巫女と聖女と
星詠みの巫女が退出し、別の部屋へと瞑想に向かう途中に、廊下で佇む人物がいた。その人物こそ、星詠みの巫女と対を成す存在であり、中央教会の象徴たるイズマイル聖女その人だった。
イズマイル聖女の内に潜むサマエルの存在を知りつつも、普段ならあくまで聖女イズマイルとして、対応する星詠みの巫女なのだが、今回に限っては大天使サマエルとして対応した。
「星詠みの巫女、貴方一体どういうつもりだい?勇者を唆して、御使いに会わせるよう仕向けるなんて、あんたの狙いはどこにあるんだい?」
「サマエル、君とは長い付き合いだ。別に狙いなんてない、ただ歴代の勇者達が非業の死をむかえ続ける運命に、僅かばかり情が移っただけ」
「ふーん?中立な立場の貴方にしては、随分と力技のように感じたけれど?まぁいいわ。貴方と私の領分の線引きぐらいはできるわよ、互いに不可侵の約束は守るさ。ただね、もし御使いに勇者が籠絡され、私達に反旗を翻したら、私は手段を選ばないから…」
「待てサマエル、君こそクロスフィアと一緒に何を企み、何を望む?自分に意に沿わない者達を秘密裏に処理し、空の器に紛い物の魂を入れて神にでもなったつもり?光の神への叛逆に他ならない!全てをここで告白なさい」
「…へぇ、どこで知ったかは知らないけどさ驚きだよ。別に企みなんてないさ、光の神の御意志のもと、世界は一度再生されるべきだと思わない星詠みの巫女?取捨選択のふるいにかけ、真に救済される者達を選別するべきさ」
「…君は一体何を考えている?」
「全ては光の神の御意志さ、なにも心配はいらないさ。盲目的な信徒もいいが、私達は次なる目的地へと旅立つべきと考えているのさ」
「もしもだサマエル、その考えが私達光の信徒に害なす考えなら、私は君の思想を止める義務があると考えている。君は歪み始めているのではないか?」
「ひどいなぁ、敬虔な信徒の一人であり、光の神の僕たる私を異端扱いか。まぁ例えばの話さ、例えばの。それぐらい状況は逼迫していると話してるんだ。」
暫しの間、無言で睨み合う二人。側仕えの者が、廊下に着くまでの間その時間は、どこまでも長い時間であった。
ルバルフ卿の求めに応じ、東西南北の各方面軍のトップが帝都に揃い踏みの中、勇者達も交え、話し合いがとりなされている最中であった。
当面は事態か沈静化するまで、帝位をそのままに引き継ぎ、政策や方策の決定は、有力者達との合議制へとシフトした。一極集中は、ルバルフにはとても気が重いからであった。
最大の焦点たる、勇者達の移送手段が皆目検討がつかない現状であったが、
「近隣の国々からでる、交易品の隊商の荷物に偽装するのはどうだろう?」
南の大将軍の何気ない一言に、全員が賛成をあげ、実行にうつることになる。




