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悪役令嬢に幸あらんことを

作者: 舛花
掲載日:2016/03/21

よくある転生もの、のはず。

ここは学園の大広間で学校行事ラストの大舞踏会。

そこに現れたのは・・・。


私は今修羅場のど真ん中にいます。


何故ならば、学園の大ホールの中央でローゼリアに突き飛ばされ睨まれているからであります。


ワルツも3曲目になり、相手を変える者や同じ相手と踊り仲良しさをアピールして舞踏会を更に盛り上げようとなる、その時に、です。

会場はシーンと静まり返り、ローゼリアの声が響きわたります。


「何故王子にエスコートされていないの!?」


「・・・は?」


私同様周りの皆様もポカンとされています、そりゃそうです。太陽が東から昇るのが当たり前なくらいのことをおっしゃったのですから。


「だから!なんで!王子にエスコートされてんのは私で、あんたじゃないのよ!」


公爵令嬢がホールで平民の娘に向かってのご発言に、周りがざわめき出します。キラキラなご衣装のお嬢様方せっかくの舞踏会を中断させてしまって申し訳ない。

・・・ローゼリア、お言葉が『前世の』に戻っていますわよ?

それじゃお里が知れてしまいますわよね、まだまだですわ。


・・・ええ、そうです、私もローゼリアと同じく転生者です。



ここは魔法と科学が調和されている不思議な世界。その中でも魔力が多い者だけが通える学園『フォースランド学園』

そして、更にこの世界は私が生前にフルコンプした乙女ゲーム『フォースに幸あれ☆恋に幸あれ☆』なのです。

ローゼリアは文字通り悪役令嬢です。王子様の婚約者で私を苛める立場でいらっしゃいます、あ、言い遅れました私ヒロインです。自分で言うと照れますね、やっぱり。


「黙ってないで何とか言いなさいよ!」


「・・・あの、ローゼリアは王子様の婚約者でいらっしゃるので、本日のエスコートも当たり前かと存じます。」


いや、だって、王子ルートには入るつもりも予定もございません。故に元々の設定通り婚約者をエスコートするでしょうよ。

それにね、ゲームの王子はカリスマ性抜群の俺様王子で、欠点は出時の悪さと母親が早くに死んでしまったせいか、周りの人の愛情が理解できないこと。そりゃあ攻略No.1に選ばれるだけのいい男で見目は勿論男らしさと相まったフェロモンが半端なくって。

それなのに!そこにいる王子はローゼリアにしっぽ振ってる、ただの正統派ワンコ王子じゃないですか。カリスマ性?フェロモン?ナニソレ美味しいの?状態ですよ、大変申し訳ありませんが辞退させてください。元々見目はいいし、王子好きだったんだから、元サヤでよろしいでしょう。



「違うでしょ!今日は逆ハールートを目論むアンタを懲らしめる大事な日でしょ!!」


「・・・はい?」




周りの皆様と一緒に再びポカーン、です。



「だから!アンタは王子にエスコートされて有頂天になっているところを、ね!」

「ローゼリア、僕は君をエスコートしてはダメだったの?君はOKしてくれたよね?」

「王子は黙ってて!」

「・・・はい」



黙っちゃうのかー!意気地無し!これで国王になれんのか!?と心の中で罵倒する。



「他のキャラたちもどうしたのよ!なんでアンタの近くにいないのよ!」

「あ、あの?ホカノキャラとはなんですか?」

ちなみに誰にも転生者とは言っておりませんので、ここは白を切り通します。

「はあ?弟とか騎士とか魔法とか!」

「そ、それぞれの相手をエスコートされているからでは?」

「だ・か・ら!私の言ってることわかってる?やっぱり電波だから、通じないのかしら?」



そんなことはありません。立派な電波にお育ちなのはローゼリアです。



「いいこと?私は幼いころにここはゲームの世界だと気がついてバットエンドを回避することにしたのよ」



奇遇ですね、私もです。私の場合はバットエンドではなく『ヒロインぷぎゃー回避』ですけど。



「ついでに電波なアンタの行動を追及し懲らしめて私は皆からの愛情を注がれるけど、皆決められないの。その時困った私に手を差しのべてくださる方が現れるのよ!」



へえー。(棒読み)



「引き取った弟に優しさを振り撒き」



え?家庭環境が嫌で、すでに家出されてますよね?



「魔法さんには慈悲の心を持って」



は?めっちゃ嫌われてますよね?しかもローゼリアのせいで人間不信になりかけましたよね?



「騎士さんに人の暖かみを」



えーと・・・現在の二つ名が『悪魔の近衛騎士』ですが?



「キャラたちの愛が欲しくて必死にイベント起こそうとしても無駄なんだから!」



欲しいのは一人でいいので、イベント無くてもかまいませんが?

むしろそうなるようにさせていただきました。

でも各キャラのことは全てローゼリアがしたこと。

恐らくはWeb小説の悪役令嬢みたいなことをしたかったんだろうけど、なんでこんなになっちゃうのか?くらいにひどくなってた。

おまけに学園で出会う前にされちゃったんで修正不可能になっちゃってる。

ヒロイン補正を出して出来るだけトラウマを無くすようにはしたけれど。

彼らの辛そうな表情は今思い出しても心が痛い。

結局ゲームとは違って、友情と恋の中間みたいなかんじではあるけど逆ハーにはなってない。

・・・まあ、なれるはずもないんだけどね。



「の、はずなのに!なんで、なんで何も無いの!!」



感情の高まりと共にプルプルと震えてた手が上がると令嬢アイテムの扇と一緒に降り下ろされた。すんごい高価そうな羽根扇、もったいない。

身分上、避けてはいけないだろうから、覚悟していた痛みがやってこないので目を開けてみると、おっそろしいほどの殺・・・冷気をまとった男性がローゼリアの腕を掴んで私の前に立ちはだかっていた。



「もう、いいか?」

「な、なによ!アンタ誰?」

「ジーク先生・・・。」

「サシャに黙ってろと言われたから黙ってたが十二分に我慢した、もう限界だ。これ以上私の妻を侮辱されるのは許さない。」

「ジーク先生ですって?フルコンプの隠しキャラじゃないの!確か学園の奥でずっと研究ばかりしているエルフの講師!え?なんで、ここに?っていうか、こんなにエロかったっけ?」



最後のとこだけ激しく同意します。

ローゼリアが設定を変えようとしたせいなのか、ヒロイン(私)がゲーム攻略しなかったせいなのかわからないけど、王子にあったカリスマ性やフェロモンがジーク先生に移ってしまったかのようにものの見事なエロフに大変身。

おまけに隠しキャラなんてのも無くなってて、私が幼少時からのお店の常連さんなのだ。



「随分と公爵令嬢にしては下品だな。これがこの国のレベルなのか?」

ずっと倒れて座り込んでいた私に手を差しのべてくださるのは、アルフレッドさん。何を隠そうFDの追加キャラだったりする。こちらも私の家の常連さまでエロフとは知己の仲。

「私の妻に触れるな、汚れる。」

ローゼリアの腕をねじりあげ近くの近衛騎士さんに渡したエロフは、アルフレッドさんが助け起こす前に抱き上げて軽く私にキスをした。やーめーてー公衆の面前ですよー!



「先程から聞き捨てならぬ言葉が聞こえるが、サシャがいつ貴様のものになったというのか?婚約すらしてはおらぬだろう。」

「呼び捨てにするな。婚約ならずっとしていた、講師と学生だから公にしなかっただけだ。」

な?と言いながら蕩けた顔でまたしてもキスをしてくるエロフ。

なんでだ?どこにエロフスイッチがあったのか?

「ほう?婚約してたとしてもそれだけでは妻、とは言わぬが。」

「先の満月の夜にエルフの里で正式に妻とした。晴れてサシャは身も心も私のものになったのだ。」

いやぁあ!人前でなんてことを!しかも話ながらあちこちキスを降らせてくるよ!このままだと色々ヤバいことになるから!



「ちょ、ちょっと!隠しキャラは私のことをっ!」



ナイス!流石空気読まないローゼリア!いいタイミングで割り込んだ!



「貴方たちが好きになるのは私でしょう?」

「何を言ってる?会ったこともない相手を好きになるわけがなかろう。ましてやサシャに危害を加えようとしてた者をか?馬鹿も休み休み言え。」

「だから、呼び捨ては止めろ。さんざん学園で妻の悪口を噂したり、何もしていないのに全て悪いことは妻のせいにし、挙げ句の果ては階段から突き落とされようとして、逆に庇われて妻が大ケガをした、その張本人に好意だと?」

「私は悪口など言ってない!単なる噂話でしかないわ!階段から突き落とされようとしたのも事実だし!」

「公爵令嬢たるお前が言えば、噂はどうなっていくかなどわかることだ。何が単なる、だ。しかも貴様が突き落とされようとだと?俺の目の前で起きたことを見抜けぬほど力がないと言うか!謀るでないぞ!」

「おい、そこのボンクラ王子」



感情のない声でエロフ先生が王子を呼びつけます。これはヤバいくらい怒っておりますよ、今まで見たことのないレベルですよ、それにしてもボンクラ呼ばわりはいいのか?王子。

「お前の婚約者の処罰を希望する。妻にしたことは絶対に許さない。納得出来るものでなければ今後この国のエルフの加護は無いものと思え。次期エルフの長となる私の言葉に偽りはない。」

「処罰って私は何も悪いことはしていないのに!」

「必ず僕も言葉に偽りはなくいたしましょう。直に婚約者では無くなるでしょうから、納得いただける報告が出来るはずです。」



さっきまでのボンクラ振りはどこいった?エロフの言葉で目が覚めたの?そんなに怖いことを言っちゃったのエロフ。

近衛に脇を挟まれて引き摺られるようにホールから出ていくローゼリアは電波なまま未だに納得してはいなかった。

「どうして?皆からの愛情は私のはずなのに?エルフの里に行けるのは私なのに!その女に騙されてんのよ!そうよ!私が目を覚まさせてあげれば・・・」

「それはあり得ない。お前がしていたことは全て己の為だけのこと、そんな者に好意など少しの欠片も持てはしない。」



冷たく突き放すように返されたローゼリアは茫然自失で退場されていった。

ローゼリアが自分で言ってたようにゲームの世界と同じなんだけどさ、やっぱり何かをすれば変わることはあるわけで。

たぶんWeb小説も二次元も読んでたんだろうから、行動には結果が伴うけど、それが全部小説と同じようになることもないって、わかることだろうにな。

ローゼリアがそれに早く気がついてくれることを祈るなあ。一歩間違えば私もああだったかもしれないし。

ふぅと小さくため息をつくと同時に少しだけ涙がこぼれた。



「なぜ泣く?誰のための涙なんだ?私以外に涙を見せてはダメだろう?」

「・・・え?」

「なくのは私の腕の中だけだ。ましてや他人の為の涙など許さない。」

涙を唇で吸いとると頬を寄せたかと思えば、すぐにキスを降らせる。

「・・・ジークさ、ん?」

なんでまだエロフモードなんだ?スイッチどこ?どこよOFFにするから教えて!背中?腕?心臓?

「そんなに積極的に触れてくるとは・・・よほど怖い思いをしたのだな?私が全身全霊をもって慰めよう。」

い、いやぁあぁ!違うのー!そっちの方が怖い思いするんで遠慮します。

私どんだけお日様見れなくなるのよ、勘弁してください。

周りの皆様はただ漏れのフェロモンにやられたのか、こっち見れていないじゃないですか。アルフレッドさんアルフレッドさんは?

あ、あれ?顔が動かない?なんでガッチリ押さえられてんの?

「そんなに震えて・・・妻の世話は夫の役目。エルフの里でゆっくり過ごせば治まるぞ。」

ちゅ、と大きくリップ音をさせたあとエロフは軽やかに飛翔したかと思うと、アルフレッドさんを睨み付けてから里へとブッ飛んで行きやがりました。






ローゼリアは後から聞いた話では、婚約解消された後とある修道院に行ったそうです。

『私の愛情はみんなのものよ』

って、聖母さまみたいだって評判いいそうです。



拙いものをお読みくださりありがとうございました。

連載も考えたのですが、短編の方が面白いかと思い投稿してみました。


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