臭いから…」
「そーね、じゃあ歴史の節目節目に現れては、姿形を変え、力ある者達を争わせ、一定数以上にならないように仕向ける者達がいるって知ったら、君はどう考えるのかな?」
淡々と事実を述べるリーゼに、マークも言葉を選び、対応する。
「それがサマエル様だと仮定し…、不自然に多い歴代勇者や聖人の戦死に、魔族側の御使いに実力者達も、同時期に戦死という文献が多く散見されている。つまりは邪魔者を排除している?そう言いたいのかリーゼ…確かに辻褄があうな」
頷くリーゼに、マークは事の重大さにしばらく茫然自失となっていた。
「次の標的は、僕らと君達という事かい御使いリーゼ?育てて、都合良く使い、最期には使い潰して、また次を探す。また同じ事の繰り返しを…?」
「…そんな、そんな事って。天使様方は何を考えていらっしゃるのよ」
「私達の信じる道は、何処に…?」
「…なんともまた」
「クソッ!」
「ご明察〜!ようやく理解した?」
パチパチと渇いた拍手を送り、リーゼは意地の悪い笑顔で彼等を観察していた。




