魔都を目指して(3)
都市リーゼガルドを横断し、勇者達一行はイールガルに向け、さらに魔族の領域を奥へ奥へと進んでいく。
辺りは木々が生い茂り、視界の悪い悪路を前へ前へと。
その行商隊の荷馬車隊を、上空から監視するメメイ率いるハーピーの一部隊。
変わり映えのしない退屈な任務に、メメイ隊ははやくもぶーたれていた。
「メメイー、あいつら本当に敵なの?ミミイは疑惑ありとか言ってたけどさ、本当に本当なの?」
「疲れたーだるいー、暇だよメメイ」
部下のハーピーが愚痴を呟く中、メメイにしては真面目に任務をこなしていた。レジーナ隊長に褒めてもらいたいという、下心もあったが。
「ミミイ姉は心配症だけどさ、野生の直感はなかなか侮れないんだよ。第六感みたいなものだよ、まぁなにか嗅ぎつけたんだよ。それにもし敵なら…、私達にとってはいい暇つぶしさ。気長に待つよー、忍耐も必要だよ」
「うーん、貧乏クジだよ〜」
「はいはいぼやかない、定時連絡しといてね!サボると後が怖いよー」
ぼやき続ける部下達を、宥めながら、監視作業を続けるメメイ隊。
その内の部下の一人が、小型の水晶球にむけ通信をいれる。
「うぃー、《え〜、メメイ隊より司令部司令部、例の荷馬車隊に特に動きはナシ、現在はロート山脈に向け移動中?なれど監視作業を続行中、どーぞ!》」
《こちら司令部よりメメイ隊、引き続き作業を続行せよ!現在荷馬車隊及び、疑惑の従者達の解析作業遂行中、続報をまて。通信終わり!》
「あーい…」
堅苦しい通信官との連絡を終え、どっと疲労感を顔にだすハーピー。
自由を愛する種族というハーピーだが、興味の移り変わりがはやいとも言える種族でもあった。
そんな間の抜けたメメイ隊からの通信を聴きながら、エンリエッサとマトは、大型の水晶球に映る、例の行商隊を観察している最中であった。
「実像がぼやける⁉︎」
「あれはまやかしだ、本命はあの影に溶け込んだ虚像とみた!」
「いや違う違う、枠に囚われている」
エンリエッサの数人の弟子達が、例の従者達にかけられた隠蔽術や変装魔法を見破るのに、四苦八苦してる頃。
つぶさに観察を続ける二人。
「なかなか手の込んだ術式を重ね掛けしているわね、それだけにこいつらが怪しいって、自分達で言ってるようなものね。周囲の者達は本物の行商隊に間違いないわ、となるとこいつらは…、魔力の量や質を鑑みるに」
「勇者と、その取り巻きの聖人である可能性が濃厚ですね。ただ、なぜ彼らがこんな真似をするのか、それが疑問でなりませんエンリエッサ様。どのように対処なさいますか?」
思考にふけるエンリエッサを、ただじっと見つめ解答を待つマト。
「御使い様に用があると?それを我々がみすみす見逃す可能性に賭けた?と、言いたいのマトは?私がそんな真似を許さない、尊ぶべきお方であるリーゼ様には触れさせやしない!」
「それは私も同じです!攻撃して化けの皮を剥がしますか?ミミイとヌメイの隊が稼働可能ですが」
「…ここは奴らに一芝居うってあげましょうか、奴らを隔絶空間にご案内してあげよう。行商隊全部ではなく、ピンポイントで範囲を指定するよ」
上手く切り抜けられた事に勇者達は安堵しながらも、臨戦態勢を崩さない勇者マーク一行。
獲物を持つ手はじんわりと汗をかき、御使いと接触する機会を窺う。
ロート山脈の、噂に名高い霧の結界を通っている最中に異変は起きた。
魔族の番兵や兵卒がひしめき合い、行商人達の値引き合戦の喧騒がなくなり、それどころか辺りの風景が様変わりした。
一面白黒のタイルが広がり、空は赤い半月が浮かんだ不気味な空間。
行商隊を率いる長殿や、荷馬車隊を囲む大勢の従者も消え、その場にはマーク達だけとなっていた。
もちろん変装の魔法もいつの間にか解除され、本来の姿になっていた。
そこに聞き覚えのある声が響いた。
「…私を捜してたのマーク?貴方達がどうして我らの領域にいるのか、まずはそこから話してくれる?」
豪華な革張りの椅子に腰掛け、マーク達を値踏みするように見回す、御使いリーゼがそこにはいた。




