追跡しまする
すでに進の姿はそこにはなく、レオⅤら3名のみとなっていた。
「あいつ、偵察に行くって、出て行ったけど……。本当にミーたちの味方になったのかどうか分かんないYO」
「奴が裏切って、こちらを襲撃する可能性もある。だから、俺様たちも迎撃し易い地形へと移動しているのだ」
「あの少年も戦いやすい地形へと移動しておけと言っていましたけどね。我々に助言をする以上、味方とも思えなくもありえませんが……」
「アリエスだけに?」
「サジタリアスⅨ、つまらない冗談はよしなさい」
レオⅤらは岩陰を探し、足を進めていた。
一方、進はというと、単身でこの荒野を歩いていた。
ウィダーインゼリーをちゅるちゅる飲みながら、悠々と。
初めて来た世界にも関わらず、随分と落ち着いている。
「レオⅤの情報によると、この先に風の軍の基地があるらしいけど……。まだ、それっぽいのは見えねぇな。もーちーと歩くか」
気長にいこうと再び足を動かす。が……。
ゆらりと、空中に人形のような影が見えた。
「なんだありゃ?」
ここで、リュックから双眼鏡を取り出す。ズームした映像をこの目にした。
進が確認したのは翼を持つ人型の機械生命体らしき存在。恐らく、レオⅤらと同じ、シデロスであろう。
「天使型のロボ? シデロスってのは俺の推測からして12星座モチーフの機械生命体。あいつも多分そうだとして、乙女座か? いや、天使っぽいけど、女性的フォルムじゃねぇよな」
双眼鏡越しに凝視している相手について推察していたところ、その対象に異変が起こる。なんと、左右に分裂したのだ。そして、それぞれ半分が変形していき、2つの人型シデロスへと分離変形したのだった。
「なーるほど。双子座だなぁあれは」
その2つに分離した機影は左右へ分かれて飛び去っていく。
「恐らく、二手に分かれて偵察ってところか……。さぁて、俺はどっちを追うべきかな?」
2つのシデロスをそれぞれ見比べてみる。
片方は天使のような神々しい翼を持ち、もう片方は悪魔のような禍々しい翼を持つ。
「さしずめ、天使と悪魔か。天使の方にコンタクトを取る方が無難か……。いや、あえて悪魔と相乗りしてかき乱すってのも悪くねぇかもな」
打算的な笑顔で頬を歪め、進は悪魔翼のジェミニⅢの元へ駆け出していくのであった。